ハチャトゥリアン

ハチャトゥリアン コンチェルト・ラプソディ(ロストロポーヴィチの映像)

 DVD

 ■ A・ハチャトゥリアン作曲/チェロとオーケストラのための「コンチェルト・ラプソディ

 Khacha

 ▲ M・ロストロポーヴィチ(チェロ)/A・ハチャトゥリアン指揮/ソビエト国立交響楽団

 「ハチャトゥリアン/生涯と演奏」というDVDに収録されている映像。1963年収録。画像は白黒。

 コンサートではなくて、スタジオ(?)での収録。無造作にセッティングされていて、予算が少ない吹奏楽部が使っているような金属製(シルバー)の譜面台を立てての演奏。

 冒頭のホルンからして威勢がよく、トランペットも往年のロシアン・サウンド。ハチャトゥリアンは勲章をいっぱい着けて指揮をしている。

 ロストロ氏は結構冷静に弾いていて、ライブで見せるような没入、燃焼度は少ない。

 曲そのものとしては、ハチャトゥリアンの音楽であるのは確かにしても、やや不完全燃焼気味。でも、映像として貴重なのは間違いない。

 メーキングによると、これはロストロポーヴィチが国外追放になったときに破棄を命ぜられたフィルムが、こっそり保管されていたという貴重品らしい。

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ハチャトゥリアン バレエ「スパルタクス」(ボリショイ劇場の映像)

DVD

 ■ A・ハチャトゥリアン作曲/バレエ「スパルタクス」

 Spartacus

 1984年、ボリショイ劇場でのライブ録画。

 指揮はソビエト時代のバレエ指揮者として知られる、A・ジュライチス。

 Zhyuraitis

 登場するや客席に挨拶することもなく、いきなり棒を振り出すが、独特の雰囲気を持っている。

 「ガイーヌ」導入を思わせるような勇ましいファンファーレから始まり、やがてトランペットの吹奏によるローマ軍の凱旋行進曲。

 奴隷の登場で音楽は哀愁を帯び『泣き』が入る。再びトランペットの音楽が戻ってきて、ひとしきり凱旋の音楽が続く。

 ここまでで相当に頭がクラクラしてくるのだけれども、その後、スパルタクスのモノローグから、敵役クラッスス邸でのどんちゃん騒ぎ。最後は冒頭の音楽が戻ってきて、反乱軍の決起の場面で第1幕が終わる。...以下同文。

 スパルタクスはローマ軍の反撃により殺されてしまい、その鎮魂の音楽(合唱も加わる)と共に幕切れになる。

 まさに『力』を誇示するかのようなステージ。打楽器アンサンブルだけの群舞有、ラテン音楽風のリズム有。ナマのステージで観たら、どれだけ迫力があることだろうか。

 「アダージオ」のクライマックスでのトランペットの吹奏は期待(予想)通り。気持ちよさそうに朗々と、主旋律は誰も聴いていない?もちろん、「そこ、楽譜の指定はメゾ・フォルテなんですけれど...」などと野暮なことは言わない。

 トランペットは只でさえハードな譜面を、踊り優先の(奏者にとっては)無茶苦茶なテンポ設定に必死に食らい付く。第2幕「スパルタクスの勝利」の最後の方の16分音符などは涙が出てくる(そこまで頑張らなくても...)。クラリネットは一体どんな楽器(リード)使っているのだ、というようなへろへろな音。

 スゴイです!!

 ところで、ジュライチスさん、今どうされているんでしょうか。

  【追記】

 ジュライチスは1998年に亡くなられているそうです。情報ありがとうございました。

 ちなみに、「スパルタクス」全曲盤CD(国内盤)の解説によると1928年リトアニア生まれ。1960年にロジェストヴェンスキーの後任としてボリショイ劇場のバレエ指揮者に就任とのことです。

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ハチャトゥリアン 組曲「仮面舞踏会」

CD

 ■ A・ハチャトゥリアン作曲/組曲「仮面舞踏会」

 劇付随音楽による組曲。

  1.ワルツ
  2.ノクターン
  3.マズルカ
  4.ロマンス
  5.ギャロップ

 浅田真央のフィギュアスケートでも使われた1曲目のワルツが圧倒的に有名。

 

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 ▲ V・フェドセーエフ指揮/モスクワ放送交響楽団

 1989年、日本のスタッフがモスクワで録音したもの。「マズルカ」「ギャロップ」に一部カット有。

 この曲については、このフェドセーエフ盤が最高。

 指揮者もオケも荒々しさが残っていた時代。特にどっしりと重量感のある「ワルツ」(浅田真央のフィギュアで有名になった曲)は、これぞ「ロシアン・ワルツ」。打楽器セクションのプレイも素晴らしい。

 終曲「ギャロップ」は彼がアンコールとしてもよく取り上げる曲で、一気呵成に爆走、途中の妙な変拍子をカットしているのも流れを止めないためだろう。スローなナンバーは彼らしく丁寧に演奏されているし、「マズルカ」の中間部のテンポの落とし方も洒落ている。

 ちなみに、カップリングのバレエ音楽「スパルタクス」からの「アダージオ」のクライマックスでは、バランスなど全く考えずに、ひたすら自分のパートをデカイ音で演奏する()という、今は懐かしい阿鼻叫喚を聴くことができる。


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 ▲ A・ハチャトゥリアン指揮/モスクワ放送交響楽団

 1969年録音。

 演奏はフェドセーエフ以上にロシア的な雰囲気の濃いサウンドで、ビブラートを掛けた「ロマンス」のトランペット・ソロもいい。もちろんカットも無し。素晴らしい演奏。

 また、これが作曲者自身の指揮と考えると色々と面白く、例えば「ワルツ」の途中にある「poco rit.(ちょっとrit.)」も、かなり大きく掛けていて、私の感覚だと「molto rit.(沢山rit.)」に近い。

 さらに、楽譜には指示が無い微妙な間(ま)や、テンポの変化などもあって、他の人の指揮ならば、「スコアの指定と違うじゃないか!」と問い詰めることもできるけれど、やっているのが本人なのでそれはできない。


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 ▲ K・コンドラシン指揮/RCAビクター交響楽団

 1958年録音。オーケストラは録音のための臨時編成オケだろうか。であっても、全く不満はなく、コンドラシンの棒に応えて素晴らしい演奏を聴かせてくれている。

 コンドラシンらしい表情も見せるけれども、決して浮ついたところが無い堂々と落ち着いた音楽。古い録音ではあるけれども、一般的には一番にオススメできる演奏。


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 ▲ N・ヤルヴィ指揮/スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

 1987年録音。豊かに、豪快にオケを鳴らしつつ、前へ前へと進む前進力と流れの良い演奏。さすが、こういう曲は面白く聴かせてくれる。


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 ▲ S・ブラック指揮/ロンドン交響楽団

 1977年録音。映画音楽などの録音で知られるスタンリー・ブラックだけれども、なかなか堂に入った演奏。特にテンポの速い曲がいい。明るく楽しく。


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 ▲ L・チェクナヴォリアン指揮/アルメニア・フィルハーモニー管弦楽団

 1991年録音。一時期、ハチャトゥリアン作品を続けて録音していたコンビ。

 意外に土臭さはない。悪くはないけれども、作曲者自身や大御所の演奏に比べると小粒感は免れない。


 【抜粋盤】

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 ▲ H・ケーゲル指揮/ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団

 「ワルツ」と「ギャロップ」(つまり、最初と最後)の2曲を収録。

 しかし、この「ワルツ」がとんでもないことになっている。

 ロシアン・ワルツの情緒、哀愁などは微塵も無い。

 ガチガチのサウンド。冒頭から速いテンポを緩めることなく、むしろ加速するくらいの勢い。打ち鳴らされるシンバルと共に、目を血走らせ、えらい形相でこちらへ迫ってくるのだ。

 「名曲アルバムII」というアルバムに収録。

 様々な指揮者による『名曲』が収録されていて、ケーゲル指揮のものは、上記の他に「精霊たちの踊り」(グルック作曲)、「歌の翼に」(メンデルスゾーン作曲)、「アヴェ・ヴェルム・コルプス」(モーツァルト作曲)。


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 ▲ Y・シモノフ指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

 1994年録音。「ロマンス」「夜曲」「ワルツ」の3曲。

 「ワルツ」が最高に素晴らしい。グイグイ前へ進む速めのテンポに、ブリブリと吹く低音、爆発する打楽器。


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 ▲ P・ヤルヴィ指揮/フランス放送フィルハーモニー管弦楽団

 2002、2003年録音。「ワルツ」のみ。息子ヤルヴィによる演奏。

 丁寧にまとめられているけれども、この手の曲については、やっぱり父(ネーメ)の方がいい。

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ハチャトゥリアン~生涯と演奏(DVD)

DVD

 ■ ハチャトゥリアン~生涯と演奏

 Khacha

 ピーター・ローゼン監督による、ハチャトゥリアンの生涯を描いたドキュメンタリー映画。

 個人的な見所としては...

 インタビューに、『悪名高い』フレンニコフが登場。

 「あの時は仕方が無かった...」というようなことを喋り、この言葉に対して色々言うこともできるだろうけれど、私たちは所詮は部外者だ。

 ほんのわずかではあるけれど、「トランペット協奏曲」で有名なアルチュニアンがインタビューで登場。

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 また「ガイーヌ」、「スパルタクス」の舞台が映されるが(曲数も結構多い)、「ガイーヌ」のバレエ舞台は初めて観ました。

 特典として作曲者(勲章をいっぱい着けている)の指揮によるソビエト国立響とロストロポーヴィチが共演した「コンチェルト・ラプソディ」の映像が収録されていて(白黒)、パワー全開の(当時の)ロシアン・サウンドが聴ける。

 ホールではなくスタジオでの録画のよう。メーキングによると、これはロストロポーヴィチが国外追放になったときに破棄を命ぜられたフィルムらしいが、こっそり保管されていたという貴重品らしい。

 その他、ショスタコーヴィチなども登場。ソビエト時代の音楽に興味のある人は是非。 

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ハチャトゥリアン バレエ音楽「ガイーヌ」から

CD

 ■ A・ハチャトゥリアン作曲/バレエ音楽「ガイーヌ」より

 作曲者以外の指揮による「ガイーヌ」の録音。

 原典版による3つの組曲があるけれども、人気曲・有名曲が分散しているので、指揮者が独自に選曲している録音がほとんど。

 ただし、アニハーノフ盤は記載が紛らわしいので要注意。

 

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 ▲ Y・シモノフ指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

 1994年録音。収録曲は下記の6曲。

  1.剣の舞
  2.バラの少女たちの踊り
  3.子守唄
  4.レズギンカ
  5.アイシェの踊り
  6.ゴパーク

 本屋さんや駅の構内で激安(500円とか)で売られているCD。でも、演奏は充実。単なる爆演で終わっていないところがさすが。

 「剣の舞」の中間部、メロディは3拍子で伴奏は4拍子という対比の面白さを強調。「子守唄」はこの曲が「バレエ(=踊りの)音楽」であることを感じさせてくれる。

 「レズギンカ」のドラムは普通の小太鼓で演奏しているけれども、決して出しゃばらず、ひたすらリズムキープに徹する。ホルンとトランペットのオブリガートをレガートで朗々と歌わせる。

 ただ、改訂版を使っているので、これだと「アイシェの踊り」は今ひとつ物足りない。

 カップリングの「仮面舞踏会」は「ロマンス」「夜曲」「ワルツ」の3曲だけ。とは言うものの、この「ワルツ」も速めのテンポで、打楽器を強打しつつグイグイ前へ進む素晴らしい演奏。

 有名なナンバーが聞ければOKという向きには、圧倒的にコスト・パフォーマンスがいい一枚。


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 ▲ G・ロジェストヴェンスキー指揮/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

 1961年(?)録音。

  1.剣の舞
  2.子守歌
  3.ヌーネの踊り
  4.山岳人の踊り
  5.ガイーヌのアダージオ
  6.若いクルド人の踊り
  7.若い娘たちの踊り
  8.レズギンカ

 ひょっとすると、ムラヴィンスキーのグラモフォン録音(チャイコフスキー)と同時期に行なわれたものかもしれない。そうだとすると、モスクワ放送響の指揮者になる直前の録音。

 若かりし日のロジェヴェン氏とムラヴィンスキー時代のレニングラード・フィルのコンビ。もっと注目されても良いと思うけれども、寄せ集めの廉価盤CDの片隅にヒッソリと入っている。

 オケによるのか、アクの強さは意外に無く、ある意味真っ当な演奏。「ガイーヌ」の抜粋盤をどれか一つとなると、選曲も含めてこれが一番かもしれない。

 ここに含まれていないものとしては「アイシェの目覚め踊り」だけども、これは作曲者自身が指揮したVPO盤があればOK。

 「レズギンカ」のドラムはリム・ショットなどを入れて、中高生の吹奏楽部員がこの曲を演奏するとき、一番参考になる(真似しやすい)のではなかろうか。

 ちなみに、映画「2001年宇宙の旅」の中で使用されていた「ガイーヌのアダージオ」はこの録音です。


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 ▲ K・カラビッツ指揮/ボーンマス交響楽団

 2010年録音。カラビッツはウクライナの若手指揮者。

  1.友人たちの踊り
  2.じゅうたん刺繍
  3.レズギンカ
  4.ウズンダアラ
  5.娘たちの踊り
  6.情景と踊り
  7.アイシャとガイーヌ(子守唄)
  8.アイシャのモノローグ
  9.山岳人の踊り
  10.剣の舞
  11.ゴパーク

 明るく華やかな雰囲気。強烈なキャラや泥臭さはないけれども、手堅くまとまっている感じで、有名曲はほぼ入っているし(ただし「ガイーヌのアダージオ」は無し)、選曲もバラエティに富んでいるので中々楽しめる。中でも「山岳人の踊り」はこれが一番かも(鐘の音も効果的)。

 ただし改訂版による演奏なので、「アイシャとガイーヌ(子守唄)」最初のフルートのソロが無かったり、「アイシェの踊り」の対旋律がアルト・サックスではなくフルートだったりと、これは物足りない(演奏の問題ではないけれども)。

 「レズギンカ」のリズムは響き線を付けた小太鼓で演奏。所々アクセントを付けてはいるけれども、ちょっと中途半端な感じ。


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 ▲ E・スヴェトラーノフ指揮/ボリショイ劇場管弦楽団

 2000年録音。

  1.バラの娘たちの踊り
  2.アイシェの踊り
  3.山岳民族の踊り
  4.子守歌
  5.ヌーネの踊り
  6.アルメンのヴァリエーション
  7.ガイーヌのアダージオ
  8.レズギンカ
  9.タンバリンを持った踊り
  10.剣の舞

 原典版から10曲の抜粋で、選曲的には申し分ない。曲としては9曲目の「タンバリンを持った踊り」が珍しい。

 遅いテンポ、垢ぬけしない重いリズム、ドカドカと打ち込まれる打楽器など、この指揮者ならではと思うけれども、全体的にユルく、隙間風が吹いているような感じがする。オケにももっとパワーがほしい(特に弦楽器)。

 しかし「山岳人の踊り」(3曲目)の途中に現れる「8分の7拍子」にはタマげた。

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 8分音符で「♪2+2+3」のリズムの、最後の「3」を3連音符として演奏しているのだ(文章では説明し難いけど...結果4分の3拍子になっている)。

 指揮者の勘違いとしか思えないけれども、オケもこの『解釈』に戸惑っているのか、アンサンブルがぐちゃぐちゃに乱れて、さすがにこれはいただけない。

 20年前にソビエト国立響と録音してくれれば...そう思ってしまう。


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 ▲ H・シェルヘン指揮/ウィーン国立歌劇場管弦楽団

 1957年録音。ちなみに、この曲が初演されたのが1942年なので、その15年後の録音ということになる。

 収録曲は下記の様に記載されているけれども、最後の2曲の曲順が逆になっている(実際は「レズギンカ」が最後)。

  1.剣の舞
  2.子守唄
  3.バラの少女たちの踊り
  4.若いクルド人の踊り
  5.レズギンカ
  6.クルド人の踊り

 少なくとも「剣の舞」と「レズギンカ」については、一般人が想像(期待)する演奏とは全く方向性が違っている。

 まず「剣の舞」。いわゆる「民族性」とは無縁。冒頭のリズムはコミカルであり、金管の合いの手も調子っぱずれ。スヴェトラーノフと比べると、同じ譜面を演奏しているとは到底思えない。

 そして中間部。タンバリンの後打ちが止まりそうに...実際に何度も止まってしまう。さらにはティンパニも1小節抜け落ちてしまう。そんな...

 「レズギンカ」のスネア・ドラムも相当に危なっかしい。さすがに止まりはしないけれども、何だかよろよろとしている。こういったメカニカルな曲が苦手なのだろうか。

 「今度、自分達で演奏することになったので、そのお手本に...」という用途には全く向かないことは保証します。

 ただ、「子守唄」「バラの少女たちの踊り」などはローカルな雰囲気が出ているし、何の予備知識無しにスコアを音にすればこんな感じになるのかとも思ったりする。


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 ▲ V・フェドセーエフ指揮/モスクワ放送交響楽団

 1993年録音のMUSICA盤。

  1.レズギンカ
  2.若い娘たちの踊り
  3.ガイーヌのアダージオ
  4.長老の踊り
  5.剣の舞

 ちなみに、冊子表紙の楽譜は、バレエ音楽「スパルタクス」のオープニングのピアノ・スコア。

 フェドセーエフということで、どうしてもハードルを上げてしまうのだけれど、標準的なレベルで聴けば、とてもいい。

 金管も打楽器もかなり鳴らしていて、重量感はあるけれども、特定の楽器を突出せずに、あくまで全体でサウンドを作っている。土臭さはあまり感じない。

 「レズギンカ」のドラムはカッコイイし、民族打楽器(?)を加えた「長老の踊り」も独特の雰囲気がある。残念なのは曲数が少ないところ。

 2003年のライブ録音盤(VISTA VERA)も存在するけれども、私はこのMUSICA盤の方が好きだ。


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 ▲ A・アニハーノフ指揮/サンクト・ペテルブルグ国立交響楽団

 1993年録音。原典版ではなくて改訂版(ボリショイ版)によるハイライト。

 第1から第3までの「組曲」という体裁になっているけれども、全音からスコアが出版されている原典版による組曲とは全く別物なので要注意。

 こういう形で出版されているのか(誰が編んだのか)は不明。

 17曲収録されているものの、耳馴染みのナンバーとしては「剣の舞」「子守唄」「ガイーヌのアダージオ」くらいで、「レズギンカ」も含まれていません。

 ただし曲そのものは、ハチャトゥリアン作品として十分に魅力的。

 演奏もロシア的な泥臭さは無いけれど、まとまりもよく、なかなか楽しめる。

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 収録曲はこちら(↑画像クリックで拡大します)。


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 ▲ A・フィストラーリ指揮/ロンドン交響楽団

 1960年(?)録音。有名曲、11曲の抜粋。

  1.剣の舞
  2.抒情的なデュエット
  3.バラの娘たちの踊り
  4.ゴパーク
  5.子守歌
  6.レズギンカ
  7.ロシアの踊り
  8.ガイーヌのアダージオ
  9.若いクルド人の踊り
  10.長老の踊り
  11.火焔

 民族色は薄いけれども、西欧的なセンス、色彩感のある演奏。選曲もまず申し分ない。

 ただ、本場物を聴いてしまうと、「レズギンカ」「剣の舞」などはちょっと大人しく感じる(特に打楽器)。


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 ▲ A・ラザレフ指揮/ボリショイ交響楽団

 1993年録音。収録曲は少ないです。

  1.剣の舞
  2.バラの乙女の踊り
  3.アイシェの目覚めと踊り
  4.レズギンカ

 カップリングの「スパルタクス」が今一つだったので、あまり期待せずに聴いたら、これが意外に良かった。

 まずは打楽器。「剣の舞」「レズギンカ」は決め所をピシッと決め、中々聴かせてくれる。

 金管は相変わらず元気。弦楽器も厚みや強靭さはないけれども、これらの曲であればOK。テンポを遅めに取った中間2曲もいい雰囲気が出ている。

 問題なのは木管で、「バラの少女」にしても「レズギンカ」にしても、間延びした、ぼやけた音がしている。有名な「子守唄」を入れずに「アイシェ…」を入れたのも、それ故だろうか。

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ハチャトゥリアン バレエ音楽「スパルタクス」

CD

 ■ ハチャトゥリアン作曲/バレエ音楽「スパルタクス」

 【全曲版】

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 ▲ A・ジュライチス指揮/ボリショイ劇場管弦楽団

 1972年録音。原典版(4幕9場)。

 抜粋版などとケチなことを言わずに、この全曲盤(CD3枚)を聴いて満腹になるべし!...と言いたいところだけれども、今では入手は難しそうです。

 弦の響きが若干薄く感じられるけれども、ここで聴くことができる『音』は、今となっては得がたい雰囲気、空気感がある。

 このバレエの幕切れ、レクイエムからの終曲は鐘の音も加えて壮大に盛り上がり、意外にアッサリと終ってしまう改訂版よりもはるかに聴き応えがある。

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 ジュライチスは1928年、リトアニア生まれの指揮者。ボリショイ劇場のバレエ指揮者として活躍された方です。上の写真はバレエDVDから。


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 ▲ M・ユロフスキ指揮/ベルリンドイツ交響楽団

 1996年、1997年録音。1968年のボリショイ劇場改訂版(3幕)による録音。

 この改訂版は、「ガイーヌ」の場合と同様に、「舞曲」としての面よりもドラマ的要素が多くなっているように感じられ、また随所にコーラスが入る。

 なにはともあれ、キチンとした手堅い演奏で全曲版の録音が聴けるのは嬉しい。貴重な録音。


 原典版をベースに3つの組曲が編まれていますが、独自に選曲されている録音も多いです。

 【組曲版】

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 ▲ N・ヤルヴィ指揮/スコットランド・ナショナル管弦楽団

 1990年録音。作曲者による3つの組曲をそのまま収録。

 サウンドもいいし、豪快にオケを鳴らした演奏で、これ一枚あればとりあえずはOK。また、ド派手なオーケストラ曲(ストレス解消系)を楽しみたい向きには超オススメ盤。

 組曲版は、それぞれが単独で演奏されることを想定していると思われ(プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」のように)、結果、一番盛り上がる「スパルタクスの勝利」が第1組曲の終曲になっていて、3つの組曲を通して聴くとやや尻つぼみ。

 正直、通しで聴くのは体力的にもちょっとツライけれど、CDなら曲順を自由にプログラムできるので、好きな組曲版を作って聴くのが吉。


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 ▲ A・アニハーノフ指揮/サンクト・ペテルブルグ国立交響楽団

 1994年録音。指揮者名は「アンドリュー・アニチャノフ」と記載されていますが、「アンドレイ・アニハーノフ」として知られている方です。

 第1~3までの3つの組曲を収録。ただし、第3組曲の終曲を第1幕の凱旋行進曲に差し替え(CDの記載は「野外競技場にて)。

 元の曲が今一つ盛り上がらないため、この差し替えは効果的でありがたい。

 演奏はやや大雑把だけれども、鳴らすところは十分に鳴らして聴き応えがある。また、いにしえのソビエト時代のオケのサウンドの臭いがする独特の雰囲気を持っている。


 【抜粋版】

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 ▲ A・ハチャトゥリアン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 1962年録音。有名な自作自演盤。

 収録曲は以下の4曲。

  1.スパルタクスとフリージアのアダージオ
  2.エギナのヴァリエーションとバッカナール
  3.情景とクロタルを持った踊り
  4.ガディスの娘の踊りとスパルタクスの勝利

 昔から聴いていた馴染みの録音だけれども、冷静に考えてみると、当時のソビエト(東側)を代表する作曲家が、西側を代表するオーケストラを相手に自作を指揮するという、まさに歴史的な遭遇なのだ。

 さらには、この曲の初演が1956年なので、そのたった6年後の録音。

 まさに『新作』であって、VPOもこの曲を演奏する機会が果たしてあったかどうか。それどころか、事前に曲を聴いたことすらなかったかもしれない(時代が時代だけに)。

 その演奏は素晴らしく、よくぞここまで異質な音楽を弾き切ったと思うし、ハチャトゥリアンも下手すると全く相手にされないような類の音楽を、よくぞここまで持ってきたと思う。

 「アダージオ」最初のオーボエのソロはウィーンの音だし、また、弦楽器にはロシア(ソビエト)のオケでは聴くことができない艶やかさ、陰影がある。

 本当に『歴史的録音』。


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 ▲ A・ハチャトゥリアン指揮/ロンドン交響楽団

 1977年録音。

  1.エギナのヴァリエーション
  2.スパルタクスとフリーギアのアダージオ
  3.ハルモディウスの入場とエギナとハルモディウスのアダージオ
  4.カディスの娘の踊りと反乱軍の接近

 曲名は異なっているけれども、ウィーン・フィル盤に「3」が追加された選曲。

 悪くはないけれども、今一つノリの悪いオケを力づくで振り回している感もある。ただ、リズムやテンポなど、作曲者自身による『お手本』としては貴重な録音。


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 ▲ V・フェドセーエフ指揮/モスクワ放送交響楽団

 1993年録音のMUSICA盤。オープニングのファンファーレのコンデンス・スコアが表紙。

  1.クラッススとエギナの場面
  2.海賊の踊り
  3.スパルタクスとフリーギアのアダージオ
  4.エギナのヴァリエーションとバッカナール

 「1」は組曲には入っていない第1幕からの音楽。

 独特の選曲...と言うか、中途半端な選曲。あくまでフェドセーエフを聴くCDと割り切るにしても、演奏そのものにも大きな魅力は感じない。

 この内容であれば1989年にビクターに録音した「3」があれば十分。


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 ▲ A・ラザレフ指揮/ボリショイ交響楽団

 1993年録音。

 組曲版から7曲の抜粋。録音が少ない第3組曲から2曲が含まれているのが嬉しい。

  1.スパルタクスとフリーギアのアダージョ
  2.ギリシャ奴隷の踊り
  3.エジプトの乙女の踊り
  4.序奏、エギナとガルモシーのアダージョ
  5.エギナのヴァリエーションとバッカス祭
  6.情景とクロタルを持った踊り
  7.ガディスの娘の踊りとスパルタクスの勝利

 何と言っても素晴らしいのはトランペットで、「1」のクライマックスでのソロは当然のことながら、「7」でのファンファーレも実にカッコイイし上手く、奏者の名前がクレジット(ボリス・シュレパコフ)されているだけのことはある。

 ただ、それ以外は今ひとつ。

 サウンドに色彩感が欲しいし、曲作りが一本調子なところがあり、スケールの大きさもあまり感じられない。特に弦楽器は非力な感じがする。

 「ボリショイ」という名前で勝手にハードルを上げてしまっているのかもしれないけれど...。

 ただ、「7」のエンディングは打楽器の頑張り(ちょっと騒々しいけど)もあってなかなかの迫力。

 カップリングは「ガイーヌ」(4曲)と「仮面舞踏会」(2曲)。完全に「スパルタクス」がメインのCDです。


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 ▲ Y・シモノフ指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

 1994年録音。

 収録曲は下記の4曲。

  1.スパルタクスとフリージアのアダージオ
  2.娘たちの踊りとスパルタクスの勝利
  3.情景とクロタルを持った踊り
  4.エギナのヴァリエーションとバッカナール

 選曲は作曲者指揮のVPO盤と同じだけれども曲順は異なる。

 前半の2曲がとてもいい。

 ますは「アダージオ」が素晴らしい。遅いテンポ、旋律を息長く、念入りに歌わせ、オーボエのソロが弦楽器に引き継がれたところで、すでに相当にテンションが上がる。クライマックスでのトランペットも朗々と。

 「スパルタクスの勝利」では、3拍子のコーダで突然テンポを落とすという荒業。

 後半2曲は、メロディ・ラインや雰囲気によってリズムが揺らぐことがない、『バレエ音楽』。これは、劇場指揮者としてのキャリアが長いシモノフならではだろうか。

 ただ、オケの響きが薄っぺらいのは致し方ないか...。


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 ▲ K・カラビッツ指揮/ボーンマス交響楽団

 2010年の録音。

 第1組曲の5曲に、「スパルタクスとフリーギアのアダージョ」を加えた6曲を収録。この選曲は妥当。

 とても丁寧にまとめられた演奏で、迫力はあっても羽目を外すことはない。「…アダージョ」のトランペットは控え目だし(これが譜面通りなのだけど)、「ニンフの踊り」のトランペットも品良く大人しい。

 正直、もう少し羽目を外してほしいと思うのが人情というもので、豪快に鳴らしたヤルヴィ(父)や、旧ソビエト系の演奏が懐かしい。

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ハチャトゥリアン バレエ音楽「ガイーヌ」から(自作自演盤)

CD

 ■ A・ハチャトゥリアン作曲/バレエ音楽「ガイーヌ」から

 作曲者自身の指揮による録音。

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 ▲ A・ハチャトゥリアン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 1962年録音。まずはこれ。

 LP時代から有名な録音で以下の5曲。

  1.剣の舞
  2.アイシェの目覚めと踊り
  3.レズギンカ
  4.ガイーヌのアダージオ
  5.ゴパーク

 「レズギンカ」のドラムは『遊び』は入れていないけれども、十分迫力がある。「レズギンカ」はもちろん、これほどホルンが目立つ「剣の舞」は他には聴いたことがない。

 「アダージオ」の弦楽器のローカルな雰囲気もいい。

 そして、曲も演奏も最高なのは「アイシェ…」。

 序奏(目覚め)は神秘的なピッコロのソロ。後ろではバス・クラリネットの低音が蠢く。

 ワルツのリズムに導かれる「踊り」。微妙にポルタメントがかけられた、このメロディの素晴らしいこと。

 繰り返されるときにはアルト・サックスのオブリガートが重なるけれど、これがまたいい。オーケストラ作品の中で使われるこの楽器のソロの中でも出色のものだと思う。

 低音から高音へと駆け上がる木管楽器。短い合図と共にフル・オーケストラで、妖しく艶めかしいワルツが鳴り響く。

 ハープのグリッサンドとタンバリンのリズムに乗って演奏されるホルン。

 曲は次第に静まり、シロフォンとヴィブラフォンの余韻。最後はトゥッティのリズムできっぱりと曲を締める。

 数分の中に、ハチャトゥリアンの音楽の魅力がギッシリと詰まっている。演奏もこれ以上のものを聴いたことはない。

 カップリングは「スパルタクス」から4曲と、アンセルメ&スイス・ロマンド管による、グラズノフ作曲のバレエ音楽「四季」。


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 ▲ A・ハチャトゥリアン指揮/ロンドン交響楽団

 1977年録音。

  1.レズギンカ
  2.子守歌
  3.嵐
  4.剣の舞
  5.山岳民族の踊り
  6.インヴェンション(ガイーヌのアダージオ)

 「嵐」は組曲では「火焔(Fire)」というタイトル。最後の「インヴェンション」は「ガイーヌのアダージオ」。

 ウィーン・フィル盤ほどの魅力は無いけれども、選曲もいいし、オケに安定感があるので安心して聴くことができる。


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 ▲ A・ハチャトゥリアン指揮/ソビエト国立交響楽団

 1977年のライブ録音。Russian Disc 盤。イラストは、一人戦車に立ち向かう戦士の図?

 改訂版(ボリショイ版)から5曲の抜粋。記載されている曲名は別にして、「原典版」での曲名は以下の通り。

  1.ガイーヌのアダージオ
  2.??
  3.火焔
  4.山岳民族の踊り
  5.レズギンカ

 ウィーン・フィルやロンドン交響楽団を振った録音と比べると、別人のような暴れっぷり。

 弦楽器による1曲目から濃厚な音楽が展開され、2曲目もハチャトゥリアン節全開。トランペットを筆頭とする金管楽器の音は、「やはり、こうあるべし!」と思わせる。

 「レズギンカ」はティンパニを加えたドラムのリズムから始まり、その後の木管楽器は異様なテンションで吹きまくる。ドラムのアクセントが決まり、朗々たるホルンと、ほとんどヤケクソのトランペット(でも上手い!)。最後はもはや笑うしかない。

 カップリングは「交響曲第2番」。


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 ▲ A・ハチャトゥリアン指揮/ソビエト国立交響楽団

 1975年のライブ録音。

  1.アイシェの目覚めと踊り
  2.ロシアの踊り
  3.クルド人の踊り(山岳民族の踊り)
  4.レズギンカ
  5.剣の舞

 何と言ってもパワフルなオケのサウンドは魅力的。ただ、意外に粗さは感じない。

 「1」は妖艶なウィーン・フィル盤とはまた違った濃厚な雰囲気を楽しめる。「レズギンカ」の木管は完全に指がもつれているような...。

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ハチャトゥリアン 交響曲第3番「交響詩曲」

CD

 ■ A・ハチャトゥリアン作曲/交響曲第3番「交響詩曲」

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 ▲ K・コンドラシン指揮/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

 共演はボリショイ劇場トランペット・アンサンブル。

 上記の国内盤には「1964年1月14日録音」と記載。

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 こちらの輸入盤(4枚組)には「1969年録音」と記載されています。どちらが正しいかは不明だけれど、ともあれ当時のソビエト最強メンバーの録音が残ってくれていることは嬉しい。

 通常3管編成のオケに、パイプ・オルガンと15本のトランペット部隊が加わるという編成。

 短い導入に続いて、いきなり15本のトランペットによるファンファーレが鳴り響き、小太鼓も参戦して、これが延々続く。その後、オルガンによる速いパッセージが現れ、ここまでで相当に騒々しい。

 ようやく落ち着いたところで、弦楽器にアルメニア風のメロディが歌われ、ここでようやく音楽らしくなってくる。ここからしばらくは、いかにもハチャトゥリアンらしい、叙情的な良い雰囲気がある。

 クラリネット、フルートの速いパッセージから、やがて元の騒々しさに戻り、そして止めに、打楽器と金管楽器の3連音符の轟々たるリズムの上に、トランペット部隊がアルメニア風主題を吹き鳴らす。「慎み」という言葉は彼らには無いのか...ここまで来ると笑ってしまうしかない。

 ここで曲を終われば良いものを、その後コーダが延々と(しつこく)続く。

 「内容がない」と言われればその通り。体調の悪い日に聴けば(そうでなくとも?)、単に騒々しいだけかもしれない、ひたすら『力』を誇示する音楽。しかし、ハチャトゥリアンの音楽あってこその25分なのだ。


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 ▲ E・ムラヴィンスキー指揮/ソビエト国立交響楽団

 1947年のライブ録音。オケからすると、12月25日のモスクワ初演時のライブ録音。実際の初演は、この直前の12月13日にレニングラードにて(オケはレニングラード・フィル)。

 如何せん録音が古いモノラルなので(この年代としては良いと言えるかもしれない)、まず聴くならコンドラシン盤だろうけれども、こちらもなかなか興味深い。

 何と言っても初演時の『記録』として貴重なものであるし、演奏そのものも、中間部(例のアルメニア風の部分)の表現が素晴らしく(ここは紛れも無くムラヴィンスキー)、エンディングも音の悪さを超えて伝わってるド迫力にゾクゾクくる。

 また、現行版(出版譜)には無い小節もあり、(第2交響曲と同様に)同じフレーズの繰り返しを出版の際にカットしたのだろうか。


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 ▲ F・グルシチェンコ指揮/BBCフィルハーモニック

 1993年のライブ録音。

 確かこの録音が出た当時はコンドラシン盤が入手困難で、結構歓迎された録音ではなかったろうか。シャンドスであればヤルヴィ(父)に録音してほしかった気もするけど。

 聞き慣れない指揮者だけれども、この演奏は意外に悪くない。録音もいいし、迫力はあるけれども耳に優しくて、とても聴き易い。まあ、このスコアを演奏して「迫力が無い」とはあり得ないだろうが...

 さすがに中間部になると、薄味で緩くなってしまい、こういうところでは、ムラヴィンスキーやコンドラシンとの格の違いがハッキリと出てしまう。

 ちなみに、途中10番(!)トランペットが8分音符で「♪レ・ラ・ラ・(高い)レ」と吹き続ける場面があるのだが、途中から最後の「レ」をオクターブ下げて吹いている(楽譜にはそうやって吹いてもいいという指定がある)。一般常識としては、やむを得ない対応とは思うけれど、ソビエト勢の録音ではひたすら高い「レ」を吹き続け、そちらの方が尋常ではない。

 カップリングはハチャトゥリアン作曲の「勝利の詩」とイワノフ作曲の「コーカサスの風景」。

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ハチャトゥリアン 交響曲第1番

CD

 ■ A・ハチャトゥリアン作曲/交響曲第1番

 大学の卒業作品とはいうものの、メロディの情感やリズム、ハーモニーはハチャトゥリアンそのもの。民族性という所では、有名な「第2番」よりもよりストレートにハチャトゥリアン節が楽しめるかもしれない。

 3楽章形式だけれども、楽章内でテンポや曲想がひんぱんに変化するので、交響曲というよりもバレエ音楽のような雰囲気があり、実際に「ガイーヌ」のアイシェのテーマを思わせるような旋律も出てくる。

 これでもかとばかりのエンディングもハチャトゥリアンらしい。

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▲ A・ガウク指揮/モスクワ放送交響楽団

 1959年録音。

 録音年代は古いけれども音は聴き易い。オケのパワーも文句無しのイチ推し。


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▲ A・ハチャトゥリアン指揮/ソビエト国立交響楽団

 1975年ライブ録音。自作自演盤。

 この演奏もいいのだけれど、ライブ録音だけあって最後は息切れ気味。 


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▲ L・チェクナヴォリアン指揮/アルメニア・フィルハーモニー管弦楽団

 1993年録音。

 荒っぽいけれど、勢いのある演奏。ただ、終楽章はさすがにテンポが速過ぎて、細かい音符を弾き(吹き)切れていない。

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ハチャトゥリアン 勝利の歌(グルシチェンコ)

CD

 ■ A・ハチャトゥリアン作曲/勝利の歌

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 ▲ F・グルシチェンコ指揮/BBCフィルハーモニック

 1993年録音。珍しい曲の貴重な録音。

 明るく華やかな雰囲気を持った演奏。オケも鳴っているし、この手の曲であれば不満はない。

 「世界初録音」と銘打たれ、曲は単一楽章の作品。

 いかにもハチャトゥリアンらしい導入から、木管楽器で楽しげなテーマが現れる。

 中間部では抒情的な面も見せ、盛り上がった後に再現部へ。エンディングは相当にしつこい。

 民族的な色合いは薄いけれども、肩の凝らないオーケストラ曲として楽しめます...でも長い(20分弱)

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