オペラ

オペラ・ファンタジー(マリナー)

CD

 ■ オペラ・ファンタジー

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 ▲ N・マリナー指揮/アカデミー室内管弦楽団

 1987年録音。

 ヴェルディとプッチーニのオペラからの曲をオーケストラで演奏したアルバム。歌は一切入っていません。

 収録曲と編曲者は以下の通り。

  清きアイーダ(「アイーダ」) A
  第1幕から(「蝶々夫人」) B 
  女心の歌(「リゴレット」) A
  星も光りぬ<処刑の場~フィナーレ>(「トスカ」) B
  アンヴィル・コーラス(「イル・トロヴァトーレ」) A
  誰も寝てはならぬ(「トゥーランドット」) A
  ラ・ボエーム・ファンタジー(「ラ・ボエーム」) B
  プロヴァンスの海と陸(「椿姫」) A
  ある晴れた日に(「蝶々夫人」) B
  星も光りぬ(「トスカ」) A

  A:アンドリュー・プライス・ジャックマン編曲
  B:クリストファー・パーマー編曲

 クリストファー・パーマー(B)はウォルトンの映画音楽を演奏会用組曲に編曲している方。

 このパーマーは割と原曲に忠実に編曲していて、中でも、聴き所をメドレー風に上手く繋いだ「ラ・ボエーム・ファンタジー」がいい。

 対してジャックマン(A)のアレンジは、単純に「歌」のパートを楽器に置き換えるというのではなく、原曲に大胆に手を入れて、とても凝った、そして面白いアレンジになっていて、いずれも聴きもの。

 オーケストラにはオンド・マルトノ(!)やツィンバロン、ギター、パイプ・オルガンなども加わっている。

 「星も光りぬ」は両者のアレンジで聴くことができて、それぞれのアプローチの違いが分かって面白い。

 何より編曲の面白さで楽しめる1枚だけれども、マリナーの指揮も品よくまとめている。

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プッチーニ オペラ「トゥーランドット」(シャイーの映像)

BD

 ■ G・プッチーニ作曲/オペラ「トゥーランドット」

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 ▲ R・シャイー指揮/ミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団

 2015年のライブ録画。

 演出はレーンホフ。国籍不明の、いわゆる『近未来風』の舞台。

 民衆(?)は仮面をかぶり、最初に登場する役人はマジシャン風。盲目となったティムール(@カラフの父)はサングラスをかけて登場。

 第1幕ではトゥーランドットが登場せずに、代わりに皇帝アルトゥーム(@トゥーランドットの父)が姿を現す。ちなみに、上の写真で中央の白い人物が皇帝で、下の黒い人物がトゥーランドット。

 そうすると、カラフが謎解きに挑戦する動機は何なのか。つまり、カラフがトゥーランドットの美しさに一目惚れして...というオリジナルの設定は成り立たなくなる。

 どうも「皇帝率いる悪の組織 vs. 正義の味方カラフ」という図式に見える。

 事実、第2幕後半の謎解きの場面ではカラフに対決姿勢(敵意)が感じられ、謎を解き終わった後は「どうだ、参ったか!」とばかりだ。

 そして、一般的なアルファーノ版によるエンディングは、指揮のシャイー自身が委嘱したベリオ版を使用。

 このベリオ版、アルファーノ版で使用されている素材も使ってはいるけれど、「めでたし、めでたし」のド派手な大団円とはならずに、自害したリューの亡骸を前にニ重唱が歌われ、最後は扉の向こうに二人で去っていき、音楽も静かに終わる。

 決して『現代音楽』風のものではないので、木に竹を接いだような違和感は感じないし、これはこれでなかなか面白く聴ける。

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フンパーディンク ヘンゼルとグレーテル(ティーレマンの映像)

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 ■ フンパーディンク作曲/オペラ「ヘンゼルとグレーテル」

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 ▲ C・ティーレマン指揮/ウィーン国立歌劇場管弦楽団

 2015年のライブ録画。

 一番の問題は、主役の2人(ヘンゼルとグレーテル)が『子供』に見えないこと。ステージで観れば違うのかもしれないけれども、アップが続く映像ソフトではかなりツライ。

 観ていくにつれて、グレーテルはだんだん慣れてきたけれども、ヘンゼルは最後まで違和感がぬぐえなかった。

 それに目をつぶれば(目をつぶれれば?)、黒メガネのエプロン姿で登場する魔女は怖いというより愛嬌があるし、第2幕最後のパントマイムの場面はとてもいい。もちろん、ティーレマン指揮のオーケストラも素晴らしい。

 でも、やっぱり...(最初に戻る)。

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ヴェルディ アイーダ(パルマ・レッジョ劇場の映像)

BD

 ■ G・ヴェルディ作曲/オペラ「アイーダ」

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 パルマ・レッジョ劇場での2012年ライブ録画。日本語字幕付。

 ラダメス(エジプトの将校)とアイーダ(女奴隷、実はエチオピア国王の娘)、アムネリス(エジプト国王の娘)の三角関係を柱に、アモナズロ(エチオピア国王、身分を隠して奴隷になっている)が絡む物語。

 「アイーダ」というと、第2幕の凱旋の場面(有名な行進曲)のイメージがあまりに強いのだけれども、オペラそのものは上記のような人間ドラマであり、ヴェルディの音楽も実に見事に描き切っている。

 ラダメスとアイーダは相思相愛、アムネリスはその仲に嫉妬する。

 エジプトとエチオピアは敵国同士。エチオピア軍を破った褒美に、ラダメスはエジプト国王から、娘であるアムネリスと結婚し、将来エジプト国王の座を約束される。

 しかし、問題は、このラダメスという男なのだ。

 国王の娘と婚約し、将来の地位を約束されているのも関わらず、こっそりとアイーダに会い来る。あまりにも都合がいいし、アイーダだっていい気持ちはしないだろう。

 そもそも、アイーダは奴隷(しかも敵国の)なのだから、「祖国を取るか、彼女を取るか」という究極の選択になるはずなのに、それについて悩んでいる様子は見えない。

 そして、アイーダから「一緒に国外へ逃げよう」と言われると、それに乗ってしまい、さらには軍の機密も漏らしてしまう軽さ。

 彼を後継者に選んだ国王は、人を見る目が無いとしか言いようがない。

 それに比べると、虎視眈々と逆襲を狙うエチオピア国王のアモナズロの方がはるかに立派で筋が通っているというものだ。

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プッチーニ ラ・ボエーム(ザルツブルグ音楽祭ライブ)

BD

 ■ プッチーニ作曲/オペラ「ラ・ボエーム」

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 2012年、ザルツブルグ音楽祭のライブ。指揮はD・ガッティ。

 以下は、あくまで映像ソフトを観ての感想です。

 現代を舞台に、マルチェルロは映像作家(映画監督?)、コルリーネはサックス奏者。

 ミミ(アンナ・ネトレプコ)も今風の女性。見た目も派手で、最初にマルチェルロの部屋にやって来たのも、タバコの火を借りに来たらしい。

 第2幕はカラフルで楽しめる、クリスマスの雰囲気。最初はみんなショッピング・カートを押していて、パピニョールはアニメのヒーローの如くに空を飛んで現れる(胸には「P」のマーク)。

 ムゼッタは毛皮のマフラーをしてゴージャスなファッション、これはピッタリはまっている。

 第3幕は高速道路のインターチェンジ(?)。第4幕では引越しの荷造りをしているようだ。

 いわゆるオーソドックスな「ボエーム」とは様相は違い、設定はそれなりに楽しめるけれども、何だか、全然『泣けない』のは、ミミの表情に感情(喜怒哀楽)が殆ど感じられないからだろうか。

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ラヴェル 子供と魔法(グライドボーンの映像)

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 ■ M・ラヴェル作曲/オペラ「子供と魔法」

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 ▲ 大野和士指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 2012年、グラドボーン歌劇場でのライブ録画。ロラン・ペリ演出。

 いわゆる『オーケストラの魔術師』、ラヴェルがあの手この手を駆使して、さまざまな情景を描いている。ラヴェルの最高傑作と言ってもいいオペラ。

 「フォックストロット」での(「ボレロ」ばりの)トロンボーンのハイトーンのソロ。

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 その場面でのティー・カップの女性などは、子供が見るとうなされそうだ。

 王女の歌の伴奏は1本のフルートのみ。続く、王女への切ない想いを歌う甘美な音楽は、『作りモノ』を超えて真に迫るものを感じる。

 音楽だけでも十分楽しめるけれども、これに映像が付けばなお楽しい。

 次から次へと登場する濃いキャラを持った登場人物。奇妙な、しかしファンタジーに溢れた世界。

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ガーシュウィン ポーギーとベス

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 ■ G・ガーシュウィン作曲/オペラ「ポーギーとベス」

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 ▲ サンフランシスコ歌劇場

 2009年、サンフランシスコ歌劇場でのライブ録画。

 「サマータイム」を始めとするナンバーや、オーケストラ、吹奏楽の抜粋版、編曲版で演奏されることが多い名作オペラ。そのオリジナル全曲版のステージ。

 ドラマ、音楽の素晴らしさはもちろん、ポーギーとベスを引っ掻き回す荒くれ者でベスの元夫クラウン、いかにも『小悪党』といった風体のスポーティンライフが、ヒールとしての見事な存在感。

 ポーギーがベスを追ってニューヨークへ向かうエンディング、「おお主よ、出発します(O Lawd, I'm On My Way)」は感動モノ(決してハッピーエンドではない)。

 結局、ポーギーはベスに会えたんだろうか。でも「行かない」という選択肢は無かったんだろうなぁ...。


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 ▲ S・ラトル指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 1995年(ベルリン・フィル首席指揮者就任前)のヴァルトビューネ・コンサート。

 コンサート形式での抜粋版の演奏。見ものはスポーティング・ライフ役のデーモン・エヴァンスの悪党ぶり。


 【管弦楽版】

 管弦楽によって演奏されるハイライト版としては主に以下の2種類があります。

  1.ベネット編曲による「交響的絵画」
  2.ガーシュウィン自身による演奏会用組曲


 【1】 G・ガーシュウィン作曲(R・R・ベネット編曲)/交響的絵画「ポーギーとベス」

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 ▲ A・ドラティ指揮/デトロイト交響楽団

 1982年録音。

 同名の名作オペラをベネットが編曲した管弦楽作品。

 オペラのストーリを追っているのではなく、また単純に有名なナンバーを繋いだものでもなく、このオペラの持っている『雰囲気』を見事に表現している、「メドレー」でも「ハイライト」でもない、まさしく「交響的絵画」として再構成している。

 演奏は生真面目な雰囲気もあるけれども、"symphonic" と題されたこの曲にはふさわしいと思う。

 カップリングは「グランド・キャニオン」組曲。


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 ▲ C・デュトワ指揮/モントリオール交響楽団

 1988年録音。全盛期のコンビによる華やかなオーケストラサウンドが聴ける。


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 ▲ A・プレヴィン指揮/ロンドン交響楽団

 1980年録音。抜粋版。

 ひたすら派手でゴージャスなサウンド(映画音楽風?)、金管の鳴りが気持ちイイ。

 プレヴィンはベネット版を大胆にカットして、有名なナンバーの『メドレー』として作り上げている。

 冒頭の数分間、物売りの声などキャットフィッシュ・ロウの情景を描いた音楽をばっさりカット、いきなりオペラのオープニングの華やかな音楽で始まり、「サマータイム」へと続く。途中の嵐の音楽もカット。

 こうなると、ベネットが意図した「交響的絵画」というコンセプトからは外れてしまっているけれども、そう割り切ってしまえば(ベネット版に拘らなければ)、最高に楽しい「メドレー」になっている。

 カップリングはガーシュウィン作曲の「セカンド・ラプソディ」と「ピアノ協奏曲」。


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 ▲ E・スヴェトラーノフ指揮/ソビエト国立交響楽団 

 1980年のライブ録音。所々カット有。

 ギトギト濃厚の「サマータイム」や「ベス、お前は俺のもの」。アップテンポになると阿鼻叫喚。そして、エンディングは思いっきり引き伸ばします。

 受け付けない人は一口で吐き出す(私は大好物)。劇薬注意!


 【2】 G・ガーシュウィン作曲/「キャットフィッシュ・ロウ」組曲

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 ▲ E・カンゼル指揮/シンシナティ・ポップス管弦楽団

 オペラ「ポーギーとベス」に基づく、ガーシュウィン自身による組曲。

  1.キャットフィッシュ・ロウ
  2.ポーギーは歌う
  3.フーガ
  4.ハリケーン
  5.おはよう、シスター

 有名曲のメドレー(接続曲)と言うよりは、原曲を重視したオーケストラ用の組曲。

 1曲目はオペラのオープニング、華やかな導入からジャズボ・ブラウンの弾くピアノのブルース、続いて有名な「サマー・タイム」。

 2曲目は有名なナンバー、バンジョーによる「俺にはないものばかり」と、ベスとのデュエット「ベス、お前は俺のものだ」。

 続く2曲は緊迫感のあるドラマチックな音楽が展開され、最後はポーギーが旅立つオペラのエンディング「おお主よ、私は出発します」。朝の情景から晴れやかな幕切れになる。

 カンゼル盤は明るいサウンド、決してシンフォニックに重くなり過ぎない、ある種の軽さがあるところがいい。


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 ▲ J・レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団

 1990年録音。

 予想通、りパワフルで勢いのある筋肉質の演奏。速めのテンポでキビキビと進められる。

 2曲目のバンジョーは大人数で弾いている?

 シンフォニックと言えばそうだけれども、個人的にはもっとリラックスした雰囲気の演奏を聴きたい。

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プッチーニ トスカ(パッパーノ&コヴェント・ガーデン)

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 ■ G・プッチーニ作曲/オペラ「トスカ」

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 2011年、コヴェント・ガーデン王立歌劇場でのライブ録画。

 何と言ってもターフェルのスカルピアがいい。第1幕後半の登場から、「テ・デウム」、第2幕でトスカを追い詰め、トスカがスカルピアを刺す場面まで、とにかく目が離せない。ある意味、『カッコイイ』。

 指揮のパッパーノや出演者によるイントロダクション(作品紹介)が付いていて、こちらも日本語字幕付きなのが嬉しいです。

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プッチーニ 修道女アンジェリカ(英国ロイヤル・オペラハウス)

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 ■ G・プッチーニ作曲/オペラ「修道女アンジェリカ」

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 2011年、英国ロイヤル・オペラハウスでのライブ録画。指揮はA・パッパーノ。

 「三部作」の2曲目。初演時は酷評されたそうだし、今だってそんなに人気のあるオペラではないけれども...。

 前半の展開はのんびりしているけれど、アンジェリカが息子の死を告げられて歌うアリア「母もなく」から幕切れまでの展開は素晴らしい。

 修道院の中の児童療養所らしき場所を舞台に、自ら調合した毒薬を飲んで息絶えるアンジェリカは、その療養所にいる少年に、天国にいる(これから会いに行く)自分の息子の姿をダブらせてすがりつく...。

 元のストーリーとは異なる、現実的な、けれど『救い』のないエンディング...色々あるだろうけれども、ラスト20分間は涙無くして観る(聴く)ことはできない。

 アンジェリカを歌ったエルモネラ・ヤオはカーテンコールでも、その昂ぶった気持ちを抑えられないような熱演。パッパーノの指揮も◎。

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プッチーニ トゥーランドット(リセウ大歌劇場)

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 ■ G・プッチーニ作曲/歌劇「トゥーランドット」

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 2005年、バルセロナのリセウ大歌劇場でのライブ録画。

 まず素晴らしいのがリュー(バルバラ・フロットリ)。「リューの死」の場面では、展開は分かっているものの、涙無くして観ることはできない。

 そして、アッと驚く予想外の幕切れ。

 演出のヌリア・エスペルはスペインを代表する女優さんだそうで、力に屈して相手のものになり、「めでたしめでたし」という(男性目線の?)エンディングには納得がいかなかったのか。

 しかし、決して無理やり感は無く(むしろオリジナルの方が強引だ)、「なるほど」とも思わせてくれる。

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