シベリウス

シベリウス 交響曲第2番

CD&DVD

 ■ J・シベリウス作曲/交響曲第2番

 シベリウスの交響曲の中で最も演奏頻度の高い曲。私もこの曲から入りました。

 

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 ▲ E・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団

 1957年のCBS録音盤。シベリウスとオーマンディとのツー・ショット。

 作曲者自身が高く評価していたというオーマンディのシベリウス。

 1957年というとシベリウスが亡くなった年。

 いたずらに煽らない、とても素朴な印象の演奏。もちろんオーケストラは鳴っているし、そのサウンドもいい。

 バルビローリの熱さとか、バーンスタインのようなドラマチックな展開は無く、個人的には若干物足りなくも感じるのだけれども、余計な色が付いていないとも言える。


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 ▲ C・デイヴィス指揮/ロンドン交響楽団

 1994年録音。定評のあるデイヴィスのシベリウス。

 決して声を荒げることがない、落ち着いた、暖かみのある音楽。懐の深さを感じさせる、堂々としたスケールの大きい演奏。

 ただ、長らくバルビローリ盤(EMI)に慣れ親しんだ身からすると、どこか肌合いが違うように感じるのも事実。

 要は『穏やか』なのだ。特にティンパニが大人しく感じる(節度がある?)。また、第2楽章でティンパニが抜け落ちるの個所があるのは指揮者の判断なのか、単に奏者のミスなのか(だったら録り直してほしいけれど...)。

 「クレルヴォ交響曲」を含む全交響曲と主要管弦楽曲を網羅した7枚組み。2,000円ちょっとという価格を考えると、とてもコスト・パフォーマンスがいいセットです。


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 ▲ P・ベルグンド指揮/ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

 1986年録音。

 スケールの大きいドラマチックな感動巨編...そんなイメージもある曲だけれど(行き着く先はバーンスタイン盤か)、この演奏は全く趣きを異にするのだ。

 優しく繊細な表情が付けられ、テンポも停滞せず(演奏時間は40分を切る)、これ見よがしな『溜め』を作ることもない。第4楽章の第1テーマも何の気負いもなく演奏される。

 決して荒々しくならない金管、ティンパニも控えめだけれども、終結部のロールは効果的だ。

 「これ1枚あれば...」というものではないけれども、アグレッシブなシベリウスに耳が疲れた時、こういう「シベ2」もいい。


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 ▲ L・マゼール指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 1964年録音。

 まずは、オーケストラのローカルな、垢ぬけしていない響きがいい。

 マゼールは強力に自己主張するけれども、それがストレートに出過ぎずに、オケの音楽と上手く中和されているように感じる。

 いわゆる『北欧的』な雰囲気は無いにしても、とても楽しめる。


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 ▲ O・カム指揮/ヘルシンキフィルハーモニー管弦楽団

 1982年2月4日、大阪フェスティバルホールでのライブ録音。

 冒頭の弦楽器の4分音符の、暖かく広々とした響きからホッとする思いがする。これが自分の中での「シベ2」だ。

 超有名曲だけに、あの手この手を駆使、あるいはスコアに書かれている指示を意図的に強調するような演奏も多いけれども、音楽の流れが自然であり、それが、まさに自分の気持ちの動きと一致するのだ。

 カップリングの「フィンランディア」も◎。


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 ▲ 渡邉暁雄指揮/東京都交響楽団

 1973年4月17日、第52回定期演奏会。東京文化会館でのライブ録音。

 個人的な思い入れもあるかもしれないけれど、とても魅力的な演奏。

 このコンビの演奏は何度となくコンサートで聴き、渡邉暁雄さんについては温和で紳士的な印象があるのだけれども、これは全く違う。

 ティンパニや金管の強奏は荒削りではあるけれども、強力に自己主張する。(悪い意味ではなく)アマチュアっぽい感じすらある。

 第2楽章や第4楽章の第1主題なども、速めのテンポで、どんどん音楽を前へ進めていく。

 昨今のインバルなどとのライブ録音と比べれば、技術的な精度という点では遠く及ばないと思けれど、まだ新しいオーケストラが渡邉氏を音楽監督に迎えて、さあ、これからビッグになるぞという、その勢い、ポテンシャルの高さを感じさせる。

 カップリングは交響曲第1番。


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 ▲ O・ヴァンスカ指揮/ラハティ交響楽団

 1996年録音。

 とても丁寧に作り込まれた演奏...ではあるけれども、音楽と距離感を置いた感じがあって、今一つ入り込むことができない。

 テンポやダイナミック(強弱)の設定が、あくまで『解釈』としてしか見えてこず、その向こう側にあるはずの音楽が感じられない。

 例えば第2楽章。終わり近くの木管や弦楽器の32分音符の動きは譜面通りにきちんと揃えて演奏しているのだけれども、そこまで。また、ほとんど聞こえないような弱音も、さすがにやり過ぎではと思う。

 カップリングは交響曲第3番。


 【映像】

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 ▲ L・バーンスタイン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 1986年のライブ録画。

  1,2,5,7の4曲が収録されているDVD。シベリウス作品の映像ソフトは少ないので、そういう面では貴重。で、バーンスタインには、やっぱり最初の2曲が合ってると思う。

 第2楽章、果てしなく引き伸ばされた金管楽器のクレッシェンド(息が...)。そして、その後の長い間(ま)は、そこで時間が止まってしまったかのようだ。

 フィナーレは予想通り大きく盛り上がり、演奏が終わった後は指揮者も感無量といった体。

 CDで音だけ聴くと「さすがに、これは...」となるかもしれないけれども、映像が付いていると引き込まれてしまう。


【スコア】

 

 その昔に買った、シベリウス作曲の「交響曲第2番」のポケット・スコアがぼろぼろになってしまったので、新しいスコアを購入した。

 以前から持っていたのはブライトコプフ版(海外版)だったけれど、安いし、すぐに入手できるので国内版(音楽之友社版)を発注。届いたスコアを見てみると...

 もちろん、曲(音符)そのものは両方とも同じなのだけれども、その譜面の版組(レイアウト)で、見た目はもちろん下手すると曲の印象そのものも、こんなに違ってしまうものかと驚いた。

 見慣れていたというのもあるにしても、ブライトコプフ版は『密度が濃く』、音友版は『スカスカ』な感じなのだ。

 当然、これは主観なので良い悪いの話ではなく、逆の印象を持つ人もいると思います。

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 ▲ ブライトコプフ版

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 ▲ 音楽之友社版

 ちなみに、市販されている吹奏楽譜のスコアを見ると、妙に『汚い』譜面に出くわすことがある。おそらく何らかのコンピュータ・ソフトで入力し、レイアウトもそのソフトの設定に任せているのかもしれない。

 「音にしてしまえば同じ」と言うかもしれないけれど、楽譜の見た目は、その曲の印象そのものにも影響を及ぼすと私は思っている。

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シベリウス 交響曲第5番

CD

 ■ J・シベリウス作曲/交響曲第5番

 作曲者の生誕50周年の祝賀コンサートのために作曲され、シベリウスの7曲の交響曲の中では第2番に次いで演奏頻度が高い曲。

 初演後に大きく改訂されて、一般的に知られているのがその「改訂版」。

 「原典版」の方はヴァンスカによる録音があります。

 

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 ▲ サラステ指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 2008年のライブ録音。

 第1楽章は内気で内向的。「もっとスケールの大きい、開放的な音楽を...」と最初は感じるけれども、第2楽章で「いや、これでいいのだ」と思い、曲が終わったときには、大きな満足感が残る。

 第3楽章の最後、ホルンによって現れたコラール風のモチーフが遠くから聞える中で、弦楽器が名残惜しそうにメロディを歌い、エンディングへと向かう。

 ドラマチックに派手に盛り上げる演奏ならカラヤンでも聴いていればいい。でも、私はこちらの方が好きだ。


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 ▲ L・マゼール指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 1966年録音。

 第1楽章はスケール感のある、堂々と力強い演奏。そして、エンディングへ向けてどんどん加速していく。

 第2楽章はベルグルンドなどに聴かれる繊細さ、内気さは皆無。この楽章も、途中でテンポ・アップ。

 密度の濃いサウンドはオケによるのか。ホルンが◎。

 あくまでも我が道を行く快演。


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 ▲ P・ベルグルンド指揮/ヨーロッパ室内管弦楽団

 1996年録音。

 私の所有しているスコア(Wilhelm Hansen Edition)には、ベルグルンドによる序文(preface)が書かれていて、そのスペシャリストとしての解釈の完成版のような演奏。

 明るく、スッキリとした透明感のあるサウンド。パワーで押す演奏とは一線を画する。

 音楽は「この曲斯くあるべし」といった確信を感じさせ、ヘルシンキ・フィル盤よりも完成度が高い。

 それは、単に『譜面に忠実に』ということではなく、その中に独特の表情を見せる。

 そして、第3楽章のコーダ(2分の3拍子になってから)。遠くに聞こえるコラールの主題をバックに弦が歌い、最後(Largamente assai.)は消え入るように遠ざかって行く。

 この部分の表情は絶品で、ここがある限り、私にとってこの録音の価値は無くならない。

 ヘルシンキ・フィル盤はどこか中途半端な印象があって、私はこちらの新録音を取ります。


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 ▲ G・ロジェストヴェンスキー指揮/モスクワ放送交響楽団

 1973年録音。

 第1楽章冒頭のホルンの音からして『ロシア』以外の何物でもない。

 4分の3拍子(後半部)に入る前のトランペットは高らかに、凱旋のファンファーレの様でもあり、しかもビブラートの『泣き』が入る。

 金管、ティンパニが鳴らすたびに音はビリビリと歪み、終結部でのティンパニの強打には思わずのけぞってしまう。

 第3楽章、ホルンのコラールは一音一音にアクセントがつけられ、鐘の音のように響く。1,2番と3,4番のバランスが悪いけれども、そんなのは気にしない。

 そしてコーダ。ベルグルンド盤のような、涙が出てくるような儚さ、情感は一切無い。

 弦楽器を押しのけて、「オレが主役!」とばかりに無遠慮に吹き鳴らすトランペット。

 その無法状態のまま終結部へなだれ込み、最後の連続する和音も妙に短く余韻も何もない。

 いやはや何とも...でも堪りません。

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シベリウス 交響曲第1番

CD&DVD

 ■ J・シベリウス作曲/交響曲第1番

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 ▲ L・ストコフスキー指揮/ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団

 1976年録音。

 まず、曲想からしてストコフスキーにピッタリの曲であると思う。

 導入部のクラリネットのソロは表情豊かで、こちらに語りかけてくるようだ。

 第1楽章は正攻法ではあるけれど、第1主題導入のヴァイオリンのトレモロを弱音で演奏させるなど、独特のニュアンスがあり、再現部第2主題のハープも幻想的で美しい。

 第2楽章は遅いテンポでじっくりと曲を進め、快速の第3楽章はティンパニもビシビシ決まる。

 第4楽章は普通の演奏で聴くと、何とも大袈裟で居心地が悪いこともあるのだけれども、ストコフスキーは一気呵成に飛ばし、そのようなことは全く感じさせない。雄大な第2主題部はお得意とするところだろう。

 最後、コーダに入って再びテンポ・アップ。そのため音楽がもたれることが無い。

 この曲の多くの録音を聴いたけれども、その中でも出色の演奏だと思う。「ストコフスキーだから・・・」と敬遠するなかれ。


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 ▲ L・マゼール指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 1963年録音。

 第1楽章、クラリネットの長いソロによる序奏から主部へ入ると、バイオリンの刻みがささやくような弱音で始められる。

 そこから勾配を徐々に登って行き、トランペットも加えた「fff」の頂点へ到達して爆発。荒々しい金管楽器、ティンパニ。お見事。

 音楽はアグレッシブであり、随所に「そう来るか」という表現が見られ、下手すると手持無沙汰になる(冗長な)音楽が、最後まで弛緩することがない。

 音の感触は『北欧』的ではないにしても、とにかく面白く聴ける。

 しかし、若干33歳で、ウィーン・フィルを振ってこれだけの音楽を作り上げるのだから、やっぱりタダ者ではない。


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 ▲ P・ベルグルンド指揮/ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

 1986年録音。

 第1楽章、主部冒頭のバイオリンの刻みはクッキリと鮮やかに。マゼールとは反対のやり方だけれども、これもインパクトがある。

 その第1主題の頂点では、やみくもにパワーを爆発させるのではなく、キッチリと抑制が効いている。

 第1楽章のエンディング、コントラバスの「E」の音の上にチェロが「E-F#-G」と動き、ここにティンパニのロール(H)が重なってくるものだから、多くの演奏では混沌としてしまっているのだけれども、ここもはっきりと音の動きが聞こえてくる。

 スタッカートの指定をテヌートに変えたりなど、『譜面通り』という訳でもないけれど、全曲、しっかりとコントロールされ、音楽が作り込まれている。

 迫力や勢い一辺倒の演奏に辟易している向きにはオススメ。


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 ▲ E・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団

 1962年録音。CBS盤。

 シベリウスの交響曲の中では、一番オーマンディに合っているように思える曲。

 第1楽章や、第4楽章の第2主題部など、遅めのテンポを取り腰を落ち着けた演奏。イケイケ一方の、浮ついた感じはしない。

 ただ、全体的に穏やかに過ぎるというか、のんびりとした感じに聞こえ、正直、これと言った魅力は少ない。

 細かい部分でスコアには手を加えているけれども、第1楽章でシンバルを追加しているのはいただけない。

 シベリウスはこの楽章に1箇所だけシンバルを入れていて(再現部、第1主題の最後)、それが非常に効果的なのだけれども、他の箇所にも加えることによって、その効果が薄れてしまっている。


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 ▲ O・ヴァンスカ指揮/ラハティ交響楽団

 1996年録音。シベリウス録音で有名になったコンビの録音。

 第1楽章主部は速めのテンポ感が心地よく、曲想のコントラストもあり、とても面白い。熱く語るというよりもドライな、いわば『今風』な感じがする。

 第3楽章も速いテンポで、ティンパニの打ち込みとともに小気味よく音楽が進む。

 フィナーレの主部も快適。第2主題部もスッキリとした味わいでベタな感じがなく、ここは好みの問題か。

 第2楽章の途中、"Meno" と指定された部分で大きくテンポを落とすけれど、ちょっと間延びした感じ。


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 ▲ サラステ指揮/フィンランド放送交響楽団

 1993年、サンクト・ペテルブルグでのライブ録音。

 泥臭さ、汗臭さはない、スマートに、またニュアンスを豊かにまとめられた演奏。その中にライブとしての『熱さ』もある。余計な自己主張もないのでオススメ。

 金管もやみくもに鳴らすということはなく、ティンパニも同様で、決めるところは決めるけれども、第1楽章のエンディングも音量を抑えて低弦の動きをはっきりと聞かせる。第3楽章などはスリリングだ。

 同じコンビによるセッション録音もあり、そちらもいいのだけれども、第4楽章はこちら(ライブ録音)の方がはるかにいい。


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 ▲ C・デイヴィス指揮/ロンドン交響楽団

 1994年録音。

 堂々と恰幅の良い、ある種『貫禄』を感じさせる演奏。

 金管は鳴っているけれども、響きが汚くなったり、荒々しくなったりはしない。

 冒頭のクラリネットの大きな表情とか、第4楽章の途中でいきなりテンポを落としたり、意外に自己主張が強い所もある。

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 そんな感じで結構楽しめるのだけれど、第3楽章のティンパニ(↑)は何だか気が抜けた感じがして物足りない。ここはピシッと決めてほしい。

 他の楽章では相当な存在感を見せている部分もあるので、スコアの指定(「f」「ff」「fff」)を意識して叩き分けさせているんだろうか。


 【映像】

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 ▲ L・バーンスタイン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 1990年のライブ録画。

 メガネ(老眼鏡?)を左手に持ち、それを掛けたり外したりしながらの指揮。

 第1楽章冒頭の長いクラリネットのソロは、シュミードル氏が身を乗り出すように(腰を浮かせて)演奏するが、音楽が高揚し、第1主題が金管楽器で演奏される部分では、観ている(聴いている)こちらも熱くなり、思わず身を乗り出してしまう。

 若書きの荒々しさも感じる、ストレートな音楽。バーンスタインのシベリウスでは、この曲が一番合っているように思う。

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シベリウス 交響曲第7番

CD&DVD

 ■ J・シベリウス作曲/交響曲第7番

 

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 ▲ J・バルビローリ指揮/ハレ管弦楽団

 1966年録音。

 一音一音をかみしめるように、指揮者の想いがぎっしりと詰まった音楽。

 やっぱり自分にとっての『定盤』はこれ。


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 ▲ E・ムラヴィンスキー指揮/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

 1965年のライブ録音。

 冒頭、弦楽器の上向する4分音符からただならぬ気配とエネルギーを感じる。

 ビブラートをかけ、朗々と吹奏するトロンボーンのソロ。ホルンの強奏。斬り込むような鋭いアクセント。うねる弦楽器をバックに聳え立つ金管の強靭なサウンド。

 エンディングの弦楽器(「H→C」のフレーズ)にはホルンが重ねられ、最後の「C」の音を長く引き伸ばして、バッサリと断つ。

 徹頭徹尾ムラヴィンスキー流に解釈され、一分の隙も、曖昧さも無い。確信に満ちた音楽が展開される。

 一般的にオススメするものでは全くないけれど、これを聴いてしまうと、他の演奏がどこか物足りなく感じてしまう弊害があるので要注意。

 古い国内盤。カップリングはブラームス作曲の「交響曲第4番」。


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 ▲ 渡邉暁雄指揮/ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

 1982年1月28日、福岡サンパレスでのライブ録音。 カップリングは「交響曲第4番」。

 シベリウスの交響曲は7曲(「クレルヴォ」を加えると8曲)、それぞれに魅力があるけれども、やっぱり第7番は格別だ。

 そして、この演奏も別格に素晴らしい。まず、最初のトロンボーンの主題が登場するところで泣けてしまう。

 そして、全てが終わった後のコーダの満足感。到達感。充足感。

 名演奏!!

 ちなみに、私がこの曲を最初に聴いた時のライブ録音がCDになっています。

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 ▲ 渡邉暁雄指揮/東京都交響楽団

 1979年3月17日、東京文化会館でのライブ録音。

 こちらは自分の中の『思い出の演奏』。


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 ▲ G・ロジェストヴェンスキー指揮/モスクワ放送交響楽団

 1974年録音。これが意外にいい。

 同じロシア系のオーケストラ、指揮者であってもムラヴィンスキーのような攻撃性はなく、はるかに大らかな雰囲気がある。

 ゆったりとしたテンポは余裕も感じさせる。ただ、金管の鳴りの良さは相変わらずで、トロンボーンも期待通り。

 この指揮者は基本『リズム』。冒頭、4分音符で上向する音型の裏でシンコペーションで(つまり『裏拍』で)進行しているコントラバスをハッキリと聞かせている。

 不明瞭な演奏が多い中、こういう部分を疎かにしない。


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 ▲ O・ヴァンスカ指揮/ラハティ交響楽団

 1997年録音。

 スコアに忠実に、かといって変に誇張したりせずに自然に表現した演奏。

 ヴァンスカのシベリウス、弱音を極端に強調したり、音楽の流れが作為的に感じることもあるのだけれども、ここではそれを感じない。

 とてもいいです。

 カップリングは交響曲第6番と「タピオラ」。


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 ▲ P・ベルグルンド指揮/ヨーロッパ室内管弦楽団

 1995年録音。

 スッキリと透明感のある、瑞々しいサウンドが魅力的な演奏。

 高カロリーの演奏を求めると若干の物足りなさも。

 カップリングは交響曲第5番。こちらもイイです。


 【映像】

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 ▲ L・バーンスタイン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 1988年、ウィーンでのライブ録画。

  トロンボーンのテーマが現れる前の高揚感とか、最後の音を全員でクレッシェンドして長く引き伸ばしたりとか(スコアでは金管はディミヌエンド)、随所にバーンスタインらしい音楽が、指揮者の映像と共に楽しめる。

 ただ曲のせいもあってか、作りがシンプルな第1番や第2番に比べると、自分の感情をストレートにぶつけることができないようなところも感じる。

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シベリウス 交響曲第3番

CD

 ■ J・シベリウス作曲/交響曲第3番

 

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 ▲ C・デイヴィス指揮/ロンドン交響楽団

 1992年録音。

 超人気曲の「第2番」と、大傑作と評判の「第4番」の間に挟まれて、立場が弱いと言うか、影が薄い曲ではあるけれども、金管楽器に聴かれる、それまでの民族的な高揚感と、以後の内面へ向かう音楽が共存していて、私はとても好きな曲。

 このデイヴィス盤は落ち着いたテンポで、丁寧に音楽を表現していて、特に第2楽章の情感、沈んだ表情がいい。


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 ▲ J・バルビローリ指揮/ハレ管弦楽団

 1969年録音。

 バルビローリのシベリウス録音は、私にとって永遠のスタンダード。LPで持っていた、豪華箱入りの「交響曲全集」は宝物でした。

 第1楽章は遅めのテンポで進められるけれども、決して音楽が緩むことは無く、透明感のある、硬質なサウンドも、私の中でのシベリウスのイメージにピッタリ。

 ただし、オケは危なっかしい箇所もあります。


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 ▲ P・ベルグルンド指揮/ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

 1986/7年録音。

 冒頭、低弦によるテーマには細かい表情が付けられていて、フィナーレのテーマも同様なのだけれども、素朴な味わいが削がれてしまっているように感じる。

 以後は柔らかなサウンドがとてもいい。スッキリとした味わいは独特で、第1、2番の延長のような力強さとは方向性が異なる。

 第1楽章のコーダもさり気なく始まり、終結部も(マゼールみたいに)これ見よがしに終わるのではなく、本当にアッサリと、ティンパニも控え目。

 第3楽章のコーダは通常は聴きとりにくい木管のフレーズを前面に出すものの、最後はやっぱりアッサリと終わる。

 この『スッキリ感』に、どこか物足りなさを感じるのも事実。


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 ▲ N・ヤルヴィ指揮/エーテボリ交響楽団

 1984年録音。BISの旧録音盤。

 父ヤルヴィ(ネーメ)の名が世間で認知されたのが、BISへの一連のシベリウス録音ではなかったろうか。

 今では『ヤルヴィ』と言えば、息子のパーヴォかもしれないけれども(ネットの検索結果でも「パーヴォ」→「ネーメ」の順)、芸風、レパートリーもほとんど被っておらず、パーヴォの台頭によって父のポジションが脅かされるものではない(少なくともロシア音楽好きにとっては)。

 このシベリウスも、素朴で暖かみのあるオーケストラのサウンド。奇を衒うことのない自然な音楽作りがとてもいい

 特に第1、2楽章は申し分がなく(第2楽章エンディングの表情は素晴らしい)、第3楽章も終結へ向けて加速し高揚していく様はネーメらしいところだと思う。

 第一にオススメできる名演奏。

 カップリングは「クリスチャン2世」組曲。


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 ▲ G・ロジェストヴェンスキー指揮/モスクワ放送交響楽団

 1973年録音。第1番ほどではないにしろ、この曲の演奏もなかなか面白い。

 第1楽章は金管楽器が前面に出る場面は少ないのだけれども、その数少ないチャンス(?)で十分に自己主張してくれている。

 提示部の第1主題部を締める朗々と歌うホルン、そしてトランペットとトロンボーンの「これでもか!」とばかりのクレッシェンド。再現部でも同様。

 弦楽器は意外に繊細な表情も見せ、この楽章が最高の聴きもの。

 第2楽章は速めのイン・テンポで進み、音楽の密度は濃い。

 第3楽章のコーダでも金管は遠慮なく吹き鳴らすけれども、曲想的にここは持て余し気味の感もある。


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 ▲ O・ヴァンスカ指揮/ラハティ交響楽団

 1997年録音。

 余分な表情が付いていないスッキリとしたシンプルな味わいは、この音楽には合っていると思う。

 冒頭の低弦のテーマは本当に弱音で開始される。どっしりとした力強さを感じさせるカムなどと比べると別物のようだ。

 スコアのダイナミックに忠実に演奏されていて、途中の「ppp」などはほとんど聴こえない。

 第2楽章はゆったりとした感じがする。個人的には好きだけれども、後半になるとだんだんまどろっこしく感じる。

 弦楽器は人数が少ないのか、締めくくりの和音などはもうちょっと何か感じさせるものがあってもいいのではなかろうか。

 カップリングは交響曲第2番。


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 ▲ K・コンドラシン指揮/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

 1977年、モスクワでのライブ録音(拍手付き)。

 サウンドも含めて、かなり独特の味わいを持ったシベリウス。

 第1楽章の出だしは普通だけれども、展開部あたりから、何かに追い立てられるように、前のめりにグイグイ音楽を進めていく。

 さすがに第1楽章のコーダではと思いきや、ここも飛ばして、最後の和音でようやく落ち着いてくれる。

 第2楽章も同じで何だか忙しない。ただ、最後の和音などは、単に譜面通りの音を出している演奏とは違う表情を見せてくれる。

 第3楽章も最後へ向けて、弦楽器の刻みと共にどんどん突き進んでいく。

 コンドラシンのライブ録音としては興味深いけれども、一般的にオススメするものではありません。

 カップリングは交響曲第5番。1973年のライブ録音。

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シベリウス 交響詩「フィンランディア」

CD

 ■ J・シベリウス作曲/交響詩「フィンランディア」

 

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 ▲ J・バルビローリ指揮/ハレ管弦楽団

 1966年録音。バルビローリ&ハレ管による交響曲7曲と管弦楽曲集。必携の1セット。

 私が最初にこの曲を聴いたのがカラヤン&BPO盤(DGの旧盤)。

当時の『17センチLP盤』の片面(裏面は覚えてない)。これはこれで気に入っていて、「カッコイイ!」と何回も繰り返し聴いていた。

 この曲のイメージを変えてくれたのが、もう少し大人になってから聴いた、このバルビローリ盤だった。

 冒頭の金管のコラールは武骨とでも言うか、荒々しく強奏される。

 一つ一つ、すべての音に全身全霊をささげるように、外面的な演出や上手さとは無縁(金管のリズムの入りで乱れたりもする)。

 この曲とがっぷり組み合い、真正面から気持でぶつかっていく。

 決してカッコよくはないし、今となっては時代遅れかもしれないけれど、私はこういう音楽が好きだ。


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 ▲ H・カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 1984年録音。グラモフォンの新録音盤。

 人によって好みは様々だろうけれど、1964年録音盤より断然いいです。

 聴き物はやはり遅めのテンポで進められる前半部分。

 パワーとテクニックだけを聴かせる1964年盤とは違い、より自然な音楽を感じることができる。

 でも、やっぱり上手...冒頭、あれだけ強奏してもハーモニーが崩れないのだから。


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 ▲ P・ベルグルンド指揮/ボーンマス交響楽団

 1972年録音。

 まずは冒頭の柔らかい響きに驚かされる。

 この曲、教科書的に言えば「ロシアの圧政に苦しむフィンランド」「愛国心を持って立ち上がるフィンランド国民」「美しいフィンランドの自然への賛美」等々。

 でも、このベルグルンドの演奏はそういった大上段に構えたものではない、もっと私的な、一人の人間の悲しみ、苦しみや喜び、そういった感情を暖かく表現した音楽に聴こえるのだ。

 後のヘルシンキ・フィルとの録音よりも、音楽の流れがより自然なこちらを取ります。


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 ▲ E・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団

 1968年録音。

 合唱入りの録音もあるようだけれども、これは合唱無し。

 そして、これがとてもいいのだ。

 いわゆる北欧系の演奏とは趣きが異なるけれど、豊かな響きの中に人間的な感情、ドラマを感じる。

 後半の有名な旋律の部分、最後はヴァイオリンが楽譜よりも1オクターブ上げて、朗々と歌い上げるのだ。

 エンディングにはシンバルも加わり、「シベリウスとしては・・・」と言う人もいるかもしれない。

 しかし、この演奏を聴いて、心を動かされずにはいられない。

 「20世紀作品集」の中の1枚...でも、「フィンランディア」って20世紀?


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 ▲ E・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団

 1959年録音。モルモン会堂聖歌隊による合唱付き。

 冒頭、トロンボーンに続くトランペットがストレートな荒々しい音で入ってくるのに驚く。

 ロシアの圧政による苦悩、独立運動に立ち上がる民衆を鼓舞する行進曲、そして祖国を讃える大合唱。

 合唱が入ったことにより、極めて明確にこの音楽のストーリーが浮き上がってくる。

 シベリウスの原曲に拘るならば異質な演奏かもしれないけれども、逆にオーマンディだからこそできた演奏とも言えるのではなかろうか。


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 ▲ V・フェドセーエフ指揮/モスクワ放送交響楽団

 1989年録音。言わば『反ロシア』の曲の、ロシアの指揮者、オケによる録音。

 荒々しい金管楽器による冒頭からの前半部分、金管のリズムも重々しい。

 独特なのは続くアレグロ部分で、ここでもこれまでの重苦しさを引き継いでいて、軽やかさや、行進曲風の躍動感は皆無。レガートで高らかに鳴らすホルン。かなり独特の音楽を創り上げている。

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シベリウス カレリア組曲

CD

 ■ J・シベリウス作曲/カレリア組曲

 劇音楽による3曲から成る組曲。

  1.間奏曲
  2.バラード
  3.行進曲風に

 演奏頻度は少ないけれども、「カレリア」序曲もあります。

 

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 ▲ N・ヤルヴィ指揮/エーテボリ交響楽団

 1983年録音。イチ推し!

 冒頭、弦楽器のざわめき。遠くから聴こえてくるホルン。夜明けの光景のようにも思える。広々とした地平線が見えてくるようだ。

 打楽器が加わって行進曲風の楽想になり、このモチーフをトランペットが引き継ぐけれども、ここでも柔らかな音楽は変わらない。

 続く「バラード」が最高の聴き物。

 情感たっぷりの弦楽器による中間部から、後半のイングリッシュホルン。この楽章で、これ以上の演奏を聴いたことがない。

 終曲の「行進曲風に」も単純に元気のよい行進曲ではなく、軽やかであり、爽やかに流れる。

 親しみやすい音楽は、それなりに人気はあるようだけれども、決して高くは評価されていないようにも思う。

 しかし、この演奏は単に「明るく楽しくて親しみやすい曲」というイメージを変えてくれるものだ。

 DGへ再録音していますが趣が違います。是非こちらの旧録音盤を!


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 ▲ サラステ指揮/フィンランド放送交響楽団

 1987年録音。

 1曲目「間奏曲」の冒頭、スコアに指定された強弱が丁寧に付けられている。テンポを速めてトランペットが入ってくると、軽快で、停滞せずに前へ進む音楽。

 2曲目「バラード」も細やかな表情が付けられ、中間部の弦楽器の豊かな響きもいい。

 強力なインパクトのある演奏ではないけれども、自分の中の「カレリア組曲」のイメージにピッタリの演奏


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 ▲ C・デイヴィス指揮/ロンドン交響楽団

 1998年録音。

 穏やかで、暖かみのある音楽。金管の明るいサウンドなど、3曲目の「行進曲風に」がいい。

 ただ1曲目「間奏曲」は金管楽器がぼやけた感じがして今一つ。2曲目「バラード」ものどかに過ぎる。

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シベリウス レンミンカイネン組曲(4つの伝説曲)

CD

 ■ Jシベリウス作曲/レンミンカイネン組曲(4つの伝説曲)

 フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」に基づいた、4曲から成る連作交響詩。

  1.レンミンカイネンとサーリの乙女たち
  2.トゥオネラの白鳥
  3.トゥオネラのレンミンカイネン
  4.レンミンカイネンの帰郷

 初版では「2」と「3」の曲順が逆。

 「トゥオネラの白鳥」が圧倒的に有名で録音の数も多く、単独で演奏される機会も多いです。しかしながら、他の3曲も非常に魅力的な音楽。

 【全曲版】

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 ▲ ユッカ=ペッカ・サラステ指揮/フィンランド放送交響楽団

 1989年録音。カップリングは交響曲第7番。
 
 サラステは1956年生まれのフィンランドの指揮者。

 シベリウスの交響曲、主要な管弦楽曲を録音しているものの、話題になることは殆どありません。

 でも、いい指揮者だと思うんですけど...この「レンミンカイネン組曲」(旧盤の方)も私の中ではベストです。

 後にトロント響と再録音していますが、この旧録音盤の方が若々しい勢いを感じ、私は好きです。


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 ▲ ユッカ=ペッカ・サラステ指揮/トロント交響楽団

 1998年録音。カップリングは「夜の騎行と日の出」。

 中間2曲の曲順を入れ替えて、「トゥオネラの白鳥」を3曲目に持ってきています。


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 ▲ C・デイヴィス指揮/ロンドン交響楽団

 2000年録音。

 落ち着いたテンポで、丁寧に音楽を作っていて、特に中間2曲、「トゥオネラの白鳥」「トゥオネラのレンミンカイネン」がいい。

 「トゥオネラの白鳥」は、本筋とは違うアプローチかもしれないけれども、人を寄せ付けない佇まいではなく、人間的な情感の感じられる音楽を、共感と緊張感を持って感動的に聴かせてくれる。

 終曲の「レンミンカイネンの帰郷」は勢いに任せることなく、コントロールの効いた演奏で丹念に音楽を描いてゆき、途中のティンパニの効果、テンポを速めたコーダで、この組曲を締めくくる。


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 ▲ E・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団

 1978年録音。

 響きは明るめで、確かに音色感に違和感を感じることもあるけれど、弦楽器を中心とした分厚いサウンド、密度の濃い音楽。

 特に、第1曲目の後半、頂点へ向けての息の長い盛り上がりなどは圧倒される。


 【抜粋版】

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 ▲ J・バルビローリ指揮/ハレ管弦楽団

 1966年録音。「レンミンカイネンの帰郷」と「トゥオネラの白鳥」の2曲のみを収録。

 その昔買った、バルビローリ&ハレ管による「シベリウス作品集」のLP。

 「フィンランディア」や「カレリア組曲」のような有名曲も入っていたけれど、中でも最も強烈な印象を受けたのが、この「レンミンカイネンの帰郷」。

 4曲から成る「レンミンカイネン組曲」の終曲。

 トゥオネラの白鳥を射るためにトゥオネラ川へ向かったものの、殺されてしまったレンミンカイネンは母親によって蘇生し、失意の中、故郷へ帰る。

 演奏時間数分。故郷へ向かって、馬を駆るレンミンカイネン。16分音符による無窮動風の、ひたすら前へ進む音楽、金管楽器の荒々しく、厳しい響き。

 組曲4曲をまとめた録音も多いけれども、この曲に関してだけは、これデフォルト。全てが「斯くあるべし」という演奏。

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シベリウス 組曲「歴史的情景」(ラシライネン)

CD

 ■ J・シベリウス作曲/組曲「歴史的情景」

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 ▲ A・ラシライネン指揮/ノルウェー放送管弦楽団

 2001年録音。

 「第1番(作品25)」と「第2番(作品66)」の2つの組曲があるけれど、内容的に関連性は無く、楽器編成、作風も全く異なる。同時に初演され、スコアの曲順も通し番号になっています。

 【組曲「歴史的情景」第1番】

  組曲「歴史的情景」第1番は、1899年に上演された民族的歴史劇ための音楽から3曲を抜粋・編曲したもので、以下の3楽章から成る。

  1.序曲風に
  2.情景
  3.祝祭

 ちなみに、この劇音楽の終曲は交響詩「フィンランディア」に編曲されました。

 知名度は低いとはいえ、いかにもシベリウス的な魅力的な音楽。交響詩を思わせるような第1楽章、カスタネットも加わったボレロのリズムを持つ第3楽章。

 なにより第2楽章の後半、混沌の中からハ長調の和音が沸きあがり、トランペットを中心とした金管楽器が堂々たる『愛国的』行進曲を奏でる部分は、本当に胸が熱くなる。「フィンランディア」に匹敵する高揚感がある。

 ラシライネンは1959年フィンランド生まれの指揮者。

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 第1曲目冒頭の深い響きから音楽の『ハート』をしかっりと掴んでいる、見事な演奏。

 【組曲「歴史的情景」第2番】

 組曲第1番とは成立の由来が全く違う曲。同時に初演されているけれども、曲の趣きなどは全く異なる。

 楽器編成も第1番に比べると小さく、金管は4本のホルンのみ。でも、このホルンが大活躍します。

 第1曲「狩」。冒頭のホルンの響きからしてシベリウス以外の何物でもない。駆け回るような無窮動風な音楽から、最後は壮大なコラールに。

 第2曲「愛の歌」。ビオラの旋律から始まりハープの響きと共に高揚する、とても美しい音楽。シベリウスと言うと『自然』であったり『民族的』という言葉が思い浮かぶけれども、こういう曲も書いているのだ。

 第3曲「跳ね橋にて」。これはどういう情景だろうか。軽快な舞曲風。3度で重なったフルートのデュエットで始まり、エンディングでもフルートのソロが繰り返される。独特の『世界観』を持った音楽。

 このラシライネン盤は響きも瑞々しく、力強さもある、第1組曲同様、素晴らしい演奏。

 シベリウスは決して「フィンランディア」や「交響曲第2番」だけではない、こういう曲も是非。

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シベリウス 交響曲第7番(渡邉暁雄&ヘルシンキPO)

CD

 ■ J・シベリウス作曲/交響曲第7番

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 ▲ 渡邉暁雄指揮/ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

 1982年1月28日、福岡サンパレスでのライブ録音。 カップリングは「交響曲第4番」。

 シベリウスの交響曲は7曲(「クレルヴォ」を加えると8曲)、それぞれに魅力があるけれども、やっぱり第7番は格別だ。

 そして、この演奏も別格に素晴らしい。まず、最初のトロンボーンの主題が登場するところで泣けてしまう。

 そして、全てが終わった後のコーダの満足感。到達感。充足感。

 名演奏!!

 ちなみに、私がこの曲を最初に聴いた時のライブ録音がCDになっています。

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 ▲ 渡邉暁雄指揮/東京都交響楽団

 1979年3月17日、東京文化会館でのライブ録音。

 こちらは自分の中の『思い出の演奏』。

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