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ショスタコーヴィチ 交響曲第10番(カラヤンのモスクワ・ライブ)

CD

 ■ D・ショスタコーヴィチ作曲/交響曲第10番

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 ▲ H・V・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 1969年5月29日のモスクワでのライブ録音。

 未だ東西冷戦の時代。いわば敵地へ乗り込んでの公演。さらには作曲者自身が臨席していたというシチュエーションもあってのことか、スゴイ演奏になっている。

 第1楽章の最初の盛り上がりで朗々と奏されるホルン、この「音」はソビエトのオケでは聞けないものではないか。「どうだ、オレたちの音を聴け!」と言わんばかりの演奏だ。

 ちなみに全曲に渡ってのMVPはホルンセクションだろう。旋律以外の部分でもサウンドをピシっと締めている。

 そして、中間部(展開部)のクライマックスの恐ろしいほどの迫力。一旦停止した音楽は金管のコラールでさらに頂点へと一気に向かっていく。

 やがて音楽が静まっても最後までこの緊張は持続する。下手な演奏だとここで一息ついてダレてしまうのだけれど...。

 第2楽章はやや遅い目のテンポで弦の響きをたっぷりと聞かせて始まるが、木管のテーマと共にぐんぐん加速していく。後はオケが一体となって突進。崩壊寸前の所でも指揮者も手綱を緩めない。

 第3楽章はこの曲の謎めいた微妙なニュアンスを絶妙に表現しているように感じる。そして、ここでもホルンの素晴らしさ。

 終楽章は木管の寂しげなモノローグの序奏から、弦楽器による軽快な第1テーマへ。このまま行くかと思いきや音楽は威圧的、暴力的になり、そのままクライマックスへ。

 バズーンによるテーマの再現、そしてまたまたホルンが作曲者自身を表した音列「D-E♭-C-H」を高らかに吹き上げる。

 緊張感を増す中、音楽はますますテンションを高め、執拗に繰り返される「D-E♭-C-H」は抵抗の叫びか、ティンパニの連打から一気呵成にエンディングへ。

 もし、この演奏を会場で聴いていたら、呆然とするしかなかったろう。

 作曲者がこの曲に込めた「意味」「想い」は想像するしかないけれど、このカラヤンの演奏は決して「めでたしめでたし」の楽天的な音楽ではないことを提示している。

 そう何度も聴ける演奏ではないが、これ以上ない貴重な「ドキュメント」。

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