管楽器

尾高尚忠 フルート協奏曲

CD

 ■ 尾高尚忠作曲/フルート協奏曲

 作曲者の尾高尚忠は、指揮者尾高忠明の父上。作曲だけではなく、指揮者としても日本交響楽団(NHK交響楽団の前身)の常任指揮者を務めました。

 NHKによって創設された「尾高賞」は、この尾高尚忠の功績を記念して創設されたものです。

 このフルート協奏曲は、尾高氏自身によると「現代の管弦楽上許される程度の、常識的な技法範囲で、軽い、心地よい曲を作ろうとしたものである」。

 両端楽章の洗練されたしゃれた雰囲気もさることながら、第2楽章の途中に現れるメロディ(尾高氏によると「文明世界にある我々が、時々憧れる原始的な感傷、フトした『自然への郷愁』」)は堪らなく魅力的だ。

 「日本人作曲家による」という但し書きを抜きにして、「フルート協奏曲」の名曲。

 この曲には2種類の版がある。

 【A】 原典版(作品30a)

 管弦楽はホルン2本、ハープ、弦五部。1947年、森正のフルートで初演。

 全音からスコアが出版されています。

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 http://shop.zen-on.co.jp/p/893614


 【B】 改訂版(作品30b)

 2管編成のオーケストラのために編曲されたもの。楽器編成だけではなく、第2楽章途中のフルート独奏部分はかなり拡大されている。

 ただし、未完に終わり、林光が補筆して完成。1951年、吉田雅夫のフルートで初演。

 

 以下の3種類の録音(吉田雅夫、ランパル)はいずれも改訂版【B】によります。

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 ▲ 吉田雅夫(フルート)/岩城宏之指揮/NHK交響楽団

 1961年3月録音。初演者である吉田雅夫による演奏。

 何というか、『味』がたっぷりと滲みこんだ演奏。

 上手なアマチュアなら十分吹ける曲ではあるけれども、この音と味わいは出せるものではない。まさしく日本の『笛』。

 ちなみに、バックのオーケストラはとても充実した音がしています。


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 ▲ 吉田雅夫(フルート)/外山雄三指揮/NHK交響楽団

 1961年11月30日、杉並公会堂での録音(モノラル)。

 この録音、ライブだと思って買ったら(CDには "Live" の記載があるけれど)、実際は観客を入れない放送用録音でした。ガッカリ...。

 吉田さんのフルートは、ほぼ同時期に録音された上の岩城盤と印象はほぼ同じ。ただ、オーケストラのパートがクリアに聴こえてきて、その分、フルートのソロは引っ込み気味。

 この曲に限れば岩城盤があれば十分なように思うけれども、カップリングのモーツァルト作曲「フルート協奏曲第2番」(1963年のライブ録音)が聴きもの。

 特にマルティノン指揮のオーケストラのサウンドが素晴らしく、指揮者が違うとこんなに『音』が違ってくるものかとビックリする。

 さらには、千葉馨の独奏でリヒャルト・シュトラウス作曲のホルン協奏曲2曲のライブ録音も収録、まさしく『歴史的録音』で、管楽器好きには堪らない内容になっている。


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 ▲ J・P・ランパル(フルート)/森正指揮/読売日本交響楽団

 1968年録音。初演でフルートを吹いた森正の指揮。フルートはかのランパル。

 華やかな雰囲気を持っているけれども、第1楽章の速いパッセージはちょっと雑な感じがするし、またヴィルトゥオーソ的に楽譜を変更してしまっている部分がある。

 なので、まずは吉田雅夫さんの演奏を。

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メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲(フルート版)

CD

 ■ F・メンデルスゾーン作曲/ヴァイオリン協奏曲ホ短調(フルート版)

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 ▲ ヤノシュ・バーリント(フルート)

 P・モランディ指揮/ブダペスト交響楽団。1991年録音。

 あの有名な「メン・コン」のフルート版。編曲はソリストのバーリント、1961年生まれでブダペスト響の首席奏者を務めた方だそうです。

 元々メロディ中心の曲であることもあり、非常に上手くフルートに移されていて、ほとんど違和感なしと言っていい。

 バーリント氏のフルートは(伴奏のオケ共々)かなり地味だけれど、奏者のキャラ(個性)を前面に出し過ぎない分、この演奏を『キワモノ』的なポジションから救っているように思い、もし、ゴールウェイあたりが吹いたら、完全に『彼の曲』になってしまっていたでしょう。

 もう少し『華』がほしい気もするけれど、とはいえ、テクニックは実に素晴らしく、早いパッセージなども見事に吹き切っていて、単なる『企画モノ』以上の演奏。

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モーツァルト 管楽ディヴェルティメント集(バセットホルン)

CD

 ■ モーツァルト作曲/管楽のためのディヴェルティメント集 (K.439b)

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 ▲ トリオ・ディ・クラローネ(ザビーネ・マイヤー、ヴォルフガング・マイヤー&ライナー・ヴェーレ)

 1985年、1986年録音。

 3本のバセットホルン(↓)のための作品。 

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 楽器そのものが珍しいので、色々な編成(クラリネット+ファゴットなど)に編曲されている曲の、オリジナル編成による演奏。

 作家バーナード・ショウが言ったとされる「クラリネットを水で薄めたような音」というのも頷けるけれども、決して悪い意味ではなく、シブい落ち着いたサウンドのアンサンブル。

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Songs for Sunset(リンドベルイ)

CD

 ■ Songs for Sunset

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 ▲ C・リンドベルイ(トロンボーン)

 1996年録音。

 名トロンボーン奏者、C・リンドベルイが「歌の翼に」「白鳥」「愛の挨拶」等々の有名曲17曲を演奏したアルバム(ピアノ伴奏)。

 クラシックだけでなく、チャップリンの「スマイル」「テリーのテーマ(ライムライト)」なども入っていて、特に「スマイル」は絶品です。

 基本的にメロディをそのまま演奏するというスタイル。テクニカルなバリエーションを披露することはない、ストレート勝負。

 ただ、音域は高いので、決して簡単な譜面ではないです。しかも、誰でも知っているメロディ。

 しかし、1曲目の「タイスの瞑想曲」から「トロンボーンで演奏している」ということを大きく超越してしまっている。

 リンドベルイその人の「音楽」「歌」が聞こえるだけで、そこに介在している「楽器」というものの存在と、それを演奏する技術的なものを感じさせない。

 「トロンボーン愛好家」でなくとも一聴の価値ありです。

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ビゼー カルメン・ファンタジー(セヴェリンセン)

CD

 ■ G・ビゼー作曲(F・プロトー編曲)/カルメン・ファンタジー(トランペットとオーケストラのための)

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 ▲ ドク・セヴェリンセン(トランペット)

 E・カンゼル指揮/シンシナティ・ポップス管弦楽団。1989年録音。
 
 「トランペットは踊る」というアルバムに収録。

 ビゼー作曲のオペラ「カルメン」によるファンタジー。

 ヴァイオリンやフルートの同様の曲のように、原曲をベースにして技巧的な装飾を加えるというのではなくて、ビゼーのモチーフを借用しつつ、シンフォニックかつポップス・テイストの自在なアレンジがされている。

 トランペットのテクニックは素晴らしく、オーケストラも派手に鳴りまくり、とにかくカッコイイのだ。
 
  1.前奏曲
  2.アラゴネーズ
  3.間奏曲
  4.ハバネラ

 「前奏曲」は、有名な「闘牛士」のテーマは少しだけ現れるけれど、ほとんどがオーケストラをバックにしたトランペットのカデンツァ。エキゾチックな雰囲気。「ああ、ドクシツェルのソロで聴いてみたい」と思ってしまった。

 そこから休みなく入る「アラゴネーズ」(第4幕への間奏曲)は、テーマを借用しつつも、実にカッコよくアレンジされている。オリジナルがスペイン情緒のある音楽なので、これは見事にハマっている。

 「間奏曲」(第3幕への間奏曲)では抒情的、ロマンチックな音楽を聞かせ、最後の「ハバネラ」は大きく盛り上がり、最後はド派手なエンディングへ。

 他の曲はともかく、これを聴くためだけにでも、このCDを買う価値あり。

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20世紀のチューバ協奏曲集(ボーズヴィーク)

CD

 ■ 20世紀のチューバ協奏曲集

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 ▲ O・ボーズヴィーク(チューバ)

 マンソン指揮/シンガポール交響楽団。2006年録音。

 収録曲は以下の通り。

  R・ヴォーン=ウィリアムズ/チューバ協奏曲
  A・アルチュニアン/チューバ協奏曲
  T・I・ルンドクヴィスト/ランドスケープ(弦楽器、ハープとチューバのための)
  J・ウィリアムズ/チューバ協奏曲

 「20世紀の」作品ではあるけれども(一番古いのがRVWで1954年作曲)、決してややこしい音楽ではない親しみやすさがあり、選曲的にもとても楽しめる。

 RVWの協奏曲は言わずと知れた名曲。やっぱりイイ!

 トランペット協奏曲ばかりが有名なアルチュニアンの協奏曲。3楽章形式で演奏時間13分。RVWの曲を下敷きにしているような印象もある。これが意外に面白いです。民族的な雰囲気も匂う軽妙な音楽。

 J・ウィリアムズの協奏曲はボストン・ポップスのチューバ奏者のために書かれたもので、もちろんシリアスな音楽なのだけれども、この作曲家らしい響きが聴かれて、華やかさもあって、これも面白い。

 ルンドクヴィストはスウェーデンの作曲家で、これは弦楽器、ハープとチューバ独奏のための作品。他の曲に比べるとモダンな響きはするけれども、決して難解な音楽ではありません。

 ちなみに、アルチュニアンの協奏曲はデ・メイ編曲による吹奏楽版もあるようです。

 http://www.sheetmusicplus.com/title/concerto-sheet-music/18494784
 http://www.justforbrass.com/concerto-for-tuba-and-wind-orchestra-113361.cfm

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ヴォーン・ウィリアムズ チューバ協奏曲(フレッチャー)

CD

 ■ R・ヴォーン・ウィリアムズ作曲/チューバ協奏曲

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 ▲ A・プレヴィン指揮/ロンドン交響楽団/J・フレッチャー(チューバ)

 1971年録音。

 1954年、当時のロンドン交響楽団のチューバ奏者であった、P・カテリネットのために作曲された、RVW晩年の作品。

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 第1楽章は、どことなく「イギリス民謡組曲」のような吹奏楽の香りがする。編成にスネア・ドラム(小太鼓)が入っているからだろか。カデンツァの後、コラール風の静かなハーモニーで終わる(Largamente)、不思議なエンディング。

 第2楽章(ロマンツァ)の何と美しいことか。作風も含めて、昔を懐かしむような音楽。バルトークのピアノ協奏曲第3番と比べるのは大袈裟だろうか。

 音域的にはユーフォニウム、ファゴット、チェロなどでも演奏可能であるけれども、チューバが(自身にとっての)高い音域で演奏することで、独特の味わいが出てくる。

 終楽章はモダンな音楽で、ここはこの頃のRVW。

 チューバのための協奏曲という珍しさだけではなく、この作曲家の様々な顔が見れるということでも面白い。

 チューバと言えば「『ぶかぶか』と低い音を吹いている楽器」いう、私の中のイメージを変えてくれたのが、PJBEでのJ・フレッチャー。バックもプレヴィン&LSOと申し分ない。必携の一枚。

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フルート名曲集(P・ガロワ)

CD

 パトリック・ガロワによる「フルート名曲選」。

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 まず値段が安い。4枚組み、70曲収録で、2,000円。

 写真を見ると、昨今ありがちなビジュアルを売りにしているプレイヤーのようではあるけれども、関係者は知っているように、ガロワはフランス国立放送管弦楽団の主席も務めていた実力派。

 伴奏は全てオーケストラで、指揮者の中には、かつてリヨン国立管弦楽団の音楽監督も務めたE・クリヴィヌの名前も見える。

 テクニックはあるけれども、それをことさら見せびらかすことはなく、クラシックだけでなく、映画音楽やイギリス民謡など、よく知られているメロディを演奏することに徹している。

 ゴールウェイのような強力なキャラはないけれども、品の良い、スッキリと爽やかな演奏。

 編曲も面白く、フルートを引き立てつつも、単純に伴奏というだけでなく、フルート独奏が主役のオーケストラ曲という趣もある。

 「モルダウ」や「白鳥の湖」など、結構強引なものもあるけれど、「アルルの女」などは、2つの組曲からのハイライトを10分ちょっとの作品に仕立て上げたりと凝っている。

 フルートのための作品も含まれてるけれども、「ハンガリー田園幻想曲」など、あくまで一般に知られている名曲ばかり。

 こういう企画ができたのも、ガロワが当時、まだまだ売り出し中の若手だったからで、今のガロワ、あるいはパユなどであれば引き受けなかったのではなかろうか。

 好きな曲を取り出して聴くも良し、BGMとして流すも良し...『クラシック名曲集』として「一家に1セット」と言いたくなるようなアルバム。

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ドクシツェルの芸術(DVD)

DVD

 ■ ティモフェイ・ドクシツェルの芸術

 Dokshi

 ロシアの名トランペット奏者、T・ドクシツェルの録音と映像。

 CD2枚とDVDの3枚組。何と言っても興味深いのがDVDの方。

 表記は全てロシア語なので曲目は分かりません。

 私が知っているところでは、「ツィゴイネル・ワイゼン」、「ヴォカリーズ」、「熊蜂の飛行」、「レントより遅く」、「ハバネラ形式の小品」、クライスラー作品。

 アルチュニアンの協奏曲の一部(後半)もあるけれども、オーケストラが映っていないので、レコードに合わせた吹き真似だろうか。

 インタビューは字幕が無いので話している内容は不明。

 映像はモノクロとカラー。音は予想していたより悪くないので、演奏そのものは十分楽しめます。テクニックと歌心。

 しかし、映像の演出についてはツッコミどころ満載。キラキラ光ったり、クルクル回ったり、...それも込みで楽しむものだと思います。

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 タイトル。曲名が並んでいるものと思われます。

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 最初は金管4重奏。大昔のトーキー映画の様な雰囲気です。奏者のアップになると、音と映像が全然合っていません。

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 こんな感じの映像が頻発します。

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 そして最後は、公園の池の畔で甘いメロディを吹くドクシツェル。ニニ・ロッソ風。

 ファンは必見!!

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日本叙情歌集(ドクシツェル)

CD

 ■ 日本抒情歌集

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 ▲ T・ドクシツェル(トランペット)

 有名な日本の歌(叙情歌)を、T・ドクシツェルが演奏しているアルバム(ピアノ伴奏)。

 編曲者は記載されていないけれども、まずは1フレーズ、歌のメロディをそのまま演奏して、その後にバリエーションが続く、よくある構成。

 トランペット奏者ならテクニックを楽しむものかもしれないけれど、何と言っても素晴らしいのは、その『歌心』なのだ。

 彼が原曲をどこまで知っているのかは不明だけれど、何の違和感もなくそのメロディがこちらに伝わってくる。

 正直、この程度のメロディを吹ける人は山ほどいるだろう。どんなアマチュア楽団にだって、中高生にだって。だからこそ、それを聴かせる一番難しいのだ。

 収録曲は以下の通り(画像クリックで拡大)。

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 横文字の曲名から原題が分かりますでしょうか...。

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