ヴォーン・ウィリアムズ

ヴォーン・ウィリアムズ ロンドン交響曲(ノリントン)

CD

 ■ R・ヴォーン・ウィリアムズ作曲/ロンドン交響曲(交響曲第2番)

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 ▲ R・ノリントン指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 1996年録音。

 第1楽章はロンドンの夜明け。静寂の中にハープなどによるビッグ・ベンの鐘の音が聞こえてくる。

 音楽は次第に活気を増し、やがて賑やかな街の情景となる。エネルギッシュではあるけれども、なにやら威圧感も感じる。途中で民謡風の素朴な旋律が現れたり、弦楽器のソリ(soli)による叙情的な部分が挟まれる。

 第2楽章は穏やかな郊外の風景。第3楽章は「夜想曲」と副題の付いた軽快なスケルツォ楽章。

 それに続くフィナーレは、どこか不安げな重苦しい行進曲で、これは「失業者の行進」だそうだ。

 途中テンポが速くなるものの、また最初の行進が戻り、第1楽章のエコーのあとに再びビッグ・ベンの鐘の音が聞こえてくる。

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 その後、第1楽章冒頭の音楽が回帰しエピローグとなり、ト長調の和音で静かに曲を閉じる。

 フィナーレに華やかな音楽を持ってこなかったところが、この曲のミソだろう。まさしく、大都会の光と影、様々な『顔』を感じさせてくれる。

 ボールト、バルビローリ、プレヴィン、あるいは、ハイティンクなどの名盤もあるけれども、このノリントンもなかなか聴かせてくれる。

 まだ、シュトゥットガルト放送響の首席指揮者になる前。昨今はクセのある音楽を聴かせることも多いけれども、この録音はそうではない。

 スッキリとメリハリのあるサウンドの中に、抒情性、情感も十分に感じさせてくれる。

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ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲第4番

CD

 ■ R・ヴォーン・ウィリアムズ作曲/交響曲第4番

 「海」「ロンドン」「田園」と続いて、最初の表題無しの交響曲。曲想も前3曲のような親しみやすさ、イギリス的な情感は全くない、『辛口』の音楽。

 冒頭からいきなり不協和音が炸裂、その激しく緊迫した雰囲気は、終楽章でのフーガによるエピローグまで続く。

 第1楽章でひとしきり荒れ狂った後のに訪れるレントの静けさ(終楽章で再現する)も、印象的。長調と短調の間を揺れ動きつつ、第2楽章へと続く。

 フーガ風の中間部を持つ第3楽章のスケルツォからアタッカで続く第4楽章は行進曲風に始まり、途中で第1楽章のレントを回想。

 最後は第1楽章冒頭の音楽が回帰して、強烈な一撃で曲を閉じる。

 

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 ▲ A・プレヴィン指揮/ロンドン交響楽団

 若き日のプレヴィンによる交響曲全集から。

 まずは第1楽章、鋭く切り込むオープニングから、ストレートに終始攻め立てる。何より音楽が分かり易く、とっつきにくさが無い。第2楽章はやや単調な感じがするけれど、第3楽章以後で盛り返す。

 この全集の魅力は、フレッチャーの吹くRVWの「チューバ協奏曲」が収録されていることで、人によってはそちらがメインか。


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 ▲ R・ノリントン指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 1997年録音。

 この曲は最初は馴染めなかったのだけれども(RVWと言えば「イギ民」だったので)、何度か聴くうちにハマッてくる魅力がある。

 ノリントンは「古楽器オケ」とか「ピュアトーン」というイメージがあるけれども、そういう先入観念を除いたところでの、見事な演奏。

 漫然とスコアを音にするのではない、考えられ、曲が作り込まれている。第1楽章の第2主題、最後のレントから第2楽章へかけてが素晴らしく、遅めのテンポの第4楽章も独特の雰囲気を持っている。

 交響曲第6番とのカップリング。

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ヴォーン・ウィリアムズ 田園交響曲(ノリントン)

CD

 ■ R・ヴォーン・ウィリアムズ作曲/田園交響曲(交響曲第3番)

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 ▲ R・ノリントン指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 1997年録音。

 「田園交響曲」といえば、ベートーヴェンであるけれども、RVWの「田園交響曲」はベートーヴェンとは全く異なり、心和む自然の風景も、晴れやかな気分も無い。

 8分音符で揺れ動く木管楽器の導入から、ヴァイオリンの独奏へとつながる。

 終始、思いに耽るような内向的な音楽で、テンポが速まるのは第3楽章の一部のみ。この楽章の終結部はプレストであるけれども、独特の軽さがあり、攻撃的な激しさは無い。

 第2楽章ではナチュラル・トランペットが吹奏される。

 これは第一次世界大戦に従軍していたときに聴いたラッパに発想を得ているらしいけれど、元気のよいものではなく、静かで寂しげだ。最後は同じテーマがナチュラル・ホルンで演奏される。

 終楽章の冒頭では、ティンパニのロールの上に歌詞の無いソプラノ独唱が遠くで歌われる。

 この楽章もテンポは遅いものの(モデラート)、音楽は初めて高揚する気配を見せる。

 結びはソプラノが再び現れて、ヴァイオリンの「A」の音が遠くへ消えていく。

 「海」「ロンドン」に続く3番目の交響曲。前2者とは全く異なるタイプの音楽。

 ノリントンはRVWの交響曲を録音していたけれども、全集になる前に中断してしまったようだ(レコード会社の都合?)。

 全体的にアッサリとした曲作り。対向配置のスッキリとした透明感のある響きは、この曲に合っていると思う。

 第3楽章も舞曲風な軽さがあり(ここのハイティンクは何とも重厚だ)、また、各楽章のコントラストがはっきりと出ている。終楽章のソプラノ独唱は、本当に遠くから聞こえてくる。

 冒頭の木管とか、トランペットのバックの弦の音を『膨らませる』のは、いかにもノリントンらしい処理の仕方。

 カップリングは交響曲第5番。

 ちなみに、グラズノフにも「田園交響曲」(第7番)があるけれども、こちらは完全に大先輩(ベートーヴェン)のパクリで、調性も同じヘ長調。

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ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲第6番

CD

 ■ R・ヴォーン・ウィリアムズ作曲/交響曲第6番

 

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 ▲ B・ハイティンク指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 1997年録音。

 第2次世界大戦中から戦後にかけて作曲された、いわゆる「戦争交響曲」。「田園交響曲」(交響曲第3番)のようなイギリス的情緒とは無縁の音楽。

 全4楽章、続けて演奏され、激しく緊迫感のある最初の3楽章を受けての終楽章(エピローグ)は終始弱音で演奏され、不思議な静謐さを持っている。

 第3楽章はショスタコーヴィチ的でもあり、途中に現れるサキソフォンのソロはジャズ風。また、第2楽章のトランペットと打楽器によるオスティナートのリズムは、ホルストの「火星」を思わせる。

 ハイティンクは厚みのある、ふくよかな響きであるけれども、この音楽であれば、エッジのバリバリ効いたシャープなサウンドでも聴いてみたい。


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 ▲ R・ノリントン指揮/ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団

 1997年録音。

 ノリントンは「ピュア・トーン」による演奏などで、『特殊枠』といった印象があるけれども、一連のRVWは正統路線の演奏。

 この第6番も、透明感のあるタイトな響きの中に、緊張感があり、なかなか聴かせてくれる。

 全集にならなかったのが残念。

 交響曲第4番とのカップリング。


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 ▲ J・バルビローリ指揮/バイエルン放送交響楽団

 1970年4月10日のライブ録音。

 思いっ切り溜めた冒頭から気合いが入る。

 第1楽章後半のホ長調に転調した「トランクイロ」も遅いテンポで気持ちを込め、強奏される第2楽章のトランペットと打楽器のリズム。第3楽章では荒れ狂い、終楽章のエンディングも名残惜しい。

 ドラマチックな音楽創りに応えるオケと、そのサウンドも素晴らしい。これがハレ管だったら、単に重苦しいだけで終わっていたかもしれない。

 カップリングはブラームスの交響曲第2番。

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ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲第9番(スラットキン)

CD

 ■ R・ヴォーン・ウィリアムズ作曲/交響曲第9番

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 ▲ L・スラットキン指揮/フィルハーモニア管弦楽団

 1991年録音。

 イギリスを代表する大作曲家の「第9」(結果的に最後の交響曲になった)。少なくとも周囲(委嘱者や聴衆)の期待は大きかったと思う。

 作曲者はこの曲の初演後、数ヶ月で亡くなっていて、年齢的なことを考えると、自身も「ひょっとすると、そろそろ...」という意識はあったかもしれない。

 軽妙な第8番に比べると、取っ付きにくく、一般受けするような内容も持っていない。

 重苦しい第1楽章。後半に現れるヴァイオリンのソロは、ほんの少しだけ昔を思い出させてくれる。

 フリューゲルホルンのソロで始まる第2楽章。途中は元気のいい、しかし不思議な雰囲気を持った行進曲風(これも不思議な雰囲気)になる。何度か鳴らされる鐘の音が印象的。

 第3楽章は「8分の6」と「4分の2」が交錯したスケルツォ。不協和音、シロフォンの響き。この楽章ではサックス・セクションが大活躍する(楽譜としても相当に難しい)。

 終楽章は弦楽器のカノンで静かに始まり(ここはショスタコ風?)、第1楽章の気分が戻ってくる。最後はハープのグリッサンド、サキソフォンのハーモニーが彩りを加え、ホ長調の和音が遠くへと消えていく。

 3本のサキソフォン(アルト×2、テナー)は、冒頭やエンディングでハーモニーを聴かせ、第3楽章では独立したアンサンブルとして大活躍。

 また、フリューゲルホルンも全曲で使われ、この楽器が無い場合のキューはトランペットやホルンに書かれていて、「コルネットでの代用は<絶対に>行なわないこと」という注意書きがある。

 トランペットでOKならば別にコルネットでも...と思うのだけれども、そこまで拘るものがあるのだろう。

 ちなみに、この録音でフリューゲルホルンを吹いている David Mason は、初演時にも同じパートを担当されたそうです。

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ヴォーン=ウィリアムズ 海の交響曲(ハイティンク)

 CD

 ■ R・ヴォーン=ウィリアムズ作曲/海の交響曲

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 ▲ B・ハイティンク指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 1989年録音。管弦楽曲付の交響曲全集から。

 RWVは自身の作曲した交響曲に対して「番号付け」は行なわなかったらしく、この曲も「海の交響曲」であって、「交響曲第1番『海』」ではない。これは「ロンドン交響曲」「田園交響曲」「南極交響曲」でも同じ。

 ただ、標題付きの曲はともかく、そうでない曲は区別が付かないため、最終的には(便宜的に)番号を振ったとのこと。

 オルガンも含む大編成のオーケストラ、合唱とソプラノ、バリトン独唱。この合唱は全楽章に加わる。演奏時間70分の大作。

  第1楽章 すべての海、すべての船への歌
  第2楽章 夜、一人海辺にて(緩徐楽章)
  第3楽章 波(スケルツォ)
  第4楽章 探検者たち

 楽章構成は交響曲の形式ではあるけれども、どちらかと言うとオラトリオに近い感がする。

 オープニングは金管のシグナルに続いて、コーラス、次いでフル・オーケストラが加わり、雄大な海のスケール感、そして、そこへ出て行く人々の高揚感を感じさせる。

 多くの録音を聴いているわけではないのだけれども、ハイティンクはRVWにしろ、エルガー、ウォルトンにしろ、まず間違いないという手堅さ、安定感、安心感がある。

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ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲第8番(ボールトの映像)

 DVD

 ■ R・V・ウィリアムズ作曲/交響曲第8番

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 ▲ A・ボールト指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 1972年10月18日のライブ録画。

 2管編成のオケ(ホルンは2本、チューバ無し)に、多くの打楽器(ティンパニ以外で5人の奏者)が加わる。

 第1楽章「ファンタジア」は「主題のない変奏曲」。第2楽章は管楽器だけによる行進曲。

 第3楽章は弦楽器による「カヴァティーナ」で、「タリスの主題による…」を思わせる部分もある美しい音楽。

 フィナーレの「トッカータ」は再びトゥッティ。ここでは鍵盤打楽器が活躍し、ニ長調のエンディングを迎える。

 5音音階のモチーフにゴングが入るので、中華風な味わい。

 ヴィブラフォン、チャイムなどの鍵盤打楽器、チェレスタ、ハープがサウンド的な面白さを出している。

 「嬉遊曲(ディヴェルティメント)」的な遊び心、親しみやすさがある曲で、クラシカルな雰囲気も持っている楽しい音楽。

 この曲は、嬉しいことに、ボールトのライブ映像を観ることができる。

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 80代であるけれども、長い指揮棒を持って、かくしゃくとした、見事な指揮ぶり。

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ヴォーン・ウィリアムズ 行進曲「海の歌」

CD

 ■ R・ヴォーン・ウィリアムズ作曲/行進曲「海の歌」

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 ▲ L・スラットキン指揮/フィルハーモニア管弦楽団

 1991年録音。

 元は吹奏楽のための「イギリス民謡組曲」の第2楽章として作曲された曲だけれども、やがて「組曲」からは外されて、独立した行進曲として演奏されている。

 その「イギリス民謡組曲」の第1楽章と似た雰囲気、構成を持つクイック・マーチ(それゆえ、最終的には組曲から除かれたのかもしれない)。

 「A・B(トリオ)・A」のシンプルな3部構成。エルガーの「威風堂々」のような仰々しさは無い。

 イギリス民謡に基く親しみやすい曲想は、イギリス音楽が好きな人なら楽しく聴けるに違いない。

 嬉しいことに、作曲者自身による管弦楽版が存在して、これがとてもよくできていて、どうせなら「イギリス民謡組曲」全曲も編曲してくれればよかったのに...。

 そのオケ版の録音は少ないのだけれども、ありがたいことに、L・スラットキンが録音してくれている。

 スラットキンはセントルイス響とオーケストラのマーチ集を録音しているくらいなので、交響曲全集の余白にこの曲を選曲したことに違和感は無いし、演奏も申し分ない。吹奏楽版しか聴いたことがない人も是非。


 【吹奏楽版】

 以下はオリジナルの吹奏楽版の録音。

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 ▲ F・フェネル指揮/クリーヴランド・シンフォニック・ウィンズ

 1978年録音。


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 ▲ T・レイニッシュ指揮/王立ノーザン音楽大学ウインド・オーケストラ

 1998年録音。「イギリス民謡組曲」の「初演版」の録音。第2楽章にこの曲が置かれている。

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ヴォーン・ウィリアムズ イギリス民謡組曲

CD

 ■ R・ヴォーン・ウィリアムズ作曲/イギリス民謡組曲

 オリジナルは吹奏楽作品ですが、ホルストの組曲と同様に、G・ジェイコブによる管弦楽版があります。

 【吹奏楽版】

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 ▲ T・レイニッシュ指揮/王立ノーザン音楽大学ウィンド・オーケストラ

 1998年録音。RVWとホルストの吹奏楽作品集。

 「初演版」での録音。

  1.日曜日には17歳
  2.海の歌
  3.マイ・ボニー・ボーイ
  4.サマセット地方の民謡

 この曲の初演時は上記の4楽章形式だったものの、その後「2」を単独の曲として独立させて(オケ版も有)、最終的には現在の3楽章形式(1,3,4)になったらしい。

 「1」と「2」はいずれも行進曲で、第1主題などは似た雰囲気もあるので、現在の3楽章形式の方がまとまりがいいのは確かだと思う

 「初演版」...と言っても、コンサートならともかく、LPと違ってCDならば再生する曲(順)を自由に選べるので、聴く側からするとあんまり関係ないかもしれない。

 私が好きだったのは、LPで出ていたロイヤル・マリーンズ・バンドによる録音。そのCDが見つからないので、今はこの演奏で楽しんでいる。

 やっぱり、この曲についてはイギリス系バンドの音が好きだ。

 
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 ▲ E・バンクス指揮/英国空軍中央音楽隊

 1984年録音。RVW、ホルスト、グレインジャーの吹奏楽作品集。有名曲を網羅、「海の歌」も収録されています。

 野外コンサート、青空の下で、のんびりとリラックスして音楽を楽しんでいるような、気持ちのいい演奏。この雰囲気は、この曲には合っていると思う。コルネットのソロも上手・下手を超えた味がある。


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 ▲ F・フェネル指揮/クリーヴランド・シンフォニック・ウインズ

 1979年録音。クリーヴランド管弦楽団の管楽セクション。

 上手だしサウンドもとてもよく、管楽アンサンブルとしての立派な演奏。ジェイコブによるオケ版を参考にしているのか、第1楽章でコルネットのソロをクラリネットに置き換えている。

 打楽器を強調したりなど、色々なことをやっているけれども、第1楽章のエンディングなどはいかにも大袈裟だし、第3楽章の最後も同様。

 全体的に、個人的にはちょっと感覚が『違う』感じがする。


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 ▲ F・フェネル指揮/イーストマン・ウインド・アンサンブル

 1959年録音。世代的に『懐かしい』録音。

 こちらも、第1楽章のコルネットをクラリネットに置き換え。

 元気いっぱいの演奏ではあるけれども、後のクリーヴランドSW盤のように演出過多にならず、ずっと素直な演奏。フェネル盤であれば、私はこちらの方が好き。


 【管弦楽版】

 以下はG・ジェイコブ編曲による管弦楽版による録音。

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 ▲ N・マリナー指揮/アカデミー室内管弦楽団

 1980年録音。RVW以外に、ワーロック、バタワース、ディーリアス、エルガーの録音を集めた2枚組。

 オリジナルの吹奏楽曲は、昨今はいざ知らず、古い世代の人ならば一度は演奏したことがあるだろうし、また、技術的にさほど難しくないこともあり、アマチュア楽団のコンサートで取り上げられる機会も多い(多かった)。

 ここで使われている民謡のメロディは、グレインジャー、ホルスト、バタワースなど、他の作曲家の作品、あるいは自身の他の作品にも現われる。

 第1、3楽章は「行進曲」で、元々吹奏楽的な曲想であるけれども、ジェイコブはとても上手く編曲していて、ホルストの組曲の編曲版よりもはるかにいい。

 特に第2楽章はこちらがオリジナルと言われても納得できてしまうくらい、サマになっている。

 第1楽章のコルネットのソロはクラリネットに置き換わっていて、フェネルはこれを参考にしてか、吹奏楽での演奏でもクラリネットに吹かせている(私はコルネットの方が好きだけれども...)。

 マリナーの演奏は明るく爽やか。第2楽章のオーボエのソロなど、こんなに上手に演奏されると、とても新鮮な感じがする。


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 ▲ A・ボールト作曲/ロンドン交響楽団

 1970年録音。ボールトによるRVW作品集。

 このボールトの演奏は思いっ切り肩の力が抜けたもので、両端楽章もガチガチの行進曲ではない。またリピートを省略しているので随分と短く感じる。

 速目のテンポでどんどん進み、そのおかげで第2楽章などは忙しないし、第3楽章はテンポがふらつき、エンディングではいきなりのテンポ・アップで曲を閉じる。

 何だか、演奏前に一杯引っ掛けているのではないかというような、ほろ酔い気分の演奏。

 個人的にはオリジナル(吹奏楽版)を聴き慣れているので、これはこれで味があるとは思うけれども、一般的には(まずは)マリナー盤の方をオススメします。

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ヴォーン・ウィリアムズ チューバ協奏曲(フレッチャー)

CD

 ■ R・ヴォーン・ウィリアムズ作曲/チューバ協奏曲

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 ▲ A・プレヴィン指揮/ロンドン交響楽団/J・フレッチャー(チューバ)

 1971年録音。

 1954年、当時のロンドン交響楽団のチューバ奏者であった、P・カテリネットのために作曲された、RVW晩年の作品。

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 第1楽章は、どことなく「イギリス民謡組曲」のような吹奏楽の香りがする。編成にスネア・ドラム(小太鼓)が入っているからだろか。カデンツァの後、コラール風の静かなハーモニーで終わる(Largamente)、不思議なエンディング。

 第2楽章(ロマンツァ)の何と美しいことか。作風も含めて、昔を懐かしむような音楽。バルトークのピアノ協奏曲第3番と比べるのは大袈裟だろうか。

 音域的にはユーフォニウム、ファゴット、チェロなどでも演奏可能であるけれども、チューバが(自身にとっての)高い音域で演奏することで、独特の味わいが出てくる。

 終楽章はモダンな音楽で、ここはこの頃のRVW。

 チューバのための協奏曲という珍しさだけではなく、この作曲家の様々な顔が見れるということでも面白い。

 チューバと言えば「『ぶかぶか』と低い音を吹いている楽器」いう、私の中のイメージを変えてくれたのが、PJBEでのJ・フレッチャー。バックもプレヴィン&LSOと申し分ない。必携の一枚。

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