伊福部昭

伊福部昭 リトミカ・オスティナータ

CD

 ■ 伊福部昭作曲/ピアノとオーケストラのためのリトミカ・オスティナータ

 昔のLP時代から聴いているせいか(若杉盤)、伊福部昭の独奏付き作品の中ではこれが一番好き。

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 ▲ 若杉弘指揮/読売日本交響楽団

  ピアノは小林仁。1971年録音。

 この若杉盤と井上盤(ライブ)、どちらも気に入っているけれども、演奏のまとまりという点では若杉盤だと思う。変拍子の連続する曲、ライブだとさすがに色々ある。

 この曲で、ピアノの役割というのは極めて限定されていて、速い部分ではひたすらオスティナート風の動き、遅い部分では旋律はオケに任せて(打楽器的な)打撃音を強奏で響かせる。

 なので「協奏曲」というよりも、「ピアノ付きのオーケストラ曲」に近く、そういう意味で、ピアニスト的には積極的に演奏したい曲ではないのではなかろうか(自分にスポットライトが当たりうことは殆ど無い)。

 ホルンによる3小節の導入の後、ピアノからいきなり本題に突入する。その後は大雑把に「A-B-C-B-A」という構成だけれども、中間の「C」の部分、パーカッションを伴い、ひたすらリズムで押しまくる。

 こうなると、もう冷静には聴いていられない。


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 ▲ D・ヤブロンスキー指揮/ロシア・フィルハーモニー管弦楽団

 ピアノはE・サランツェヴァ。2004年録音。

 やっぱり、アレグロの部分が、安全運転と言うか、間違えないようにというのが精一杯な感じがして、オスティナートによる高揚感が全く無い。

 トランペットなどは、速い5拍子(「2+3」など)のリズムが全く取れていなくて、ここまでくると、さすがに『商品』としてもどうなのかと思う。

 これは、自分たちの感覚の中に全く存在しない律動なのではなかろうか。他のパートも似たり寄ったりなのかもしれない。

 純粋に演奏を聴くならば「若杉>井上>>>ヤブロンスキー」。

 日本人以外による伊福部作品ということで興味深いアルバムだけれども、演奏そのものはあまりオススメできるものではありません。


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 ▲ 井上道義指揮/東京交響楽団

 藤井一興のピアノ。1983年のライブ録音。

 安全運転気味の(それでも危なっかしい)ヤブロンスキー盤に比べると、こちらは快調で、スリリング。さすがリズムには躍動感があり、打楽器も決まっている。

 この曲、テンポの速い部分ではリズムのパターンが目まぐるしく変わるので、ちょっと乱れると修復不可能になるような恐ろしさがある。この演奏でも、最後の最後でピアノのソロが乱れ、そのままオーケストラになだれ込む。

 エンディングは16分を強調して盛り上がる。

 ちなみに、この日のコンサートは伊福部昭の協奏作品を4曲並べるという強力なプログラムで、あの日、私は五反田の簡易保険ホールまで聴きに行ったのだ。そして、ピアノの一瞬の乱れを今でもハッキリと記憶している。


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 ▲ 上田仁指揮/東京交響楽団

 ピアノは金井裕。1961年10月9日、厚生年金会館でのライブ録音。モノラル。

 この曲の初演時のライブ録音であり、また、他の録音とは異なる「初演版」による演奏。

 この「初演版」は、2回目のアレグロの後に現行版に無い音楽が挿入されている。それは、弦楽器が刻むリズムに乗って展開され、テンポはさほど速くない。

 その他については、オーケストレーションも含めて細かい変更は多々あるけれども、曲の進行は現行版と同じ。

 最初のアレグロ、ピアノのソロはなかなか快調に進む。しかし、そのモチーフがオーケストラに受け渡されると、一気にスリリングになる。

 特に2回目のアレグロの後半部分や、エンディングの追い込み、パーカッションのオスティナートが加わって突き進むあたりは、どうなることかと聴いていてヒヤヒヤする。

 何はともあれ、最後はピタッと決まる。

 「ブラボー!(よかった、よかった)」

 演奏のまとまりでは若杉&読饗盤だけれども、この初演盤も『記録』という以上に捨てがたい魅力がある。


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 ▲ 早川正昭指揮/栃木県交響楽団

 山田令子のピアノ。2006年6月18日のライブ録音。

 ちなみに、栃木県交響楽団はアマチュア・オケだそうです。

 しかし、プロによる他の録音(若杉盤、井上盤など)にも負けない魅力を持った演奏。

 まずはピアノが素晴らしく、そのピアノが全体をリードしているのだと思うけれども、難曲だけに危なっかしい(ピアノとずれる)部分もあるにせよ、スリリングでエキサイティングな演奏を聴かせてくれる。

 「日本組曲」のオリジナル(ピアノ)版も収録されていて、これはオススメです。


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 ▲ 井上道義指揮/東京交響楽団

 ピアノは山田令子。2016年7月10日のライブ録音。

 ようやく若杉盤に匹敵する(上回る?)録音が出てくれました。

 最初の方こそリズムに乗り切れていない感もあるけれども、どんどん白熱し、エンディングへ向けてのオスティナートによる盛り上がりは、どこかぎこちない若杉盤を超えている。

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伊福部昭音楽祭ライブ(実況録音盤)

CD

 ■ 伊福部昭音楽祭ライヴ(伊福部昭の芸術9-祭)

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 ▲ 本名徹次指揮/日本フィルハーモニー交響楽団

 2007年3月4日、サントリーホールでのライブ録音(2枚組)。

 収録曲は以下の通り。

  (CD1)
  SF交響ファンタジー第1番
  「銀嶺の果て」~オープニングタイトル/スキーシーン
  「座頭市物語」~オープニングタイトル
  「ビルマの竪琴」~メインテーマ
  「わんぱく王子の大蛇退治」~アメノウズメの舞
  オーケストラのための特撮大行進曲
  (CD2)
  管弦楽のための「日本組曲」
  シンフォニア・タプカーラ

 コンサートは3部構成でしたが、第1部はCDに収録されていません。

 「特撮大行進曲」は和田薫編曲による「バンドのための『ゴジラ』マーチ」の管弦楽版。

 以下はコンサートを聴いた時の感想です。

 

 2007年3月4日。サントリーホールにて。3部構成。15時開演で終演が19時前。

 まずは箏の2重奏による「交響譚詩」。原曲はオーケストラ作品なのだけれども、これが結構違和感無く楽しめる。

 次がティンパニの伴奏による「アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌」。始めて聴いた曲だけど、伴奏が如何にも伊福部さんらしい音楽。

 第2部からは本名徹二指揮/日本フィルによる演奏。

 伊福部作品を演奏する機会も多いのか、オケも指揮者も非常に『こなれた』印象があって、ツボを押さえた手堅い演奏だとは思うけれど、反面『のめり込み』は少ないか。

 第2部はスクリーンに映像を映しつつの演奏。大きなスクリーンで観ると(自宅のTV画面と違って)迫力あるなぁ、と思いつつも「わんぱく王子…」の「アメノウズメの踊り」が画面とシンクロしていなかったのが残念。

 第3部の「日本組曲」「タプカーラ」も、最後はテンポを速めていくので否応無しに盛り上がり、怒涛のごとく押し切った感じ。トランペットは5人体制(パートは3つ)。ハイトーンの連続するPiccolo奏者の男性は演奏後、目が虚ろでした。しかも、アンコールに「タプカーラ」第3楽章後半部をもう1回...お疲れ様でした。

 ロビーの販売コーナーは人だかりのため近寄れず。帰りにホワイトチョコレートのお土産をもらい、「第2回」は来年3月16日、杉並公会堂で開催されるとのことでした。

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 お土産のチョコレート。


コンサートのパンフレットより伊福部氏の言葉

 「(前略)新しいスタイルはいつかは古くなる。そのたびに新しいものを求め、あちこちに目を移して動き回っていたら、一生に一度も“正時”を打てないまま死ぬことになりかねません。だから私は、動かない時計でいいんです。動かない時計は半日に一度、必ず“正時”を打ちます…」

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伊福部昭・卆寿を祝うバースデイ・コンサート(ライブ録音)

 CD

 ■ 伊福部昭・卆寿を祝うバースデイ・コンサート

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 ▲ 本名徹治指揮/日本フィルハーモニー交響楽団

 2004年5月31日。サントリーホールで行われたコンサートのライブ録音。

  フィリピンに贈る祝典序曲
  日本狂詩曲
  SF交響ファンタジー第1番
  交響頌偈「釈迦」
  【アンコール】
  シンフォニア・タプカーラ~第3楽章

 このコンサートは会場で聴くことができました。

 改めて実況録音盤を聴き返してみて、「交響ファンタジー」はそれほど『速い』という感じは無いけれども、「…タプカーラ」の後半部の加速は、会場で聴いていて熱くなるのも納得できます。

 以下はコンサートの感想...

 最初の「…祝典序曲」から、いきなり伊福部ワールド全開。2台のピアノを加えた、急緩急、3部形式の曲。

 「日本狂詩曲」は21歳の時に書かれた最初の管弦楽曲。このときから伊福部さんはすでに『伊福部昭』でした。打楽器10人を加えた後半「祭り」は圧巻。やや一本調子な気もするけれど、当時の伊福部さんの頭の中には次から次へと『音楽』が渦巻いていたのでしょう。

 「交響ファンタジー」。個人的には最後のマーチはテンポ設定が速すぎた気もするけれど、トロンボーン、チューバが大健闘。

 後半「釈迦」は3楽章、演奏時間45分、合唱付きの大曲。アップ・テンポの部分が第2楽章途中しかないので、コアな伊福部ファン向きかもしれないけれど、最初から最後まで『伊福部節』。エンディングの盛りあがりは素晴らしかったです。

 アンコールに「シンフォニア・タプカーラ」の第3楽章。ここでもトロンボーンが大活躍。家へ帰るまで、頭の中でこの旋律がずーっと鳴り続けていました。

 本名さんはリズミックな部分での勢いが素晴らしく、変拍子のリズムも的確。曲の終わりなどはかなり『煽る』ような所もありましたが、それ故に会場は大きく盛り上がりました。

■ 伊福部先生現る!!

 客席の照明が暗くなり、ステージに団員が入場を始めても、会場に伊福部さんの姿は見当たりませんでした(私の席はRB、1階席2階席共によく見渡せます)。ひょっとすると、体調を崩されて今日はいらっしゃらないのだろうか...そんな不安もよぎります。

 オーケストラが入場し終わり全員が着席したところで、ホール入り口のドアが開きました。ここで伊福部先生の登場です。会場からはもちろん大きな拍手。

 入口のドアまでは車椅子で来られて、そこからは係員に付き添われて、拍手の中を席まで歩かれました。その後の移動は全て車椅子だったので、歩かれるのは辛かったかと思うのですが、このような場であることを考慮されたのでしょうか。ご立派でした。

 コンサート前半終了後の休憩前、指揮者の本名さんから紹介があり、何と会場にゴジラ(!)が現れ、伊福部さんに花束を贈呈。まさにこの日(5月31日)が伊福部先生のお誕生日だそうです。

 全プログラム終了後も、もちろん伊福部さんに盛大な拍手が送られ、ご自分の席で立って拍手を受けていました(さすがにステージ上まで歩いてくるのは厳しいようです)。

 このとき、多くの人が自然と席から立ち上がり、こういう形のスタンディング・オベーションは(TVドラマや映画以外では)初めての光景でした。会場が一つになった、本当に素晴らしいコンサートでした。

 終演後、ホールの外へ出ると雨が降っていました。その中を車椅子に乗った伊福部先生が係員と共にホテルの方へ向かっていて、それを見つけたファンがまた拍手を送っていました。

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伊福部昭の自画像(DVD)

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 ■ 伊福部昭の自画像

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 1991年12月13日の「喜寿記念コンサート」の映像と、伊福部昭へのインタビュー映像による。コンサートのライブというよりも「ドキュメンター」といった雰囲気の強いソフト。

  シンフォニア・タプカーラ
  ゴジラの主題によせるバラード(芥川也寸志)
  交響ファンタジー「ゴジラvsキングギドラ」
  バレエ音楽「日本の太鼓<ジャコモコ・ジャンコ>」
  Hommage a A.I.(黛敏郎)

 「シンフォニア・タプカーラ」と、伊福部さんの指揮による「日本の太鼓」は全曲収録。「ゴジラvsキングギドラ」は抜粋。

 何と言っても伊福部さん自身が指揮をされた「日本の太鼓」。9人の『弟子』が、背に「祭」の文字が入った青い半被を着て太鼓パートを受け持つ。

 冒頭、伊福部さんが棒を振り下ろす、そのあまりの迫力・気迫に驚いたのか、いきなり「カラン・カラン・・・」と誰かがバチを飛ばしてしまう。

 実況録音盤も出ているけれども、少なくとも「…太鼓」については映像のインパクトは大きい。

 コンサートの全曲は収録されていないけれども、その分、伊福部さんのインタビューがたっぷりと収録されているのが嬉しい。

 指揮をされた石井真木氏のお話も、曲に対する思い入れの強さが伝わってくる。特に「タプカーラ」の第2楽章のテンポ設定については熱く語っている。

 芥川、黛作品は「9人の門弟が贈る<伊福部昭のモチーフによる讃>」から。

 コンサートでは全曲演奏されていて(下記)、芥川作品(石井眞木指揮)以外は作曲者自身による指揮。

  1.Felicidades El Maestro! / 原田甫
  2.幻の曲 / 石井眞木
  3.Omaggio al maestro Ifukube / 眞鍋理一郎
  4.狂想的変容 / 今井重幸
  5.Homage to Akira Ifukube / 松村禎三
  6.Gozilla is dancing / 三木稔
  7.ゴジラの主題によせるバラード / 芥川也寸志
  8.Omaggio a maestro A.Ifukube / 池野成
  9.Hommage a A.I. / 黛敏郎

 芥川作品は「ゴジラが『交響譚詩』を指揮したら・・・」という設定だそうで、とても面白い曲。

 依頼されて「ホトホト困惑した」という黛作品は黛さん自身の指揮(懐かしい!)。エンディングではラヴェル作曲の「ピアノ協奏曲」が引用されて、他の『弟子』たちによるコーラスも加わるのだけれども、これが何とも...

 ちなみに、このコンサート、当初は山田一雄さんが指揮される予定だったそうですが、準備中に亡くなられてしまったために、石井眞木氏が務めたとのことです。

 一度観始めると止まらなくなる、見所満載のソフト

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伊福部昭 管弦楽のための「日本組曲」

 CD

 ■ 伊福部昭作曲/管弦楽のための「日本組曲」

 19歳の時に作曲したピアノ曲を、58年後の1991年に77歳の伊福部さんがオーケストレーションした作品。

 初期の作品ということもあってか、とてもシンプルな音楽で、後年の様な変拍子は使われていないけれど、この頃から紛れもない『伊福部昭』だ。

 オーケストラは3管編成。アルト・フルートなども加わっていて、2曲目「七夕」の冒頭はフルートとのデュエット。1曲目「盆踊り」の途中にもソロ(フルートとのソリ?)がある

 オリジナルのピアノ曲を、それなりにオーケストレーションするのは誰でも出来るかもしれないけれど、打楽器の扱いについては、エンディングのシンバルの一閃なども含めて、伊福部さんでなければ、まず書けないと思う。

 また、1曲目「盆踊り」後半、16分音符や5連音符で上下する分散和音をトロンボーンに演奏させていて、ここは完全に一般常識を超えている。ここで、より演奏し易いスコアを書くことは可能だろうけれども(普通の人ならそうする)、この(演奏が)難しい楽譜から生まれてくるエネルギーはとてつもない。

 クリックで拡大します

 ▲ 井上道義指揮/新日本フィルハーモニー交響楽団

 1991年9月17日、「作曲家の個展」での初演時ライブ録音。カップリングは「シンフォニア・タプカーラ」。


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 ▲ 広上淳一指揮/日本フィルハーモニー交響楽団

 1995年録音。

 作曲者の立会いの下での録音。伊福部さんはリズムの取り方などについて、色々とアドバイスをされたとのこと。

 とても丁寧にまとめられた演奏で、特に中間2つの楽章がいい。第2楽章「七夕」の気の遠くなるような遅いテンポは、作曲者の指示だろうか。

 第4楽章などは、正直、大人しすぎるように感じるけれども、セッション録音でキチンとした音源を残すというスタンスもあるのだろう(伊福部作品はライブ録音が殆どなので)。

 しかし、第1楽章「盆踊り」は、狂おしくも悲壮感が漂う音楽だ。

 「伊福部昭の芸術2」。カップリングは「シンフォニア・タプカーラ」。


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 ▲ 本名徹次指揮/日本フィルハーモニー交響曲楽団

 2007年3月4日。サントリーホール、「伊福部昭音楽祭」のライブ録音。

 第1楽章「盆踊り」はライブ的な熱さもあり、第3楽章まではとてもいい。

 しかし、問題は第4楽章で、後半からテンポをどんどん上げ、そのまま猛烈な速さで曲を閉じる。最後の管楽器の16分音符など全く吹き切れていない。

 ほとんど『崩壊』と言っていいのではなかろうか。もちろん、スコアに "accell." の指示は無い。

 ライブ一発勝負であれば盛り上がるかもしれないけれど、落ち着いて聴き直すと、(少なくとも私には)強烈な違和感がある。


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 ▲ 小林研一郎指揮/新交響楽団

 1994年ライブ録音

 第1楽章「盆踊」の迫力はスゴイ。「木挽歌」(小山清茂作曲)の「盆踊り」のような、のどかな村祭りではなく、なにやら殺気立ち、エンディングではパーカッションがビシビシ打ち込まれて、そのテンションの高さは尋常ではない。

 伊福部昭・傘寿記念CD(2枚組)。

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伊福部昭 ピアノ組曲(山田令子)

CD

 ■ 伊福部昭作曲/ピアノ組曲

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 ▲ 山田令子(ピアノ)

 2008年録音。

 今はオーケストラ版の方がメジャーになってしまった感があるけれども、そのオリジナルである19歳の時に作曲したピアノ曲。

 楽譜に書かれている作曲者自身の前書きによると、

 「このピアノ組曲は、1934年Debussyの友人で、特異なピアノ奏者であったスペインの George Copeland のために書いたものである。」

 1.盆踊(ぼんおどり)
 2.七夕(たなばた)
 3.演伶(ながし)
 4.佞武多(ねぶた)

 もちろん、打楽器も加えた大編成のオーケストラによる迫力のある、また、多彩なサウンドも魅力的なのだけれども、ピアノ版も負けないくらいに鮮やかに情景を描いている。

 特にシンプルな「七夕」の美しさは格別で比類がない。

 そして何より、19歳の伊福部青年の音楽は、どこを取っても、紛れもない『伊福部昭』なのだ。

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伊福部昭 生誕100年 メモリアル・コンサート(横浜みなとみらい)

 ◆ 伊福部昭 生誕100年 メモリアル・コンサート

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 井上道義指揮/日本フィルハーモニー管弦楽団

  管絃楽のための「日本組曲」
  オーケストラとマリンバのための「ラウダ・コンチェルタータ」(独奏:安倍圭子)
  映画「銀嶺の果て」より
  映画「大魔神」より
  映画「ビルマの竪琴」より
  交響組曲「わんぱく王子の大蛇退治」より
  映画「ゴジラVSモスラ」よ

 横浜みなとみらいホールにて。

 伊福部作品、やっぱりナマで聴くのはいい。

 「ラウダ…」はどうしても初演時のインパクトが強いのだけれども、頭が真っ白になるような興奮ではなく、もっと冷静で落ち着いた雰囲気は、また違った面白さがありました。

 後半(映画音楽)はホールの館長である池辺晋一郎さんが登場。指揮の井上さんとのお話で進行(話が噛み合っているようないないような)。

 映画音楽の一般的な話や、有名監督のエピソードなどもあって、なかなか面白かったです。

 池辺さん「時間はそろそろ9時ですが、最後の曲は『ゴジラ』です」等々相変わらず。

 「わんぱく…」では「アメノウズメの舞」で使用されている特殊な(民俗)打楽器をいくつか紹介してくれました(なるほど、こういう楽器を使っていたのか)。

 また、伊福部さんは「『大魔神』は(神なので)『だいましん』だ」とおっしゃっていたそうです。

 最後の「ゴジラVSモスラ」は映像付。ただし、新しい方(1992年版)なので、小美人はザ・ピーナッツではありません。あれ、双子だから面白いのに...。

 アンコールは「シンフォニア・タプカーラ」第3楽章の後半部。しかし、この曲で観客に手拍子を求めるとはビックリ...でも、他人様の演奏するのを畏まって鑑賞するのではなく、みんなで一緒に盛り上がろう、そんな雰囲気で、これが妙に盛り上がりました。

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伊福部昭 百年紀コンサート

 ◆ 伊福部昭百年紀 コンサートシリーズ Vol.1

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 齋藤一郎指揮/オーケストラ・トリプティーク

  「銀嶺の果て」より3つのシーン
  「国鉄」組曲
  「ゴジラ」組曲
  「海底軍艦」組曲
  「地球防衛軍」組曲
  (アンコール)
  交響ファンタジー「ゴジラvsキングギドラ」から

 すみだトリフォニーホルにて。

 アンコールの「…キングギドラ」の冒頭の音が鳴り響いた瞬間、その音の迫力、エネルギー、スケール感...全てに圧倒され、まさに鳥肌モノだった。

 それまで(本プロ)も十分に楽しめたのだけれども、やはり、スタジオのオーケストラが演奏するための「映画音楽」としてのスコア。伊福部さん自身によるコンサート用のスコアとはレベルが違う。

 特に打楽器パート(女性のみ4人)の強力プレイはお見事。

 齋藤氏の指揮もスケールが大きく、パワフルかつダイナミック。伊福部音楽に合っているのではなかろうか。

 ちなみに、今日の演奏はCD化されるそうです。

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伊福部昭 シンフォニア・タプカーラ(吹奏楽版)

CD

 ■ 伊福部昭作曲/シンフォニア・タプカーラ

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 ▲ 野中図洋和指揮/陸上自衛隊中央音楽隊

 2005年録音。松木敏晃編曲による吹奏楽版。

 『編曲モノ』と侮るなかれ。これがとてもイイのだ。

 元々、管楽器が活躍する曲だし、弦楽器もシンプルに書かれているので、吹奏楽でも演奏しやすい曲ではある。

 第1、3楽章のドライでメリハリの効いたサウンドは、オケとは違った迫力がある。弦楽器の「歌」にしても、管楽器で演奏することに無理は無いし、また別の雰囲気が出てくる。

 これは、当然のことながら、演奏の素晴らしさあってのことだと思う。

 第1楽章、再現部前のチェロのソロをどうするかは難しいところだと思うけれども、バリトン・サックスで見事に演奏している。

 話題性狙いの企画ものとは一線を画する、伊福部作品として十分に楽しめる演奏。

 その他の収録曲は下記の通り。

  古典風軍楽「吉志舞」
  交響譚詩(松木敏晃編曲)
  シンフォニア・タプカーラ(松木敏晃編曲)
  SF交響ファンタジー第1番(福田滋編曲)

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伊福部昭 ロンド・イン・ブーレスク(汐澤&東響)

CD

 ■ 伊福部昭作曲/オーケストラのためのロンド・イン・ブーレスク

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 ▲ 汐澤安彦指揮/東京交響楽団

 1983年8月5日に日比谷公会堂で開催された歴史的コンサート(SF特撮映画音楽の夕べ)における、管弦楽版初演時のライブ録音。

 指揮者の汐澤さんは東宝特撮映画を観たことがなかったそうで、確かに生れ年(1938年生まれ)を考えると、怪獣映画に夢中になっていた世代よりも一回り上になるのかもしれない。

 冒頭はいきなり「わんぱく王子…」の旅立ちの音楽で始まり、そして「怪獣大戦争」のマーチ。後半は和太鼓のリズムと共に『ボレロ風』の展開になる。

 広上&日フィル盤に比べると、和太鼓のバランスが大きく力強い。ただ、ライブということもあってか、最後の方は息切れした感じがし、やや消化不良気味でもある。

 ちなみに、当日は「SF交響ファンタジー」3曲とこの曲が演奏されているのだけれども、曲順はどうだったのだろうか。CDの収録順と同じくこの曲が最後なら、さすがにバテるだろう。

 LPでは2枚組みで出ていたこのライブ録音。演奏内容は置いておいたとしても、その価値はとてもつもなく大きい。

 解説にある下記の一文をみても、それは分かると思う。

今まで、サントラ盤のモノラルでしか聴けなかったものが、ステレオで聴く事ができるという事は伊福部ファンにとってこたえられない事と思う。(中略)今後最低50年間は、伊福部ファンはどんな事があっても悲しみに耐えて生きてゆける事ができるであろう。このライブ盤がある限り。

 今読めば大袈裟に見えるけれども、当時は激しく納得できるものだった。

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