マーラー 交響曲第10番(バルシャイ版)
CD
■ G・マーラー作曲/交響曲第10番
▲ R・バルシャイ指揮/ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー管弦楽団
2001年ライブ録音。指揮者のバルシャイによる補筆完成版。
このバルシャイ版は中間3楽章では打楽器や金管楽器がかなり活躍する。また、終楽章は弦楽器を中心にクック版に比べるとかなり『素直な』オーケストレーションになっているように感じ、ここは、バルシャイ版の方がすんなりと曲を受け入れられる。もちろん、クック版あってのバルシャイ版であるのも確かだとは思うけれど。
演奏は前向きと言うか、かなり外向的な感じ。
ストレート勝負。不協和音なんかはそのまま思いっきりぶつけて鳴らす。
それがマイナスに出たのが第3楽章か。この音楽の微妙なニュアンスが感じられず、結果中間3楽章がやや一本調子になってしまった。
それでも終楽章、トランペットの引き伸ばされた「A」の音から、第1楽章の主題が再現されてから後の物凄い高揚感は、率直に感動的。
それにしても第1楽章はマーラーの書いた音楽の中で最も美しい楽章の一つではなかろうか。これはあの世、岸の向こう側の音楽。
この未完の作品を補筆して完成してしまうことや、このバルシャイ版についてもいろいろと見解はあるだろうし、もちろん、マーラー自身が完成していれば、これとは大きく違ったものになっていたに違いないけれど、この未完の交響曲の全体像が見え、それを実際の『音』で聴けるという意義はとてつもなく大きい。
全5楽章で、第5楽章の後半部に第1楽章クライマックスでの印象的な不協和音が再現する。それによって、この交響曲が大きなループを描いていることが分かるのだ。
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