ブリテン

ブリテン 4つの海の間奏曲(オペラ「ピーター・グライムズ」から)

CD

 ■ B・ブリテン作曲/4つの海の間奏曲

 オペラ「ピーター・グライムズ」の間奏曲から4曲を選んで演奏会用に編んだもの。

  1.夜明け(第1幕への間奏曲)
  2.日曜日の朝(第2幕への間奏曲)
  3.月の光(第3幕への間奏曲)
  4.嵐(第1幕第2場への間奏曲)

 いずれもタイトルの音楽が展開する。

 1曲目は「ダフニスとクロエ」の「夜明け」のような爽やかさ、晴れやかな気分は皆無。どんよりと重苦しい。

 16分音符の細かい動きがアクセントになっているが、これは空を飛ぶ海鳥だろうか。

 一人断崖絶壁に佇み、静かにうねる海の遠く、昇ってくる太陽を見つめている...そんな光景が眼に浮かぶ。

 2曲目は清々しい朝の情景。鳥の囀りも聞こえる。4本のホルンが鐘の音を模倣し、曲の後半では本物の鐘が鳴る。

 3曲目は水面にキラキラと光る月の光。

 そして、終曲の「嵐」。ひたすら荒れ狂うのではなく、一瞬音楽が静まるところが不気味だ。「嵐」を描写した音楽は色々あれど、私はこれ以上のものは知らない。

 ちなみに、チェザリーニ作曲の吹奏楽曲「ブルー・ホライズン」はこの曲にとてもよく似ています。

 

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 ▲ N・ヤルヴィ指揮/ベルゲン・フィルハーモニック管弦楽団

 1988年録音。緊張感を強いるのではなく、大らかにオケを鳴らした演奏。透明感があり、でも決して冷たくはない。人間臭さを感じる。


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 ▲ E・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団

 1976年録音。カラフル、かつ、艶やかに、目一杯オケを鳴らした演奏。一本調子な感もあるけれども、このサウンドを楽しむものだと思う。

 しかし、2曲目冒頭のホルンを左右に分けるのは、さすがにそぐわないように思う。また、途中に出てくる鐘の音は、なんだか「ローマの祭り」でも聴いているような気分になった。


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 ▲ L・ペシェク指揮/ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団

 1989年録音。終曲の「嵐」の前に「パッサカリア」を挟んで演奏。

 派手さはないけれども、堅実な、個人的に好きな演奏。


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 ▲ B・ブリテン作曲/ロイヤル・オペラ・ハウス(コヴェント・ガーデン)管弦楽団

 1958年録音。作曲者自身の指揮による録音。

 ただし、オペラ全曲盤からの抜粋で(歌も入っている)、上にあげた録音のように演奏会用のスコアではないので要注意。

 以下が抜粋元の全曲盤。

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ブリテン フランク・ブリッジの主題による変奏曲(チャバ)

CD

 ■ ブリテン作曲/フランク・ブリッジの主題による変奏曲

 Csaba

 ▲ ペーター・チャバ(Peter Csaba)指揮/ニュー・ストックホルム室内管弦楽団

 1988年録音。

 弦楽合奏のための作品。フランク・ブリッジはブリテンの先生に当たる人で、そのブリッジの「弦楽四重奏のための3つの牧歌」の第2曲を主題にした変奏曲。

 ちなみに、私はこの曲(「3つの…」)の原曲も、ブリッジの他の作品も聴いたことがありません。

  序奏と主題
  1.アダージオ
  2.行進曲
  3.ロマンス
  4.イタリア風アリア(ピチカートによるギター風トレモロの伴奏)
  5.古典風ブーレ(ヴァイオリンのソロが活躍)
  6.ウィンナ・ワルツ(かなりデフォルメされたワルツ)
  7.無窮動(一本の旋律線を様々な楽器で受け継いでいく)
  8.葬送行進曲
  9.聖歌
  フーガとフィナーレ

 ブリッジの主題は、短い導入の後に弦楽四重奏で現れる。『牧歌』というタイトル通りに静かな、物思いにふけるような印象がある。

 変奏の最初はいきなり「アダージオ」で始まる。

 そして、変奏の最後を締めるのも「葬送行進曲」「聖歌」という『アダージオ系』になっていて(この3曲はショスタコーヴィチ的な雰囲気も感じる)、この構成が曲全体の内省的、内向きな印象を強めている。

 ブリテン自身による録音もあるけれど、このチャバ盤はとてもスッキリとした響きの演奏。

 ちなみに、チャバ氏は1952年、ルーマニアのハンガリー系音楽家の家庭の生まれ。公式サイトには九州交響楽団を指揮した映像もアップされています。

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ブリテン ラクリメ(アイオナ・ブラウン)

CD

 ■ B・ブリテン作曲/ラクリメ(ダウランドの歌曲の投影)

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 ▲ アイオナ・ブラウン指揮/ノルウェー室内管弦楽団

 1990年録音。

 ヴィオラ独奏と弦楽合奏のための曲(オリジナルはピアノ伴奏)。

 ちなみに弦パートは「2番ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス」となっていて、1番ヴァイオリンが省かれている。

 一種の変奏曲であるけれども、主題は曲の最後になって初めて姿を現す。

 とにかく地味な曲だけれど、現代的な雰囲気の音楽が続き、最後にダウランドの主題が現れる、ラスト16小節。そのカタルシスがこの曲の肝であって、聴き所だと思う。

 指揮をしているアイオナ・ブラウン(2004年に亡くなられています)は女性で、ヴァイオリン奏者としても有名。

 マリナー&アカデミーの録音にも参加していて、ヴィヴァルディ作曲の「調和の幻想」(作品3)では何曲かでソロパートを担当。

 ヴァイオリンもそうなのだけれども、ちょっと癖がある、神経質な音楽を作っていて、それがこの曲には合っているように思う。

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ブリテン 青少年のための管弦楽入門

CD

 ■ B・ブリテン作曲/青少年のための管弦楽入門

 副題は「パーセルの主題による変奏曲とフーガ」。

 いわゆる『楽器紹介』の曲。何気に音楽の授業で聴かされた曲ではあるけれども、『観賞用』としてもとてもよく書けている名曲。

 主題の提示の後、変奏をオーケストラの各楽器(パート)が順々に行っていく。管楽器の変奏はソロではなくて、そのパートのアンサンブルになっているところもミソ。

 ブリテンのオリジナルの主題による最後のフーガは、ピッコロから始まって、フルート、オーボエと、これまた各パートが順番に入ってきて、最後に打楽器まで行った所で、このフーガの主題に大元のパーセルの主題が金管楽器で(今度は長調で)重なり、そして、打楽器のリズムを強調したエンディング。

 とても上手くできている構成で、元のアイデアは依頼元(BBC)なのかもしれないけれど、ブリテンは見事にその要望に応えて見事な作品に仕上げていて、最高級の職人技と言える。

 また、スコアにはナレーションを入れない場合の演奏方法も併せて書かれていて、「ピーターと狼」などとは違って、ナレーション無しでも十分成立する。

 

 【ナレーション無し】

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 ▲ B・ブリテン指揮/ロンドン交響楽団

 1963年録音。私が最初に聴いた録音で、それ以来の愛聴盤。まずはこの演奏を。

 きびきびとしていて、明快でクリア。屈託のない演奏は、この曲に相応しい、まさに『入門』といった感じ。

 カップリングは「シンプル・シンフォニー」と「フランク・ブリッジの主題による変奏曲」。


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 ▲ ネーメ・ヤルヴィ指揮/ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団

 1988年録音。

 オケによるのか録音によるのか、とても落ち着いた雰囲気の、恰幅のいいスケール感のある演奏。

 この曲、息子(パーヴォ)も録音していて、そちらの方が注目されがちだけれども、私はこちら(父盤)を取ります。

 カップリングは「4つの海の間奏曲」、「チェロ交響曲」、ペルト作曲の「ブリテンへの追悼歌」と渋いところ。


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 ▲ A・プレヴィン指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

 1985年録音。このプレヴィン盤は、品の良い、また余裕を感じさせる、『大人の』演奏。

 刺激を求める向きには物足りないかもしれないけれど、オーケストラの音もテクニックも申し分なく、落ち着いて聴くことができる。

 カップリングはオペラ「グロリアーナ」から「宮廷舞曲」と、「ピーターと狼」(語りはプレヴィン自身)。


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 ▲ L・ペシェク指揮/ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団

 1989年録音。指揮者の色が強く出ていない分、曲そのものを素直に楽しめる。個人的に好きな演奏。


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 ▲ E・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団

 1957年録音。遅めのテンポでの余裕のある音楽運び。

 明るくて豪華なサンドは『ブリテン作品』としてはちょっと違和感もあるけれども、曲が曲だけに十分楽しめる。


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 ▲ L・ストコフスキー指揮/BBC交響楽団

 1963年のライブ録音。

 重々しく始まる最初のテーマは後半部で大きくテンポを落としていく。各変奏ではそれぞれに独特の表情が付けられ、特にテンポが遅い変奏ではコッテリとしたロマンチックな味わいを持つ。

 終曲のフーガは最後へ向けてどんどんテンポを煽り、大きくアラルガンドして曲を締め、会場は大喝采となる。


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 ▲ G・ロジェストヴェンスキー指揮/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

 1960年9月9日、エジンバラでのライブ録音(モノラル)。とにかく興味津々のプログラム。

 力強い弦楽器、金管楽器の独特の太いサウンド、パワフルだけど今一つまとまりの無い打楽器等々...(ある意味)期待は十分満たされる。

 ただ、曲に慣れていないこともあるのか、危なっかしい箇所も多々あり、そして最後の「フーガ」になって悲劇が...。

 まず、ピッコロの主題をフルートが追いかける所で、混乱してアンサンブルが乱れる。伴奏の無い2声の部分なのでこれはツライ。何とか立て直すも、バイオリンの掛け合いも結構アヤしい。

 そして遂にエンディングでシンバルが完全に見失い、全く関係ないところで「ジャン・ジャン」叩きまくり、支離滅裂のまま最後の和音に突入。「ああ、無事終わった!(安堵)」

 この曲は1946年初演なので、当時は『新曲』の部類だったろうし、曲を聴いたことのない奏者も多かったのではなかろうか(『西側』の曲だし)。しかし、何と言っても、当時のソビエト(東側)を代表するオケ。「いくらなんでも...」と思わないでもない。

 演奏後、聴衆は拍手喝采ではあるけれども、あくまで「ドキュメント(記録)」として楽しむ録音だろう(これを<楽しめれば>だけれど...)。

 なお、この曲の後にアンコールで演奏された、「タイボルトの死」が収録されているのが嬉しい(曲名を告げる指揮者の肉声付き)。

 カップリングはプロコフィエフ作曲の「交響曲第5番」(1971年ライブ)。


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 ▲ S・ラトル指揮/バーミンガム市交響楽団

 1995年録音。スッキリとまとまった、洗練された雰囲気の演奏。

 弦楽器を対向配置(第1、2ヴァイオリンを左右に分けている)にしているので、ヴァイオリンの変奏やフーガでの掛け合いの効果が面白い。


 【ナレーション付き】

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 ▲ J・ランチベリー指揮/メルボルン交響楽団

 1997年録音。ナレーション入り。

 ナレーション(英語)を担当しているのはデイム・エドナ・エヴァレッジ(Dame Edna Everage)。

 この方はオーストラリアのコメディアン、バリー・ハンフリーズが女装したキャラクターだそうで、このCDでも女装...要は、女性の声色を使ってます。

 地元では(?)結構有名な方のようですけれども、私は知りません...ただ、決して悪ふざけしている訳ではないので、『キワモノ』感はないです。写真を見るとちょっと引きますが...

 で、肝心の演奏の方はとても良くて、明るい雰囲気を持った、真っ当なものです。

 カップリングは「ピーターと狼」、「小象ババール」。


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 ▲ H・ケーゲル指揮/ドレスデン・シュターツカペレ

 1971年録音。ナレーターはロルフ・ルードヴィヒという方。ただしドイツ語。対訳が付いているけれども、一般的な楽器紹介を淡々と語っている。

 遅いテンポの「主題」は重々しくドラマチック。小太鼓のガチガチのリズムはドイツ・マーチのように聞こえる。

 1つ1つのヴァリエーションをキチンと描き分けていて、独特の雰囲気を持つけれども、オケがいいので聴き応えがある。特に弦楽器のヴァリエーションがいい。

 カップリングは「ピーターと狼」。


 【両バージョン収録】

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 ▲ E・ボールト指揮/ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団

 1956年録音。

 テーマから速めのテンポ、楷書体の硬派な演奏。トロンボーンとチューバの変奏ではテンポを落としてスケールの大きさを感じさせる。

 フーガのテンポも遅めで、スコアに書かれている色んな音符が聞こえてきて面白い。

  A ボールト自身によるナレーション付き(モノラル)
  B ナレーション無し(ステレオ)

 の2種類が収録されていて、演奏そのものは同じ。

 これはどちらも楽しめるけれど、スコアは「ナレーション付き」の方を演奏しているので、「B」は聴きなれている演奏とは、各変奏のつなぎの部分が違っている。

 下は録音当時のボールトの写真。

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 ボールトは1889年生まれなので、この時すでに70歳近く。しかし、そのナレーションは風貌や年齢からは想像も付かない、若々しくソフトな、また品のある語り口で、とても分かりやすい。


 【映像(ナレーション無し)】

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 ▲ マイケル・ティルソン・トーマス指揮/サンフランシスコ交響楽団

 2011年9月7日、「創立100周年ガラ・コンサート」からのライブ録画。ナレーションは無し。

 ノリ良く、楽しそうに指揮しているトーマスに比べ、奏者は真剣な目つき。

 あくまで「オーケストラ作品」として、それぞれの変奏を描き分ける。

 こういった遊び心のある楽しい曲は、この指揮者にピッタリだと思う。

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ブリテン シンプル・シンフォニー(マリナー)

CD

 ■ B・ブリテン作曲/シンプル・シンフォニー

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 ▲ N・マリナー指揮/アカデミー室内管弦楽団

 1971年録音。

 作曲者自身の指揮による録音もあるけれども、よりスッキリと聴きやすくまとめられている。この手の曲はマリナーの得意とするところだと思う。

 ブリテンの幼少時代(9~12歳)の習作から素材を取って、20歳の時に作曲された、弦楽合奏、または、弦楽四重奏のための作品。

  第1楽章:騒がしいブーレ
  第2楽章:おどけたピッツィカート
  第3楽章:感傷的なサラバンド
  第4楽章:ふざけた終曲

 「単純な交響曲」という邦訳もあるけれども、『単純』というのはニュアンスに違和感を感じて、やはり『シンプル』というのがピッタリだ。

 プロコフィエフの「古典交響曲」を思わせるようなところもあり、素材は子供の頃のものとしても、どこかシニカルな響きがする。

 また、各楽章のタイトルも単純に「ブーレ」「ピッツィカート」「サラバンド」「フィナーレ」とするのではなく、一言添えられているのもブリテンらしい。

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ブリテン 戦争レクイエム(ネルソンス&バーミンガム市響の映像)

BD

 ■ B・ブリテン作曲/戦争レクイエム

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 ▲ A・ネルソンス指揮/バーミンガム市交響楽団

 2012年5月30日、この曲が初演(1962年5月30日)されて50周年コンサートのライブ録画。

 会場は初演と同じコヴェントリー大聖堂(オケも同じバーミンガム市響)。

 室内オーケストラと男声ソリスト2名はオーケストラの前、児童合唱は客席の後方(指揮者は別)に配置。

 ブリテンの代表作でもある傑作の、まさに50周年のコンサートでの演奏という重責もあってか、指揮者も含めた演奏者の意気込み、緊張感が伝わってくる、すばらしいパフォーマンス。

 「リベラ・メ」の後半、バリトンのソロが「自分は君が殺した敵の兵士である」と告白する部分でのテノールの表情は演技なのか、自然に生まれたものなのか。

 そして、演奏後の長い沈黙は、演奏者だけではなく、その場にいた全ての聴衆の祈りのようにも感じられる。

 この名曲の映像ソフトとしては申し分のないものだと思う。

 ちなみに、協力に「NHK」がクレジットされているのだから、日本語字幕がほしかった...。

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ブリテン ソワレ・ミュージカル/マチネ・ミュージカル

CD

 ■ B・ブリテン作曲/「ソワレ・ミュージカル」「マチネ・ミュージカル」

 いずれも、ロッシーニ作品をベースにした5曲から成る組曲。

 ◆ ソワレ・ミュージカル(1936年)

  1.行進曲
  2.カンツォネッタ
  3.チロレーゼ
  4.ボレロ
  5.タランテラ

 ◆ マチネ・ミュージカル(1941年)

  1.行進曲
  2.夜想曲
  3.ワルツ
  4.パントマイム
  5.常動曲

 難解なところがない親しみやすく楽しい音楽だと思うのだけれど、録音の数は少ないようです。

 以下は2曲収録されたCD。ボニング盤、ボールト盤はオススメです。

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 ▲ R・ボニング指揮/ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団

 1981年録音。

 「ブリテン作品」というよりも「バレエ音楽」として捉えているのだろうけれど、明るいサウンドで、ストレートにこの曲を楽しませてくれる。イチ推し。


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 ▲ A・ギブソン指揮/イギリス室内管弦楽団

 1983年(?)録音。

 明るく華やかな雰囲気の演奏。

 ただ、エコーの効いた録音もあってか、響きが厚ぼったく(厚化粧)、いかんせん重い。これは、カップリングの「マチネ・ミュージカル」も同じ。


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 ▲ A・ボールト指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 1956年録音。

 どことなく垢抜けない、ドタバタした雰囲気が楽しめる。オケもそんなに『上手』な感じがしないのも、逆に雰囲気を出している。

 上手くまとめるというよりも、プレイヤーがこの音楽を楽しみながら演奏しているような味わいがある。

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ブリテン 「ピーター・グライムズ」から「パッサカリア」(ペシェク)

CD

 ■ B・ブリテン作曲/パッサカリア(オペラ「ピーター・グライムズ」から)

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 ▲ L・ペシェク指揮/ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団

 1989年録音。オペラ「ピーター・グライムズ」の(第2幕第2場への)間奏曲を演奏会用に独立させて編曲した作品。

 ペシェクは同じオペラからの「4つの海の間奏曲」と組み合わせて、下記の曲順で演奏しています。

  1.夜明け
  2.日曜日の朝
  3.月の光
  A.パッサカリア
  4.嵐

 渋いながらも堅実な演奏。私は好きです。

 まず「パッサカリア」とは、4または8小節のメロディがベース(低音)に繰り返され、その上に変奏が行われるという楽曲の形式で、通常は4分の3拍子。

 有名なところではバッハのオルガン作品や、類似形の「シャコンヌ」だと、ホルストの「吹奏楽のための第1組曲」の第1楽章など。

 このブリテンの「パッサカリア」は4分の4拍子で書かれていて、なおかつテーマは「2小節+3拍(=11拍)」なのだ(下記の赤枠の部分)。当然のことながら、4分の4拍子で進行する変奏部分とは『ずれて』いく。

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 変奏はヴィオラのモノローグに始まり、続く木管楽器の動きは港町の賑わいだろうか。

 やがて金管楽器が加わり、弦楽器が荒れ狂う。

 音楽は様々な様相を見せるけれど、その背後で終始繰り返されるベースのテーマが不安感を煽り、何かに追い立てられるような緊張感を与えていく。

 頂点の後のコーダで、初めてベース音形が消え、チェレスタの細かな動きの上にビオラのモノローグが戻ってくる。静寂、孤独...主人公はどこへ辿り着いたのだろうか。

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