ヴォーン・ウィリアムズ 田園交響曲(ノリントン)
CD
■ R・ヴォーン・ウィリアムズ作曲/田園交響曲(交響曲第3番)
▲ R・ノリントン指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
1997年録音。
「田園交響曲」といえば、ベートーヴェンであるけれども、RVWの「田園交響曲」はベートーヴェンとは全く異なり、心和む自然の風景も、晴れやかな気分も無い。
8分音符で揺れ動く木管楽器の導入から、ヴァイオリンの独奏へとつながる。
終始、思いに耽るような内向的な音楽で、テンポが速まるのは第3楽章の一部のみ。この楽章の終結部はプレストであるけれども、独特の軽さがあり、攻撃的な激しさは無い。
第2楽章ではナチュラル・トランペットが吹奏される。
これは第一次世界大戦に従軍していたときに聴いたラッパに発想を得ているらしいけれど、元気のよいものではなく、静かで寂しげだ。最後は同じテーマがナチュラル・ホルンで演奏される。
終楽章の冒頭では、ティンパニのロールの上に歌詞の無いソプラノ独唱が遠くで歌われる。
この楽章もテンポは遅いものの(モデラート)、音楽は初めて高揚する気配を見せる。
結びはソプラノが再び現れて、ヴァイオリンの「A」の音が遠くへ消えていく。
「海」「ロンドン」に続く3番目の交響曲。前2者とは全く異なるタイプの音楽。
ノリントンはRVWの交響曲を録音していたけれども、全集になる前に中断してしまったようだ(レコード会社の都合?)。
全体的にアッサリとした曲作り。対向配置のスッキリとした透明感のある響きは、この曲に合っていると思う。
第3楽章も舞曲風な軽さがあり(ここのハイティンクは何とも重厚だ)、また、各楽章のコントラストがはっきりと出ている。終楽章のソプラノ独唱は、本当に遠くから聞こえてくる。
冒頭の木管とか、トランペットのバックの弦の音を『膨らませる』のは、いかにもノリントンらしい処理の仕方。
カップリングは交響曲第5番。
ちなみに、グラズノフにも「田園交響曲」(第7番)があるけれども、こちらは完全に大先輩(ベートーヴェン)のパクリで、調性も同じヘ長調。
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