展覧会の絵

ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(フェドセーエフ)

CD

 ■ M・ムソルグスキー作曲(ラヴェル編曲)/組曲「展覧会の絵」

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 ▲ V・フェドセーエフ指揮/モスクワ放送交響楽団

 1977年録音。フェドセーエフ最初の「展覧会の絵」の録音。

 最初の「プロムナード」でのトランペットのレガート奏法...これが指揮者フェドセーエフが私の前に登場した瞬間だ。

  当時は全くの無名指揮者だったフェドセーエフ。このCDの解説はLP発売当時(1978年)のものを流用しているけれども、そこには以下のように書かれている。

 「ウラジミール・フェドセーエフといってもピンとこない人が居るかもしれないが、1932年レニングラードで生まれたソビエトの中堅であり、(中略)レコードは今までにショスタコーヴィチの「第五」が一枚出ているだけである」

 フェドセーエフはそれぞれの『絵』を徹頭徹尾、見事に描写している。

 猛烈な勢いで始まる「こびと」の静と動のコントラスト。終始抑制された「古城」。「牛車」は重苦しく悲劇的なものを内側に感じる。

 「2人のユダヤ人」のいかにも卑しいトランペット。「リモージュの市場」の喧騒。「バーバ・ヤガー」中間部へ入る前の思い切ったトランペット。

 3種類あるフェドセーエフの「展覧会の絵」の中でも...というより、私が聴いた「展覧会の絵」の中でも断トツに『面白い』録音。

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ムソルグスキー(ゴルチャコフ編) 組曲「展覧会の絵」(マズアの映像)

DVD

 ■ M・ムソルグスキー作曲(ゴルチャコフ編曲)/組曲「展覧会の絵」

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 ▲ K・マズア指揮/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

 1993年ライブ録音。モスクワ音楽院教授のセルゲイ・ゴンチャロフによる編曲版。

 同じくマズア指揮によるCDも出ているけれども、未知の編曲なので映像の方が断然面白い。

 最初の「プロムナード」はトランペットのユニゾンで演奏されるけれども、以後は弦楽器を中心に演奏されて、ラヴェル版のよう変化は無い。

 解説にあるように「ロシア的な性格を強めている」とも言えるけれども、「古城」のソロがミュートを付けたトランペットだったり、「二人のユダヤ人」のソプラノ・サックスなど、かなりモダンなサウンドになっている。

 強奏で始まり、分厚い弦楽器をバックにホルンがメロディを奏する「牛車」はオリジナルのイメージ通りといえる。

 マズアは1971年にライプチヒで東独初演、1981年に読売日響を振って日本初演している。

 完全にこの曲(編曲)をレパートリーにしているようで、堂に入っている。またオケもそれに応えて見事な演奏を聴かせてくれる。

 好き嫌いは別にしても、ラヴェル版と比べて決して聴き劣りするものではなく、日本のオケでも演奏してほしい。

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 ▲ K・マズア指揮・ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 こちらはCD。1990年録音。


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ムソルグスキー(ストコフスキー編) 組曲「展覧会の絵」(バーメルト)

CD

 ■ M・ムソルグスキー作曲(ストコフスキー編曲)/組曲「展覧会の絵」

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 ▲ M・バーメルト指揮/BBCフィルハーモニック

 1995年録音。ストコフスキーの編曲版による演奏。

 ストコフスキー自身の指揮であると、どうしても演奏(指揮)の方に耳が行ってしまいがちだけれども、アレンジの素晴らしさを堪能できる録音。

 ストコフスキーはムソルグスキーのオリジナルの譜割りなども柔軟に変更し、イマジネーションを大きく広げている。

 「キエフの大門」の冒頭などはラヴェルと比べてもはるかに凝った、変化に富んだオーケストレーションがされている。途中の『聖歌』の部分もヴィオラやチェロによって表情豊かに演奏され、原曲には無い「フェルマータ」も付けられて、はっきりと「コラール」として扱っている。木管で淡々と演奏されるラヴェル版よりもはるかに素晴らしいと思う。

 しかしながら、いくら自在であっても、決してムソルグスキーの音楽を踏み外すことがないのは、この音楽への思い入れ(愛情)だろうか。

 「展覧会の絵」の編曲は吹奏楽版も含めて多々あるけれども、やはり「役者が違う」といったところ。

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ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(サラステ)

CD

 ■ M・ムソルグスキー作曲/組曲「展覧会の絵」

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 ▲ ユッカ=ペッカ・サラステ指揮/トロント交響楽団

 1996年録音。

 曲によってフンテク編曲版とゴルチャコフ編曲版を使い分けた『折衷版』。要は2つの編曲版の「いいところ取り」。

 サラステによればラベル版よりもよりスラブ的な、また作曲者のスタイルに近い編曲を使いたいということで、このような形になっているとのこと。

 強奏で始まる「牛車」(ゴルチャコフ版)は、ラヴェル版よりも明らかにムソルグスキーのオリジナルのイメージに近い。

 「キエフの大門」の2回目のコラール(オリジナルでは「ff」)は金管楽器で朗々と歌われる。ラヴェル版では「p」。

 最初の「プロムナード」は出だしこそトランペットだけれども、終始弦楽器を中心に進められ、金管、弦、木管を使い分けたラヴェルに比べれば地味。「古城」のメロディはイングリッシュホルン。

 同一作曲家の編曲作品としては一貫性に欠けているかもしれないけれども、先入観なしに聴いてみれば違和感はないし、よりロシア的な非ラヴェル版の編曲として楽しめる。

 ただ、このサラステの演奏はロシア的な土臭さはなくて、むしろモダンな印象があるのは面白い。

 カップリングは「はげ山の一夜」(コルサコフ版)、「ホヴァンシチナ」前奏曲、「カルスの奪回(荘厳な行進曲)」「スケルツォ 変ロ長調」

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ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(PJBE)

CD

 ■ M・ムソルグスキー作曲(E・ハワース編曲)/組曲「展覧会の絵」

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 ▲ E・ハワース指揮/フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル

 指揮のE・ハワースの編曲による金管アンサンブル版。1977年録音。

 最初にLPで発売されたとき、「金管だけで『展覧会の絵』の全曲を!?」と関係者間で話題になった録音。

 金管楽器と打楽器だけによる演奏だけれど、「チュイルリー」「リモージュの市場」「殻を付けた雛の踊り」などの『難曲』も見事に吹きこなしている。

 オリジナルのピアノ版をベースにしていて、「牛車」もラヴェル版と違って強奏で開始される。

 冒頭の「プロムナード」からソフトで品の良いサウンド。「キエフの大門」「カタコンブ」などはお手の物。「チュイルリー」「リモージュの市場」「殻を付けた雛の踊り」などの『難曲』も見事に吹きこなしている。

 ムソルグスキーの土臭さは無いにしても(これはラヴェル版も同じか)、見事なアンサンブルと音楽で、単なる『企画モノ』「金管で演奏しました」という以上の聴き応えのある演奏。

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ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(ゲルギエフ&キーロフ劇場管のライブ録音)

CD

 ■ ムソルグスキー作曲(ラヴェル編)/組曲「展覧会の絵」

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 ▲ V・ゲルギエフ指揮/キーロフ劇場管弦楽団

 1989年ライブ録音。

 一般的に知られているウィーン・フィル盤や同年のLPO盤とは違う、キーロフ劇場の芸術監督就任後、間もないライブ録音。

 冒頭「プロムナード」のトランペットのレガート奏法は期待を持たせてくれる。

 「小人」は打楽器のバランスが弱いので物足りない。「古城」はかなりテンポを揺らすけれども、むしろ不安定さを感じさせてしまう。「2人のユダヤ人」は棒が分かりにくいのか、弦楽器ユニゾンのアンサンブルが乱れる。

 「キエフの大門」の大太鼓は、後の演奏と同様『ずらして』演奏させているけれども、テンポが速いのであまり明確でない。

 独特の雰囲気はあるものの、まだ発展途上。未完の大器、といった感じ。

 一般向けとは言えないにしても、ライブ故にゲルギエフのファンには興味深い録音だと思う。

 カップリングはシメノフ指揮のレニングラード・フィルによる「はげ山の一夜」。

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 ▲ V・ゲルギエフ指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 キーロフ盤と同じ1989年の録音。

 セッション録音なのでよくまとまっている分、色々な意味での『面白味』には欠ける。

 写真は録音当時のものだと思うけれども、(ヘア・スタイルもさることながら)当時はこんなに長い指揮棒を使ってたんですね。

 「キエフの大門」の大太鼓はハッキリとずらしています。

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ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(弦楽合奏版)

CD

 ■ M・ムソルグスキー作曲/組曲「展覧会の絵」(弦楽合奏版)

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 ▲ J・コーエン指揮/アイシス・アンサンブル

 2014年録音。指揮のコーエンによる編曲。オリジナルのピアノ曲をベースにしていて、ラヴェルがカットした「プロムナード」も入っています。

 ソロとトゥッティなどで変化で変化を付けたり、様々な奏法を使っているものの、基本的にオリジナルを変にいじっていないので、音楽そのものを楽しむことができる。

 最初の「プロムナード」は弦楽合奏だけで何の違和感もなく聴くことができるし、「小人」に続く「プロムナード」、「古城」も弦だけの方が素朴で鄙びた雰囲気がある。「キエフの大門」も意外に聴かせてくれる。

 カラフルなオケ版とは違った味わいのある演奏。

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ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(高橋徹編曲の吹奏楽版)

CD

 ■ M・ムソルグスキー作曲(高橋徹編曲)/組曲「展覧会の絵」

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 ▲ ヤン・ヴァンデルロースト指揮/レメンス音楽院シンフォニック・バンド

 ラヴェルによるオーケストラ版をベースにしたものではなく、高橋徹がムソルグスキーのオリジナル(ピアノ版)から新たにオーケストレーションしたもの。(従って、ラヴェルが割愛した「リモージュ」の前の、最後の「プロムナード」も含みます)

 「展覧会の絵」を新たに編曲し発表するということは、相当にやりづらい事であると思われる。

 その理由としては、現在では完全にオーケストラのレパートリーとして定着してしまっているラヴェル版が余りにも知られ過ぎていること、そして、そのラヴェル版は「この曲は、こう編曲するしかない!」という部分をしっかり押さえてしまっていること、さらにより自由にイマジネーションを膨らませたストコフスキー版なども最近録音されたりコンサートで取り上げられたりしていること等々。

 そして、当然それらの編曲と『比較』されることになるのが目に見えている。

 そういう状況の中で、この高橋版は十分にオリジナリティを発揮しているし、「展覧会の絵」コレクターであれば、その中に加える価値は十分にある録音であると思います。(ちなみに、カップリングの「禿山の一夜」は、通常演奏されるリムスキー=コルサコフ版に基づく編曲)

 この高橋版、「ラヴェル版にはよらない」と謳っているものの、どうしても似てしまう部分、あるいは明らかにラヴェル版を(意識的に?)取り入れている部分(最後の「プロムナード」など)もある。

 詳細をここで書いてしまうと、これから聴く人の楽しみが半減すると思うので割愛するけれど、一つだけ挙げさせてもらうと「キエフの大門」の終結部、主題が最後に再現する部分。

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 ここは原曲(ピアノ版)では一つ一つの音にフェルマータが付けられた伸ばしの音になっているのだけれど、

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 ラヴェルはフェルマータを取り去り通常の音の長さに書き換え、さらに裏拍に鐘などの打楽器を加えている。

 この「裏拍に原曲に書かれていない(打楽器の)アクセントを加える」というやり方はこの高橋版も、さらにストコフスキー版でも踏襲されており、この部分ではラヴェルに屈服せざるを得なかったのだろうか。

 さて、この高橋版「展覧会の絵」、好き嫌いは別にして、ただ一つだけ納得のいかない(?)部分があります。それは「ビドロ(牛車)」。

 ピアニストのアシュケナージはオリジナル(ピアノ)版についてこう書いている。

 「ラヴェルの総譜における完全に不適切な解釈(pp とチューバのソロ)とは対照的な、フォルティッシモの開始に注目して欲しい」

 譜面を見ると明らかなように、ムソルグスキーはこの曲をいきなり最強奏から開始するように書いているのだ。

 高橋版は何故、ここでラヴェル版を踏襲して弱奏で始めたのか?

 確かに「遠くから近付いてきて、また遠くへ去っていく」というアイデアもありかもしれない。しかし、ムソルグスキーのイメージと異なることは明らか。

 また、ラヴェルがこのような書き方をしたのは、彼が編曲の際に使用した楽譜がリムスキー=コルサコフによって校訂されたもので、その校訂版ではオリジナル版に手が加えられていた(それ以外の何ヶ所かの音の違いも含めて)、つまり、ラヴェルは『譜面通り』に編曲していたのだ。

 実は、ストコフスキーもこの部分はオリジナルとラヴェル版を足して2で割ったような中途半端なスコアを書いていて、ここでもラヴェルの『呪縛』から抜け出せなかったのか...!?

色々と勝手なことを書いていますが、編曲者自身がこの編曲について述べていますので、そちらもご覧ください。

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ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(音楽三昧)

 CD

 ■ M・ムソルグスキー作曲/組曲「展覧会の絵」

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 ▲ 音楽三昧

 1989年録音。

 「展覧会の絵」を、たったの4人で演奏。弦楽器3人とフルート/リコーダー。ピアノなどの鍵盤楽器は入りません。

 当然のことながらラヴェル版とは全く無関係で、ムソルグスキーのオリジナル(ピアノ版)をベースにした編曲。ただし、ラヴェルと同様に「リモージュ」の前の「プロムナード」はカット。

 受けを狙ったり、奇を衒うようなことはせず、音符を忠実に4人で受け持って演奏。

 むしろ地味な印象もあるけれども、フルート(リコーダー)の音が上手くアクセントになっている。

 「キエフの大門」に壮麗さや迫力などは望めないけれども、「カタコンブ」などでは奏法の工夫によって、とても斬新な(現代音楽のような)響きがする。

 「なぜに(無謀にも)『展覧会の絵』を4人の奏者で」ということについて、「それはひとえに、あの曲がやりたい、この曲もやりたいというメンバー独り独りのわがまま極まりない意見が嵩じただけのことなのです」とCDの解説に書いているように、率直に「この曲を演奏したい」という想いをベースに感じさせてくれる演奏。

 管弦楽や吹奏楽への編曲とは別次元のものとして楽しめます。是非。

 カップリングはチャイコフスキー作曲「眠りの森の美女」から。

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ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(クリュイタンスの映像)

DVD

 ■ M・ムソルグスキー作曲(ラヴェル編曲)/組曲「展覧会の絵」

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 ▲ A・クリュイタンス指揮/フランス国立放送管弦楽団

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 1960年録画。

 クリュイタンスといえば、何と言ってもパリ音楽院管弦楽団を指揮したラヴェル作品の録音で、未だにこれをベストとする人も多いと思う。

 そのクリュイタンスのエレガントで品のある(決して『おとなしい』ということではない)、素晴らしい指揮姿を観ることが出来る、本当に嬉しくも貴重な映像ソフト。

 あくまで『ラヴェル作品』としての「展覧会の絵」。

 また、目いっぱいビブラートをかけたトランペット(冒頭の「プロムナード」から痺れる)、「牛車」でのチューバ(ユーフォニウム?)の素晴らしい『音』を聴くことができる。

 フランス音楽ファン必見。

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