シチェドリン

ビゼー/シチェドリン カルメン組曲

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 ■ R・シチェドリン作曲(ビゼー原曲)/カルメン組曲

 ビゼー作曲のオペラ「カルメン」をベースにしたバレエ音楽。楽器編成は弦楽合奏と打楽器アンサンブル(ティンパニ+奏者4名)。

 バレエの初演は1967年、ボリショイ劇場にて。指揮はロジェストヴェンスキー。

 以下の13のナンバーで構成される(カッコ内ベースとなる曲)。

  1.導入(ハバネラの断片)
  2.ダンス(第4幕への間奏曲)
  3.第1間奏曲
  4.衛兵の交代(第2幕への間奏曲)
  5.カルメンの登場とハバネラ
  6.情景
  7.第2間奏曲(第3幕への間奏曲)
  8.ボレロ(「アルルの女」から「ファランドール」)
  9.闘牛士
  10.闘牛士とカルメン(「美しきパースの娘」から「ジプシーの踊り」)
  11.アダージオ(花の歌)
  12.占い(カルタ占いの場)
  13.フィナーレ(幕切れの音楽、エピローグとして「1」が再現)

 「8」と「10」については、(おそらく)この2曲がオペラ上演の際に「バレエ音楽」として挿入される慣例があったことによるもので、ちなみに私が大昔買ったヴォーカル・スコア(国内版)には、この2曲が入っていました。

 ビゼーの旋律自体は慣れ親しんだものではあるけれども、特に後半「10」以後はスローなナンバーが続き、全体的に重々しく悲劇的な色調が強く、しかし、その分「7」「11」といったナンバーが生きてくる

 「導入」では「ハバネラ」の断片がチャイムで静かに鳴り(全曲に渡りチャイムの効果は大きい)、やがて弦楽器と打楽器のトレモロの大きなクレッシェンドから2曲目のダンス(アラゴネーズ)が華やかに始まる。このオープニングは鮮やかでインパクトは大きい。

 とにかく見事にアレンジされていて、途中で旋律が消える「9」は有名だけれども、「10」でも旋律が途切れ途切れになって、やがて消えていく。

 そういった『凝った』曲がある反面、「11」の「花の歌」などは割とストレートにアレンジされている。

 シチェドリンのスコアには弦楽器に下記の『人数指定』がある。
 
  1st Violin 18
  2nd Violin 16
  Viola 14
  Cello 12
  Double Bass 10

 要は、かなりの大編成を要求していて、少なくともスコアの想定は『室内オケ』ではない。

 

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 ▲ G・ロジェストヴェンスキー指揮/ボリショイ劇場管弦楽団

 1967年録音。初演と同じ年、初演コンビによる、この曲を聴くのに外せない録音。

 シチェドリンの想定通りの大人数の弦楽合奏で演奏されているのもいい。特に「花の歌」などは聴き物。

 バレエ指揮者だけにリズムの素晴らしさ。豊かな歌。オケもボリショイ劇場と言う事で見事な演奏を聞かせてくれる(文化省オケだったらこうはいかなかったか...)。

 この曲を聴くならまずこれ!...と言う演奏。


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 ▲ A・フィードラー指揮/ボストン・ポップス管弦楽団

 1969年録音。フィードラーがこの曲を録音していたとはビックリ。しかも、初演(1967年)の僅か2年後に。

 演奏はとてもいい。理屈抜きに楽しませてくれる。フィードラー侮るなかれ。


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 ▲ M・ザンデルリング指揮/ドイツ弦楽フィルハーモニー

 2007年録音。学生による弦楽オケによる演奏。でも、これがとても面白い。

 再弱音の冒頭に始まり独特の表情、音楽を聴かせ、奏者もそれを楽しんでいるように活き活きと演奏している。


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 ▲ Y・トゥロフスキー指揮/イ・ムジチ・ド・モントリオール

 1993年録音。

 パーカッション・パートを Ensembre Repercussion という4人組グループが担当。ただし、ティンパニはこのグループ以外の奏者が担当しているためか、バランスが弱い。

 おそらく少人数による演奏。響きの厚みが無いので、終曲などは迫力不足に感じるけれども、かなり細かい表情が付けられていて、全体的にはとても面白く聴ける。打楽器も上手。

 カップリングはトゥリーナ作曲の「闘牛士の祈り」と、シチェドリンの珍しい小品が3曲。


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 ▲ M・ラフレフスキー指揮/クレムリン室内管弦楽団

 2001年録音。弦の人数は多くないのだろうけれども、その分、シチェドリンのスコアの仕掛けがハッキリと聞こえてくる。

 ただ、リズムは重く、『バレエ音楽(=踊り)』としてよりも、ドラマチックな要素を前面に出しているように感じ、ロジェストヴェンスキー盤とは、また違ったタイプの演奏として楽しめる。


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 ▲ M・プレトニョフ指揮/ロシア・ナショナル管弦楽団

 1998年録音。リズムの切れもないし、気が抜けた感じで魅力は感じない。カップリングのシチェドリン作品(2曲の管弦楽のためのコンチェルト)がメインか。


 【バレエ版】

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 M・プリセツカヤのカルメン、ロジェストヴェンスキー&ボリショイ劇場管による映像ソフト。舞台のライブではない映画版。

 ボーナスとしてプリセツカヤが踊る「瀕死の白鳥」などが収録されています。

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シチェドリン お茶目なチャストゥーシュカ(コンドラシン)

CD

 ■ R・シチェドリン作曲/お茶目なチャストゥーシュカ(管弦楽のための協奏曲第1番)

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 ▲ K・コンドラシン指揮/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

 1964年録音。

 ベースとパーカッションのリズムに乗って、管楽器が短いフレーズを次から次へと即興的に吹いてゆく。ポップス的なティストがある。

 そうこうするうちに、リズムのパターンが変わりラテン音楽風。トランペットの気ままなメロディがいい感じ。

 大きな流れを作るというより、様々な登場人物が次から次へと登場してくる。

 最初から最後までテンポは一切緩まず、そしてエンディングへ向けてどんどん加速し、ポーズを置いての不協和音で曲を閉じる。

 このコンドラシン盤はハイ・テンション、音楽の勢い。一気呵成に進む。そして最後は全員で全力疾走。足がもつれるながらも、全員でゴールへなだれ込むのだ。

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シチェドリン ロシアの写真集(クレムリン室内管弦楽団)

CD

 ■ R・シチェドリン/ロシアの写真集

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 ▲ M・ラフレフスキー指揮/クレムリン室内管弦楽団

 2001年録音。

 弦楽合奏のための組曲。作曲者によると「ロシアの生活のスナップ・ショット」とのこと。『珍品』ではあります。

  1.アレクシンの古都
  2.モスクワのゴキブリ
  3.スターリン・カクテル
  4.夕べの鐘

 しかし「ゴキブリ」を『描写』した曲なんて他にあるのだろうか。弦楽器の細かい動きは、ワサワサと動き回るゴキブリが目に浮かんできて、気持ちいいものではない。

 その他の3曲はテンポの遅い、『楽しい』と言える雰囲気は全く無く、端的に言えば『暗い』。

 特に「3」は何とも陰鬱で本当に気が滅入ってくる。

 パッサカリアであるけれども、その主題は調子っぱずれで、泥酔した酔っ払いが呂律の回らないくだを巻いているようだ。強烈に酒臭い。

 途中でロシア民謡「黒い瞳」が流れて、最後は『叫び声(?)』で曲を閉じる。

 ゴキブリと酔っ払い...これが「ロシアの生活のスナップ・ショット」というのも、皮肉と言うかシニカルだ。

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シチェドリン 古いロシアのサーカスの音楽(シナイスキー)

CD 

 ■ R・シチェドリン作曲/古いロシアのサーカスの音楽

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 ▲ V・シナイスキー指揮/BBCフィルハーモニー

 1996年録音

 「管弦楽のための協奏曲第3番」。ちなみに、第1番は「お茶目なチャストゥーシュカ」、第2番は「鐘」。

 シカゴ交響楽団の委嘱で作曲され、L・マゼールの指揮で初演。

 全くタイトル通りの曲で、「ペトルーシュカ」の第1、4場、あるいはサティ作曲「パラード」を思わせる雰囲気。

 打楽器や鳥の声など面白い音も聞こえ、最後は遠くへ消えて行った後に、短い結びの音楽で閉じる。

 基本的にサーカスを観ている(外)側からの音楽。フェリーニ監督の映画「道」に付けられたN・ロータの音楽は、反対側からのもの。

 第2番と違って分かり易く、なかなか楽しい曲ではあるものの、演奏時間24分。その割には、今一つ起伏に乏しい感も...。

 カップリングは「交響曲第2番『25の前奏曲』」。演奏時間55分...こちらは、まだ聴いてません

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