モーツァルト クラリネット協奏曲(バセット・クラリネット版)
CD
■ モーツァルト作曲/クラリネット協奏曲(バセット・クラリネット版)。
▲ C・ディヴィス指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団/E・オッテンザマー(バセット・クラリネット)。
1992年録音。バセット・クラリネットによる演奏。
バセット・クラリネットは通常のクラリネットよりも音域が低いだけでなく、音色もより柔らかく、くすんだ印象がある。
独奏のエルンスト・オッテンザマーはウィーン・フィルの首席奏者。同じくウィーン・フィル首席のダニエル・オッテンザマー、ベルリン・フィル首席のアンドレアス・オッテンザマーの父上(すごい一家)。
バックのオケも、ごく自然体の暖かみのある演奏。(いい意味で)余計なことをしない指揮のコリン・ディヴィスも適任。
この曲はモーツァルト最後の協奏作品。
世にある「クラリネット協奏曲」をどれか1曲と言われれば間違いなくこの曲だろうし、それだけでなく、モーツァルト作品の中でも出色の1曲だと思う。
この曲は元々『バセット・クラリネット』のために書かれていて、この楽器は普通のクラリネットよりもさらに低い「ド」の音まで出る。
今、一般的に出版されている楽譜は、通常のクラリネットでも吹けるように『編曲』されていて、要は出すことが出来ない低い音をオクターヴ上げるなど書き換えたもの。
どうしても不自然な部分が多々現れるのだけれども、このバセット版の演奏を聴くと「なるほど」と納得できるのだ。
例えばこの部分(第3楽章から)。上段がバセット・クラリネット、下段が通常のクラリネット。
赤枠で囲われている部分は、通常クラリネットの音域から外れるので(低すぎる)、通常クラリネット版では1オクターヴ上げられている。
ただ、どう見てもオリジナルの方が流れが自然だし、シックリくる。
バセット・クラリネットの最低音が低い「ド」であるということも考えると、モーツァルトはその楽器の音域を目いっぱい使った楽譜を書いているということになる。
この曲(楽器)に限らず、モーツァルトは正にその楽器のための音楽を書いているのだ。
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