ビゼー

ビゼー 劇付随音楽「アルルの女」(プラッソン)

CD

 ■ G・ビゼー作曲/劇付随音楽「アルルの女」

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 ▲ M・プラッソン指揮/トゥールーズ・キャピタル管弦楽団

 1985年録音。

 2つの演奏会用組曲で親しまれている「アルルの女」。オリジナルは26人編成のオーケストラと合唱。

 プラッソンはことさら小編成であることを強調することなく、優しく繊細な音楽を作っている。組曲では「アダージエット」として知られる曲も、音楽の流れが自然だ。

 最初の前奏曲から、劇場的な雰囲気が濃く感じられ、フル・オーケストラによる組曲版とは異なった魅力がある。

 編成に無いはずのハープが加わったりしているので、原典版そのままの演奏ではないようだ。

 短いメロドラマ(劇の台詞のバックに付けられた音楽)も多く、オペラの様に全体が1つの音楽作品としてまとまっている訳ではないのだけれど、それでも、1曲1曲の魅力は大きい。

 組曲では「カリヨン」や「ファランドール」で華やかに終わるけれども、原典版は戯曲のストーリー通りに悲劇的なエンディングになっている。

 また、組曲版を知っていればさらに興味深く聴けると思う(特にギローが編曲した第2組曲)。

 「パストラーレ」の中間部は原典版ではコーラスによって歌われる。また「ファランドール」は、ビゼーのモチーフを展開させて見事な作品に仕立て上げてた、ギローの腕の素晴らしさを感じる。

 ちなみに、「美しきペルトの娘」からの流用であるフルートのソロで有名な「メヌエット」は、当然ながら含まれていません。

 組曲版のCDを何種類か持つのであれば、その中の1枚に是非。

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ビゼー 組曲「ローマ」(P・ヤルヴィ)

CD

 ■ ビゼー作曲/組曲「ローマ」

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 ▲ P・ヤルヴィ指揮/パリ管弦楽団

 2009年録音。

 ビゼーのオーケストラ曲というと「アルルの女」、「カルメン」のみが突出して知られているけれども、この「ローマ」も中々楽しく、いかにもビゼーらしい雰囲気があちこちに聞かれる。

 4楽章形式で、各楽章は「ローマ」「フィレンツェ」「ヴェニス」「ナポリ」を描写しているらしい。

 このCDには「管弦楽のための組曲第3番」と記載されていて(Eulenburg版のスコアにも)、そうすると他の2曲は何なんだろう...?

 この曲の録音は少なかったのだけれども(これまではプラッソン盤を聴いていた)、ようやく素晴らしい録音が出てくれた。今後、この曲を聴きたいと思った時は、このCDを聴くことになるだろう。

 カップリングの「子供の遊び」、「交響曲」も素晴らしく、(「アルルの女」「カルメン」以外の)ビゼー作品集としておススメのCD。

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ビゼー 交響曲ハ長調

CD

 ■ G・ビゼー作曲/交響曲ハ長調

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 ▲ M・プラッソン指揮/トゥールーズ・キャピタル管弦楽団

 1993年録音。

 柔らかで軽やかなサウンド。豊かな情感のある音楽。この曲の演奏として、まず申し分ないと思う。

 作曲者17歳の時の作品。日本で言えば高校生。

 交響曲としては『習作』かもしれないけれど、有名な第2楽章だけではなく、メロディは完全に出来上がっていて、「アルルの女」や「カルメン」の中に使われていても違和感はない。

 17歳でこれを書かれたら、「持っている物が違う」としか言い様がない。

 第2楽章のオーボエのソロとか...こういうのは、努力して、あるいは、熟考してできるものでもないし、もう、神様がビゼーに与えたものとしか言い様がない。


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 ▲ L・ストコフスキー指揮/ナショナル・フィルハーモニック交響楽団

 1977年録音。

 ストコフスキー最後の録音(95歳!)。しかし、なんと若々しく、瑞々しい音楽か。

 音楽が緩むことが全く無い。しかも、終楽章は猛スピードで突っ走る。

 やたらと遅いテンポで『巨匠風』と崇められる指揮者とは全く違う。やっぱりストコフスキーはステキだ。


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 ▲ J・フルネ指揮/東京都交響楽団

 2000年3月13日、サントリーホールでのライブ録音。

 ゆったりとしたテンポ。溌剌とした17歳の音楽ではないけれど、これはこれで味わいがある。

 しかし、この4年後(フルネさん引退の前年)。2004年4月25日のプロムナード・コンサート。

 同じコンビによって演奏されたこの曲(と、サン=サーンスの「オルガン交響曲」)はあまりに素晴らしかった。

 この日のコンサートは忘れることが出来ない。この演奏がCD化されることはないのだろうか。


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 ▲ E・アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団

 1960年録音。

 音楽の流れに無理が無く、第4楽章も決してリズムが乱れない(16分音符がキッチリ刻めるような)テンポ設定なっている。

 肩の力のが抜けたリラックスした音楽。カラッとした明るいサウンド。情緒に流れ過ぎない、嫌味の無いセンスは『大人の音楽』といった雰囲気がする。


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 ▲ P・ヤルヴィ指揮/パリ管弦楽団

 2009年のライブ録音。

 リズムの活き活きとした、溌剌とした演奏。繰返しを全て譜面通りに行っているので、演奏時間は長くなっているけれども、それでダレることはない。

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ビゼー(ホフマン編) 「カルメン」組曲(デュトワ)

CD

 ■ G・ビゼー作曲(F・ホフマン編)/「カルメン」組曲

 Dutoit

 ▲ C・デュトワ指揮/モントリオール交響楽団

 1986年録音。

 オペラ「カルメン」からのナンバーを『組曲』としてオーケストラで演奏する場合、ホフマンが編曲した2つの組曲から、曲順を入れ替えるなどして何曲か抜粋して演奏するのが一般的。

 そのホフマン版組曲は下記の通り。

 【第1組曲】
  前奏曲(前奏曲の後半部分、「運命のモチーフ」)
  アラゴネーズ(第4幕への間奏曲)
  間奏曲(第3幕への間奏曲)
  セギディーリャ
  アルカラの竜騎兵(第2幕への間奏曲)
  闘牛士(前奏曲の前半部分、超有名曲)

 【第2組曲】
  密輸入者の行進
  ハバネラ
  夜想曲(ミカエラのアリア)
  闘牛士の歌
  衛兵の交代(子供たちの合唱)
  ジプシーの踊り

 太字の曲は元々オーケストラだけの曲。それ以外は『歌』のナンバーなので、その歌のパートを色々な楽器で置き換えている。

 デュトワはこの2つの組曲を全曲、曲順に演奏していて、そういう意味では貴重な録音。

 管楽器のソロなどは素晴らしいにしても、意外にアッサリとした味付けの演奏で、もうちょっと俗っぽさが欲しい気もする。ただ、変なクセが無いので一般的には受け入れ易いかも。

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ビゼー 「カルメン」組曲(アンセルメ)

CD

 ■ G・ビゼー作曲/「カルメン」組曲

 Ansermet

 ▲ E・アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団

 1959年録音。

 ホフマン編曲版の2つの組曲から、「セギディーリャ」「闘牛士の歌」以外を収録(曲順は一部変更)。

 まずは第1幕前奏曲(組曲版の「闘牛士」)。やっぱり「カルメン」はこの音楽で始まってほしい。

 硬質のキラキラとしたサウンドで、音そのものは軽いのだけれども、リズムは意外にシッカリと刻まれている。

 前奏曲の後半部も骨太の響きがする。

 「アラゴネーズ」のクライマックスでは思い切り音を引き伸ばす。その後のタンバリンのリズムが遅れてヒヤヒヤする(汗)...ちなみに、タンバリンは最後の「ジプシーの踊り」でも危なっかしい。

 「アルカラの竜騎兵」はバソンの響き。

 「ハバネラ」の歌い回し、ちょっとしたルバートが洒落ている。

 「ジプシーの踊り」のトランペットは軽やかなリズムの上にゆったりと歌い、最後は見得を切るようなハイトーン。

 テクニック的には色々あるにしても、独特のサウンドと、聴かせ上手な演出が楽しめる。

 これに比べると、デュトワ盤などは上手いのは間違いないにしても、特に歌のナンバーなどは『譜面通り』感が強くて、今ひとつ物足りない。

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ビゼー 「アルルの女」組曲

CD

 ■ G・ビゼー作曲/「アルルの女」組曲

 第1組曲はビゼー自身、第2組曲はギローによる編曲。

 名曲中の名曲。「前奏曲」や「間奏曲」のサキソフォン、こんなに魅力的なソロは、他のオーケストラ曲では(吹奏楽曲であっても)、ちょっと思い付かない。

 第2組曲「メヌエット」はフルート独奏曲として有名(誰もが一度は吹いてみる『定番』)だけれども、オーケストラでは途中からオーボエが加わったり、サキソフォンの対旋律が加わったりと、さらに魅力を増す。

 そして「カリヨン(鐘)」中間部のフルートのデュエット(途中からオーボエも加わる)。単純な3度の進行に始まり、やがて互いに呼応する。これも何と見事なことか。ここだけフルート2本で吹いても楽しめる。

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 ▲ A・クリュイタンス指揮/パリ音楽院管弦楽団

 1964年録音。 LP時代から『決定盤』として知られている録音で、それに異存は無し。このデザインもLP時代からお馴染み。

 何と言ってもそのサウンド、遅いテンポと緩めのアンサンブルは、素朴でローカルな雰囲気を出している。

 サキソフォンやホルンは、ちょっとしたフレーズにも何とも言えない味わいがある(「パストラーレ」など)。

 「カリヨン」冒頭のホルンは、パッと陽の光が射してきたように鮮やか。そして「ファランドール」クライマックスでの金管楽器。


 Ansermet

 ▲ E・アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団

 1958年録音。

 個人的にLP時代から一番馴染んでいた演奏がこれ。

 しかし、LPでは第2組曲は「メヌエット」と「ファランドール」の2曲しか収録されていなくて、アンセルメが第2組曲も全曲録音しているのを知ったのはCD時代になってからだった。

 収録時間の関係からか2曲カットされてしまったのか、裏面の「カルメン」組曲でも「夜想曲」がカットされていた。

 硬質でキラキラと明るいサウンドが魅力で、「前奏曲」の後半部とか、ぐんぐん加速する「ファランドール」のエンディングなど、意外に『熱さ』を感じさせる演奏でもある。

 ちなみに、国内盤で「『ファランドール』の冒頭が欠落している」というレビューを見かけたけれど(私は未確認)、これは欠落していません。

 アンセルメのビゼー録音と、トゥリーナ作曲の「幻想舞曲集」が収録された、素敵な2枚組。


 Bizet

 ▲ H・レーグナー指揮/ベルリン放送交響楽団

 サウンドはソフトであるけれども、ラテン系の明るさは無く、ほの暗い、日の差さない森の中のような雰囲気を持っていて、これは「ファランドール」でも変わらない。

 所々で金管やティンパニが強調され、サキソフォンの音色もフランス系の演奏とは異なる。

 プロヴァンス太鼓のパートはタンバリンで演奏。ただ、「ファランドール」では、妙にテンションが低くて無表情。

 「間奏曲」の冒頭のユニゾンなどは、他に聴いたことがないような表情で、最初は相当に戸惑ってしまう。ただ、サキソフォンの伴奏の弦楽器の8分音符をピチカートにしているのは『有り』かと思う。

 とにかく独特の感覚を持った演奏で、初めてのCDとしてはオススメできないにしても、いくつもの録音を聴いている人には、「こういう演奏もあるのか」と面白く聴けるのではなかろうか。


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 ▲ J・フルネ指揮/東京都交響楽団

 2003年4月19日、サントリーホールでのライブ録音。第2組曲のみ。

 1曲目の「パストラーレ」から遅めのテンポによる、悠揚たる音楽。そして透明感のある瑞々しい響き。

 「ファランドール」は、プロヴァンス太鼓のリズムと共に高揚するけれども、決して周りを煽り立てるだけの大騒ぎではない。暖かく、幸福感、そして光に満ちている。

 しかし、フルネさんがご健在の頃は、こんな音楽が定期的に聴けたのだなぁ...。

 個人的な思い入れも含めて、別格の演奏。


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 ▲ E・マルケヴィッチ指揮/コンセール・ラムルー管弦楽団

 1959年録音。これは素晴らしい演奏。オケの明るいサウンドもいい。

 オケからすれば自分たちのレパートリーなのだろうけれども、雰囲気に流れることなく、マルケヴィッチは手綱を引き締め、迫力のある演奏を作っている。

 「アダージエット」は「pp」の指定に拘ることなく、とても豊かな美しい音楽になっているし、「ファランドール」の速めのテンポも心地いい。最後の熱狂はコンサートであれば「ブラヴォー!」間違い無し。

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 こちらは輸入盤。しかし...第2組曲の「間奏曲」がカットされているので要注意。


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 ▲ カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 1970年録音(録音年注意)。

 ドラマチック、流麗な演奏。弦楽器のポルタメントなどはカラヤン流。素朴さやローカルな味わいは薄い。

 それはさておき、ゴールウェイがフルートを、デュファイエがサキソフォンを担当していて、それが最大の聴き物。

 特に、第2組曲の「メヌエット」はファン必聴です。「カリヨン」の中間部も。

 プロヴァンス太鼓をタンバリンで叩かせているのはレーグナー盤と同じ。

 私が所有しているのは、この輸入廉価盤。「カルメン」組曲、「アルルの女」組曲、オペラ間奏曲集(6曲)を収録。


 Maazel

 ▲ L・マゼール指揮/クリーヴランド管弦楽団

 1978年録音。

 「前奏曲」は意外にソフトなタッチ。木管アンサンブルによる第1変奏はとてもいい。後半部、サキソフォンのソロからは速目のテンポでサクサクと進む。これは以後も同じ。

 「パストラーレ」もテンポが速い。演奏時間を比較してみると、

  フルネ 6'21"
  アンセルメ 5'42"
  デュトワ 5'47"
  マゼール 4'49"

 思い入れやら、ローカルな雰囲気とは無縁の演奏。これはこれで楽しめるけれど...。

 第2組曲の「間奏曲」がカットされていて、また「メヌエット」後半のサキソフォンをファゴットに置き換えている(スコアにキューは書かれているけれども...)。

 結局、マゼール・ファン以外にはちょっと...といった感じではある。


 Dutoit

 ▲ C・デュトワ指揮/モントリオール交響楽団

 1986年録音。

 決してやり過ぎない節度があり、優美で、品がある。管楽器も上手く、まずは最初にオススメできる演奏。フルートのソロはT・ハッチンス。


  Paray

 ▲ P・パレー指揮/デトロイト交響楽団

 1956年録音。これは素晴らしい演奏。

 遅めのテンポで始まる「前奏曲」は、この音楽が悲劇に付けられたものであることを強く感じさせる。

 そして、間を置かずに始まる快速の「メヌエット」。鮮やかなコントラスト。ここで、物語の幕が開くのだ。

 「カリヨン」も遅めのテンポのスケール感のある音楽。

 「ファランドール」も遅めのテンポ設定。「前奏曲」のテーマが再現して、悲劇と群衆の祭りが交錯し、最後は喧騒の中に飲み込まれていく。


 Plasson

 ▲ M・プラッソン指揮/トゥールーズ・キャピタル管弦楽団

 1992年録音。第1組曲のみ。

 オーケストラの素朴で暖かなサウンド。重くならずに、音楽の流れが自然で、過度の表現に陥ることも無く、「この曲、斯くあるべし」といった素晴らしい演奏。

 オリジナルの劇付随音楽版を意識した曲作りなっているようにも感じる。

 第1組曲のみの収録だけれども、第2組曲は第三者(ギロー)による編曲であることや、そこに「アルルの女」以外の曲も含まれていることなどからだろうか。

 カップリングの「カルメン」組曲も、前奏曲と間奏曲のみ(4曲)の収録。


 Kegel

 ▲ H・ケーゲル指揮/ドレスデン・フィルハーモニー

 ビゼーの側に歩み寄ることなく、完全に自分流の音楽に仕立ててしまっている。

 細かい所を書き始めたらキリが無いけれども、一番ビックリするのは第2組曲「間奏曲」の中間部。

 アルト・サックスと一緒に演奏しているホルンをトランペットに置き換えて、しかも朗々と吹かせているため、完全にトランペットのソロの様になってしまい、全く別物の響きがする。

 色々な賛辞も目に付き、確かに『面白い』演奏だとは思う。

 しかし、「ビゼーの『アルルの女』を聴きたい」という時に、この演奏を聴こうという気にはならない。


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 ▲ L・ストコフスキー指揮/ナショナル・フィルハーモニック管弦楽団

 1976年録音。

 まず「第1組曲」が素晴らしい。

 「前奏曲」での各変奏の描き分け。最後は少しリタルダンドして、雰囲気を変えて後半部へつなげる。

 遅いテンポの堂々とした「メヌエット」。「カリヨン」の中間部も遅いテンポで、消え入るような美しい音楽。

 スコアを改変するようなことはせずに、真っ向勝負の名演奏。

 ただし、「第2組曲」では、「パストラーレ」は中間部のみの演奏。次の「間奏曲」はカットして(演奏せずに)、「メヌエット」、「ファランドール」。「メヌエット」はもう少しソロの魅力が欲しい。


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 ▲ ジャン・モレル指揮/コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団

 1958年録音。モレル(1903-1975)はフランス生まれの指揮者。

 これが予想外にいい演奏。力を抜きリラックスした、その中に情感、ニュアンスを感じさせてくれる。明るく、柔らかなオケのサウンドもいい。何といっても、音楽が『明るい』。

 「カリヨン」の中間部は付点のリズムの取り方が独特。速いテンポで進められる「牧歌」の中間部も面白く、効果的だ。

 「間奏曲」の中間部のサキソフォンも出しゃばることはないけれど、十分に存在感がある。

 ちなみに、カップリングの「スペイン狂詩曲」は(演奏は素晴らしいのですが)チャネルの左右が逆でした...

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ビゼー/シチェドリン カルメン組曲

CD&DVD

 ■ R・シチェドリン作曲(ビゼー原曲)/カルメン組曲

 ビゼー作曲のオペラ「カルメン」をベースにしたバレエ音楽。楽器編成は弦楽合奏と打楽器アンサンブル(ティンパニ+奏者4名)。

 バレエの初演は1967年、ボリショイ劇場にて。指揮はロジェストヴェンスキー。

 以下の13のナンバーで構成される(カッコ内ベースとなる曲)。

  1.導入(ハバネラの断片)
  2.ダンス(第4幕への間奏曲)
  3.第1間奏曲
  4.衛兵の交代(第2幕への間奏曲)
  5.カルメンの登場とハバネラ
  6.情景
  7.第2間奏曲(第3幕への間奏曲)
  8.ボレロ(「アルルの女」から「ファランドール」)
  9.闘牛士
  10.闘牛士とカルメン(「美しきパースの娘」から「ジプシーの踊り」)
  11.アダージオ(花の歌)
  12.占い(カルタ占いの場)
  13.フィナーレ(幕切れの音楽、エピローグとして「1」が再現)

 「8」と「10」については、(おそらく)この2曲がオペラ上演の際に「バレエ音楽」として挿入される慣例があったことによるもので、ちなみに私が大昔買ったヴォーカル・スコア(国内版)には、この2曲が入っていました。

 ビゼーの旋律自体は慣れ親しんだものではあるけれども、特に後半「10」以後はスローなナンバーが続き、全体的に重々しく悲劇的な色調が強く、しかし、その分「7」「11」といったナンバーが生きてくる

 「導入」では「ハバネラ」の断片がチャイムで静かに鳴り(全曲に渡りチャイムの効果は大きい)、やがて弦楽器と打楽器のトレモロの大きなクレッシェンドから2曲目のダンス(アラゴネーズ)が華やかに始まる。このオープニングは鮮やかでインパクトは大きい。

 とにかく見事にアレンジされていて、途中で旋律が消える「9」は有名だけれども、「10」でも旋律が途切れ途切れになって、やがて消えていく。

 そういった『凝った』曲がある反面、「11」の「花の歌」などは割とストレートにアレンジされている。

 シチェドリンのスコアには弦楽器に下記の『人数指定』がある。
 
  1st Violin 18
  2nd Violin 16
  Viola 14
  Cello 12
  Double Bass 10

 要は、かなりの大編成を要求していて、少なくともスコアの想定は『室内オケ』ではない。

 

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 ▲ G・ロジェストヴェンスキー指揮/ボリショイ劇場管弦楽団

 1967年録音。初演と同じ年、初演コンビによる、この曲を聴くのに外せない録音。

 シチェドリンの想定通りの大人数の弦楽合奏で演奏されているのもいい。特に「花の歌」などは聴き物。

 バレエ指揮者だけにリズムの素晴らしさ。豊かな歌。オケもボリショイ劇場と言う事で見事な演奏を聞かせてくれる(文化省オケだったらこうはいかなかったか...)。

 この曲を聴くならまずこれ!...と言う演奏。


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 ▲ A・フィードラー指揮/ボストン・ポップス管弦楽団

 1969年録音。フィードラーがこの曲を録音していたとはビックリ。しかも、初演(1967年)の僅か2年後に。

 演奏はとてもいい。理屈抜きに楽しませてくれる。フィードラー侮るなかれ。


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 ▲ M・ザンデルリング指揮/ドイツ弦楽フィルハーモニー

 2007年録音。学生による弦楽オケによる演奏。でも、これがとても面白い。

 再弱音の冒頭に始まり独特の表情、音楽を聴かせ、奏者もそれを楽しんでいるように活き活きと演奏している。


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 ▲ Y・トゥロフスキー指揮/イ・ムジチ・ド・モントリオール

 1993年録音。

 パーカッション・パートを Ensembre Repercussion という4人組グループが担当。ただし、ティンパニはこのグループ以外の奏者が担当しているためか、バランスが弱い。

 おそらく少人数による演奏。響きの厚みが無いので、終曲などは迫力不足に感じるけれども、かなり細かい表情が付けられていて、全体的にはとても面白く聴ける。打楽器も上手。

 カップリングはトゥリーナ作曲の「闘牛士の祈り」と、シチェドリンの珍しい小品が3曲。


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 ▲ M・ラフレフスキー指揮/クレムリン室内管弦楽団

 2001年録音。弦の人数は多くないのだろうけれども、その分、シチェドリンのスコアの仕掛けがハッキリと聞こえてくる。

 ただ、リズムは重く、『バレエ音楽(=踊り)』としてよりも、ドラマチックな要素を前面に出しているように感じ、ロジェストヴェンスキー盤とは、また違ったタイプの演奏として楽しめる。


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 ▲ M・プレトニョフ指揮/ロシア・ナショナル管弦楽団

 1998年録音。リズムの切れもないし、気が抜けた感じで魅力は感じない。カップリングのシチェドリン作品(2曲の管弦楽のためのコンチェルト)がメインか。


 【バレエ版】

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 M・プリセツカヤのカルメン、ロジェストヴェンスキー&ボリショイ劇場管による映像ソフト。舞台のライブではない映画版。

 ボーナスとしてプリセツカヤが踊る「瀕死の白鳥」などが収録されています。

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ビゼー カルメン・ファンタジー(セヴェリンセン)

CD

 ■ G・ビゼー作曲(F・プロトー編曲)/カルメン・ファンタジー(トランペットとオーケストラのための)

 Severinsen

 ▲ ドク・セヴェリンセン(トランペット)

 E・カンゼル指揮/シンシナティ・ポップス管弦楽団。1989年録音。
 
 「トランペットは踊る」というアルバムに収録。

 ビゼー作曲のオペラ「カルメン」によるファンタジー。

 ヴァイオリンやフルートの同様の曲のように、原曲をベースにして技巧的な装飾を加えるというのではなくて、ビゼーのモチーフを借用しつつ、シンフォニックかつポップス・テイストの自在なアレンジがされている。

 トランペットのテクニックは素晴らしく、オーケストラも派手に鳴りまくり、とにかくカッコイイのだ。
 
  1.前奏曲
  2.アラゴネーズ
  3.間奏曲
  4.ハバネラ

 「前奏曲」は、有名な「闘牛士」のテーマは少しだけ現れるけれど、ほとんどがオーケストラをバックにしたトランペットのカデンツァ。エキゾチックな雰囲気。「ああ、ドクシツェルのソロで聴いてみたい」と思ってしまった。

 そこから休みなく入る「アラゴネーズ」(第4幕への間奏曲)は、テーマを借用しつつも、実にカッコよくアレンジされている。オリジナルがスペイン情緒のある音楽なので、これは見事にハマっている。

 「間奏曲」(第3幕への間奏曲)では抒情的、ロマンチックな音楽を聞かせ、最後の「ハバネラ」は大きく盛り上がり、最後はド派手なエンディングへ。

 他の曲はともかく、これを聴くためだけにでも、このCDを買う価値あり。

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