イギリスの作曲家

エルガー コケイン序曲(オーマンディ)

CD

 ■ E・エルガー作曲/コケイン序曲(首都ロンドンにて)

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 ▲ E・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団

 1963年録音。

 冒頭は何の導入も無く、街の賑わいを表わす軽快な第1主題でさりげなく始まる。

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 やがて現れる、"Nobilmente." と指定された「ロンドン市民(citizen)」のテーマ。

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 公園を散歩する恋人同士。

 軍楽隊の行進のクライマックスでは、トロンボーンとコルネットのユニゾンに、タンバリンや鈴の華やかなトリルが加わる。

 教会の場面をはさんで、最後は市民のテーマがオルガン(オプション→オーマンディ盤ではカット)を伴って堂々と演奏される。

 エルガーらしい音楽がいっぱいに詰まり、長過ぎず、短過ぎない名曲。

 イギリスの指揮者による録音、ボールト、バルビローリ、あるいは、マッケラスあたりが定番だろうか。

 そんな中で、このオーマンディ盤。

 オーマンディのイギリス音楽というのも珍しいけれども、決して急がない落ち着いた音楽運び、そして暖かく豊かなサウンド。

 この手の音楽を演奏して、オーマンディ&フィラデルフィア管のコンビが面白くないはずがない。

 期待以上の素晴らしい演奏。

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エルガー エニグマ変奏曲(デュトワ)

CD

 ■ E・エルガー作曲/エニグマ(謎)変奏曲

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 ▲ C・デュトワ指揮/モントリオール交響楽団

 エルガー作品の中で、「威風堂々」を除けば一番演奏機会が多い曲。主題と14の変奏から成り、各変奏はエルガー関係者を表現している。

 第1変奏はエルガーの奥さん(キャロライン・アリス・エルガー/C・A・E)、そしてフィナーレはエルガー自身(E・D・U=奥さんがエルガーを呼ぶときの愛称)で、その途中に第1変奏(つまり奥さんの)のテーマが回想されるところは、さすが愛妻家!

 第9変奏「ニムロッド」は単独で演奏されることもあり、A・リード編曲の吹奏楽版もある。この譜面を見たことはないけれども、某楽団の演奏会でこれを聴いたとき、クライマックスでシンバルが「ジャーン!」と鳴ってたまげた。

 第13変奏の途中、ティンパニを小太鼓(side drum)のスティックで叩くように指定されている部分があり、最初に聴いたとき「何の音だ?」と思った。

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 この変奏ではメンデルスゾーン作曲の「静かな海と楽しい航海」が引用されていて、このティンパニは「船のエンジンの音」という『説』もあるらしいけれど、「なるほど」と思わないでもない。

 ちなみに、これがエルガーの引用部分。

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 こちらはメンデルスゾーンの原曲(チェロ)。

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 デュトワのイギリス物は珍しいけれども、いつもながらの上品でソフトなサウンド、流れるような演奏。オケもよく鳴っているし、テンポの速い変奏の推進力もいい。

 「第7変奏」のティンパニは鮮やかでお見事。こういうところを『雰囲気』で流してしまわず、キッチリ合わせるところがさすが。

 カップリングは「ファルスタッフ」。

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エルガー 交響曲第1番

CD

 ■ E・エルガー作曲/交響曲第1番

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 ▲ B・ハイティンク指揮/フィルハーモニア管弦楽団

 1983年録音。

 ハイティンクにしてみれば、いわゆる『お国物』ではなく、その分過剰な思い入れは除き、スコアを丁寧に音楽にしていて、そこがこの演奏のいいところだと思う。

 第1楽章の序奏、この交響曲のメイン・テーマが低音のリズムの上に奏される。どこまで続くか分からないような、ゆったりしたテンポとリズム。ここで完全に別の世界へ連れて行かれてしまう。

 メイン・テーマ。変イ長調であるけれども、最初の3つの音が「C-B♭-A♭(ミレド)」と下降するので、寂しげな雰囲気を漂わせる。

 このテーマは第1楽章の最後にも現れるけれども、ここでエルガーは弦楽器の「一番後ろのプルトだけで(Last desk only)」演奏するように指定していて、要は前面に出ることなく、遠くの方から聞こえてくるイメージだろう。

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 第1楽章は20分以上かかるけれども、ずーっと同じ風景を観ているような感じがする。第3楽章も同じで、終始内向きな音楽が延々と続く。ブルックナーのように途中で盛り上がることもない

 第2楽章は行進曲風スケルツォ。第3楽章の静かな内向的な音楽も美しい。

 そしてフィナーレ、最後に冒頭のテーマが最初は彼方から、やがて高らかに回帰して、ようやく行き先を見つけたように大団円へと向かってゆく。

 演奏時間は50分ちょっと。時間の浪費か、資源(五線紙・インク)の無駄遣いか...『効率第一』とはかけ離れた世界なのだ。


 イギリス人指揮による定盤としては...

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 ▲ J・バルビローリ指揮/フィルハーモニア管弦楽団

 1962年録音。


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 ▲ A・ボールト指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 1976年録音。

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エルガー 行進曲「威風堂々」

CD

 ■ E・エルガー作曲/行進曲「威風堂々」(全5曲)

 初演年は以下の通り。

  第1番 1901年
  第2番 1901年
  第3番 1904年
  第4番 1907年
  第5番 1930年

 5曲の中では第1番が飛びぬけて有名で、何度となく聴き、(吹奏楽で)演奏してきたので、名曲にしてもやや食傷気味ではある。

 第2番は第1番と同時に初演された曲。知名度はきわめて低いものの、シンプルではあるけれども、落ち着いた風格を感じる名曲。

 なお、この曲はD.C.して全体を繰り返すように指示があるけれど、その繰り返しをカットしている録音もあって(プレヴィン盤とかボールト盤など)、演奏時間が3分程度のものはカットしているとみていい(個人的にはリピートしてほしい)。

 第3番は堂々とした曲ではあるけれど、ちょっと凝り過ぎのようにも感じる。

 第4番はトリオが類似していることもあってか、第1番に次いで有名な曲。主部は軍隊風な勇ましさよりも、優雅さ・品のよさを感じ、こちらの方が好きな人も結構いるのではなかろうか。

 最後の第5番は晩年の曲で、主部は5曲中唯一の8分の6拍子。何と言っても、どことなく哀愁を感じさせるトリオが素晴らしく魅力的な名曲。

 

 【全曲】

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 ▲ A・プレヴィン指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

 1985年録音。

 プレヴィンは割とアッサリとまとめていて、思い入れや、スケール感のある演奏を期待する人には、ちょっと物足りないかもしれない。でも、しつこくないので、私は好きだ。

 カップリングは「エニグマ変奏曲」。


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 ▲ J・ジャッド指揮/ニュージーランド交響楽団

 2003年録音。「エルガー/行進曲集」というアルバムに収録されている。

 弦楽器は対抗配置。重苦しさの無い、爽やかで軽快な演奏。有名な第1番、第4番のトリオも優雅。

 中でも、速目のテンポで進められる第1番、第2番、第4番がいい。ただ、金管楽器が今ひとつ大人しく、第3番、第5番などはもっと力強さがほしい。

 「威風堂々」だけに限れば、「わざわざこの録音を...」とは思うけれども、このアルバムの売りは「威風堂々」以外の珍しいエルガー作品。

 収録曲は以下の通り(画像クリックで拡大します)。

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 あまり知られていないエルガー作品をいろいろ聴いてみたい方は是非。


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 ▲ J・バルビローリ指揮/フィルハーモニア管弦楽団、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

 第1番、第4番はフィルハーモニア管(1962年録音)、その他の3曲はニュー・フィルハーモニア管(1966年録音)。

 有名な2曲をまず録音、時間をおいて他の3曲が録音されて『全曲盤』になったもの。

 何はともあれ、『定盤その1』。
 

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 ▲ A・ボールト指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 1976年録音。バルビローリ盤と共に『定盤その2』。

 普段から演奏してる曲をそのまま演奏しているような、いい意味で力が抜けたリラックスした雰囲気がある。


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 ▲ V・アシュケナージ指揮/シドニー交響楽団

 2008年録音。

 第1~5番だけではなく、作曲者のスケッチからA・ペインが補筆した「第6番」も収録されている。

 で、やっぱり、この第6番が注目だけれども、演奏時間は8分弱と結構長い。

 ト短調。出だしは同じ短調の第3番に似ていて、曲調(テンポ)が頻繁に変わるので『行進曲』と言うより劇音楽のような感じがする。

 他の5曲については、変な演出を加えていないのでそれなりに楽しめるけれど(中ではリピートも楽譜通り行なった第2番がいい)、逆に特別な魅力があるかと言うと、そうでもない。

 国内盤で3,000円と値段も高く、カップリングが「弦楽セレナーデ」のみで収録時間50分弱。

 アシュケナージのファン、あるいは、第6番を聴いてみたい人、「威風堂々」蒐集家向け。


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 ▲ G・ショルティ指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 1977年録音。

 第1番、第2番がいい。思いっ切り力が入ったダイナミックな演奏で、スケールも大きく、「行進曲(Military march)」という域を完全に超えている。テンポを大きく落とした第1番のトリオ(1回目)も素晴らしい。

 問題なのは第3番以後の3曲。

 どういうわけかティンパニが入っていない(第5番のエンディングなど、完全にソロになる部分を除いて)。

 例えば、第4番の冒頭のティンパニ、エルガーは "with the stick" とわざわざ指定しているくらいで、これをカットしてしまうのは致命的だし、他の曲でも本来入るべき音が聞こえてこないのは違和感が大きい。

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 これがショルティの意図的な『解釈』とは到底思えないので、何らかの理由でティンパニ奏者が手配できなかった、というくらいしか理由は思いつかない。

 人出の足りないアマチュア楽団ならともかく、ショルティ&ロンドン・フィルという『銘柄』の録音(商品)としては「?」が付くし、ショルティもよくOKを出した(妥協した?)ものだと思う。

 カップリングは「コケイン序曲」と「エニグマ変奏曲」(この曲だけシカゴ響)。


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 ▲ A・デイヴィス指揮/BBCフィルハーモニック

 2011年録音。いかにも品の良い、明るく軽快な音楽。

 第1番や第4番も決して大袈裟にならない節度があるし、まとまりにくい第3番も快調。

 第2番はスコア通りにリピート、第1番ではオルガンが加わる。

 指揮者の個性で聴かせる演奏ではないけれども、『音楽』を楽しむには、まず第一にオススメできる。

 カップリングは「チェロ協奏曲」「序奏とアレグロ」「エレジー」というエルガー名曲集


 【抜粋盤】

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 ▲ D・ジンマン指揮/ボルティモア交響楽団

 1991年録音。第1番と第2番。

 第2番は有名な第1番と一緒に初演されたいわば『兄弟作』(作品番号も同じ)。しかし、曲想は全く違い、よりシンプルで、より『行進曲』らしい。

 録音はイギリスのオケによるものが多いけれども、これは珍しくアメリカのオケによる録音。

 第1番も収録されているけれど、第2番はキビキビとしてアッサリとした演奏がこの曲に合っていて、サウンドもバランスよくキッチリまとめられている。

 曲名から来る先入観念を無くして1曲のコンサート・マーチとして聴けば素直に良い曲だし、地味ではあるけれど吹奏楽などでももっと取り上げて欲しい曲。

 カップリングは「交響曲第1番」。


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 ▲ B・ハイティンク指揮/フィルハーモニア管弦楽団

 第5番のみ1曲の録音だけれども、堂々としたシンフォニックな演奏。

 5曲中唯一の8分の6拍子(トリオは4分の2)。主部はハ長調、1回目のトリオは変イ長調。この部分は第1交響曲のメイン・テーマと雰囲気がよく似ている(調性も同じ)。

 作曲年代を見ると、他の4曲とは1曲だけ(20年以上)離れていて、最愛の奥様が1920年に亡くなり、自身も70歳を過ぎてからの音楽。それを思うと、トリオのどこか寂しげな佇まいも分かるような気がする。

 第1、4番に食傷気味の人は是非。


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 ▲ H・ケーゲル指揮/ドレスデン・フィルハーモニー

 有名な第1番のみ。しかしながら、数多いこの曲の録音の中でも、『怪演』というか『奇演』というような類の演奏。上級者向け。

 猛烈な勢いの導入からアラルガンドしての主部は、スコアに無いティンパニの8分音符を追加、そのリズムを強調した、重々しくも勇ましい第1主題の縦割りのリズムはドイツ・マーチ。

 金管楽器のファンファーレ音形で大きくリタルダンドして、再び猛スピードの導入部の再現へ。

 ただ、このテンポの変化は一般的にはここまで極端には行わないけれども、スコアに指示されていることでもある(導入部再現の前を除いて)。

 トリオのトゥッティ部分では、トランペットの強奏によるガッシリした分厚い響き。ここでもスネア・ドラムのリズムを強調、おまけにヴァイオリンによるメロディを1オクターブ上げて演奏させている。

 私たちの様なアマチュアが演奏するときは、「イギリス音楽かくあるべし・・・」のようなところ(ウンチク)から入ったりするけれども、そんなの一切お構いなしに、自分たちの側(スタイル)に音楽を引きずり込む。

 様々な演奏家による「クラシック・マーチ集」に収録。有名曲もあるけれども、選曲は相当にシブい。ちなみに、ケーゲルはこの1曲だけ。


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 ▲ G・シノーポリ指揮/フィルハーモニア管弦楽団

 1990年録音。「交響曲第1番」のカップリングで、第1番、第4番の2曲のみの収録。

 第1番がとてもイイ。ティンパニの打ち込みなど、メリハリの利いた主部から、大きくテンポを落とした有名なトリオ。ここで音楽の様相が一変するコントラスト。後半部のトリオの再現ではスコア通りにオルガンが加わる。

 第4番も同様のアプローチであるけれど(トリオでテンポを落とす)、元々の曲想によるのか、ちょっと大げさな感じがする。

 そもそも、第4番のトリオには「L'istesso tempo(同じテンポで)」の指定があり、ここは、テンポを大きく変えない方が自然だ。


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 ▲ S・ラトル指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 第4番のみ。2002年録音。

 ベルリン・フィルの歴代音楽監督の録音を集めたボックス・セットに付いていた、小品を録音した「特典盤」。それにケチ付けるのも反則かもしれないけれど...。

 オケはパワフルに鳴っているし、強弱や音符のニュアンスの指定などは見事に再現され、「楽譜を演奏する」という点では申し分ない。

 しかし「それだけ」では、音楽は何と詰まらないことか...ということを知ることができる録音(ラトルは嫌いな指揮者ではないけれども)。

 オケがバーミンガム市響(ラトルの指揮でエルガー作品を録音している)であれば、また違った演奏になったのかもしれない。

 【収録曲】
  「キャンディード」序曲(バーンスタイン)
  スラヴ舞曲第1番、第3番(ドヴォルザーク)
  ハンガリー舞曲第3番(ブラームス)
  キエフの大門(ムソルグスキー/ラヴェル)
  ジムノペディ第3番(サティ/ドビュッシー)
  妖精の国(ラヴェル)
  威風堂々第4番(エルガー)

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ケテルビー作品集(ペルシャの市場にて)

CD

 ケテルビーの作品を集めたCD。子供のころ聴いたイメージから、「ケテルビーなんて...」と思っている人は是非。

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 ▲ A・グッドウィン指揮/パルム・コート劇場管弦楽団

 1996年録音。小編成による演奏で、ケテルビーの書いたスコアのイメージに近いのがこの演奏ではなかろうか。

 いかにも『サロン音楽』風な雰囲気が楽しい。団員が歌う物乞いのコーラスも、調子外れだけれども、何とも言えない味がある。

 ちなみにコーラスについては "Gentlemen of Orchestra" のクレジットがあります。


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 ▲ J・ランチベリー指揮/フィルハーモニア管弦楽団

 1977年録音。フル・オーケストラ版による演奏。

 ランチベリー(2003年没)はバレエ指揮者として活躍された方で、これは自身による編曲か、オーケストラ作品として見事に生まれ変わっていて、曲の素晴らしさを再認識させられる。

 LP時代に発売されたアルバムだけれども、この録音がある限り、私の中でランチベリーとケテルビーの名前は不滅だ。

 コーラスはアンブロジアン合唱団。「物乞いの合唱」にしては立派すぎるような...。


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 ▲ A・フィードラー指揮/ボストン・ポップス管弦楽団

 1958年録音。「ペルシャの市場にて」のみを収録。

 フル・オーケストラに編曲してゴージャスに聴かせるランチベリー盤。少人数でサロン・オーケストラの雰囲気を楽しめるグッドウィン盤。

 いずれも両サイドの演奏だけれども、ストライク・ゾーンど真ん中がこのフィードラー盤。

 いかにもそれっぽい(非音楽的な?)「物乞いの歌」が聞こえる街のざわめき、ルバートが美しい王女のテーマ、等々、各場面を見事に描き分けて聴かせてくれる。

 ちなみに、このCD、最近は誰も録音しないような懐かしの名曲が並ぶ。

 「ホフマンの舟歌」「ドナウ川のさざなみ」「スケーターズ・ワルツ」「金と銀」「メリー・ウィドウのワルツ」「愛の夢」...そして締めは、コンチネンタル・タンゴの名曲「ジェラシー」。

 「愛の夢」はハーバート編曲版(オーマンディと同じ)。

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アーノルド イギリス舞曲集(トムソン)

CD

 ■ M・アーノルド作曲/イギリス舞曲集

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 ▲ B・トムソン指揮/フィルハーモニア管弦楽団

 いくつかあるアーノルドの「舞曲集」の中で最初に書かれた曲。2つの『セット』があって(作品27と33)、いずれも4楽章形式。

 「ドヴォルザークの『スラヴ舞曲』のような曲を」という依頼で書かれた曲で、実存する民謡に基づくものではないそうです。

肩の凝らない、いわゆる『ライト・ミュージック』。親しみやすいメロディ、単純ではあるけれども、巧みな構成とオーケストレーション。華やかで元気のよい曲から、シットリと聴かせる曲まで、変化に富んだ、また工夫を凝らした音楽は聴いていて飽きることが無い。

 吹奏楽曲かと思われるくらいに管打楽器(特に金管)が活躍し、特に「第2集」で豪快かつ開放的に鳴る金管は聴いていて気持ちいい(ストレス発散系)。アーノルド自身が、元はトランペット奏者(@ロンドン・フィル首席)だったということもあるのか。

 金管は本当によく鳴っていて、演奏している方も気持ちイイのではなかろうか。こういうのを聴くと「金管、吹きたい!」と思ってしまう。

 ひたすら、ゴージャスなオーケストラ・サウンドを楽しむにはうってつけの曲。 

 トムソン盤には下記の5つの「舞曲集」が収録されている。

  1.イギリス舞曲集(第1集)作品27
  2.イギリス舞曲集(第2集)作品53
  3.4つのスコットランド舞曲 作品59
  4.4つのコーンウォル舞曲 作品91
  5.4つのアイルランド舞曲 作品126

 上記以外に「4つのウェールズ舞曲(作品138)」があるけれども、それは収録されていない。

 「3」は吹奏楽版でも有名。「4」「5」は『舞曲(=踊りの音楽)』というイメージからは外れてきていて、かなりシンフォニックな趣きがある。

 その他の録音。

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 ▲ A・ボールト指揮/ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団

 1954年録音。モノラルながらも活き活きとした素晴らしい演奏。


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 ▲ C・グローヴズ指揮/ボーンマス交響楽団

 1976年録音。

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ダニー・ボーイ 100%

 CD

 ■ ダニー・ボーイ 100%

 アイルランド民謡「ロンドンデリーの歌(ダニー・ボーイ)」の様々な演奏家による録音を集めたCD。

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 収録内容は下記の通り。

  1.マリオ・ランツァ(歌)
  2.ゴールウェイ(フルート)
  3.ストルツマン(クラリネット)
  4.フィードラー&ボストン・ポップス(弦楽合奏)
  5.ストコフスキー&交響楽団(グレインジャー編曲版)
  6.ロバート・ホワイト(歌)
  7.オーラ・ハーノイ(チェロ)
  8.ピーター・ネロ(ピアノ)
  9.アル・ハート(トランペット)
  10.ザ・チーフタンズ(?)
  11.ロジャー・ウィテカー(ギターと歌)
  12.ケイト・スミス(歌)

 まず、最初の「1」がとてもいいのだ。モノラル録音。いかにも『古き佳きアメリカ』といった趣の情感がある歌声。

 「2」はゴールウェイの十八番。

 「3」は無伴奏。しみじみと、ジャズ的なフィーリングも。

 「4」はライブ録音。客席はずいぶんとざわつき、どうも食事をしながら聴いているようだ。でも、演奏はとてもいい。フィードラー、侮るなかれ。

 「5」はグレインジャーによる編曲。いわゆる「ストコフスキー・バージョン」で、なかなか面白い。前半部でメロディを吹いているのはユーフォニウムだろうか?

 「8」「9」「11」はリラックスした雰囲気。

 「10」はなぜか「2」と同じ演奏。両方のメンツを立てた??

 メロディがシンプルなだけに、それをどのように扱うかというところが面白く、変化に富んでいるので、続けて聴いても結構楽しめる。前に書いたように重複している演奏があるのは解せないけれど...。

 個人的には特に前半(特に「5」まで)が気に入ってます。

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バッハ(エルガー編曲) 幻想曲とフーガ ハ短調

CD

 ■ J・S・バッハ作曲(エルガー編曲)/幻想曲とフーガハ短調

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 ▲ G・シュワルツ指揮/シアトル交響楽団

 1990年録音。オルガン曲(BWV537)の管弦楽編曲。

 前半の「幻想曲」もエルガーらしいオーケストレーションで、味付けにハープが使われる(ストコフスキーみたい)。ちなみに原曲の4分の6拍子をエルガーは4分の3拍子に変更。

 ただ、ここまでは『想定内』。

 後半のフーガも最初は真っ当に進行するけれども、途中から装飾が加わり、打楽器(小太鼓、大太鼓、シンバルにタンバリンまで)も入りエルガー色が強くなり、エンディングは完全にエルガー作品としてデフォルメされる。

 バッハの譜面を『そのまま』オーケストレーションするなら、誰でもできる。ここまでやってこそ、エルガーが編曲した価値があるというものだ。

 原曲のオルガン曲の冒頭(4分の6拍子)。

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 メロディはオーボエとクラリネットが担当(4分の3拍子)。

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 バックではティンパニと大太鼓がリズムを刻む。

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 フーガの途中ではトランペットがこんな難しいパッセージを。

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 もちろん原曲(↓)にはありません。

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