ヒンデミット ウェーバーの主題による交響的変容
CD
■ P・ヒンデミット作曲/ウェーバーの主題による交響的変容
▲ E・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団
1978年録音。
この曲がまだ無名だった(?)大昔、私が大学生だった頃。吹奏楽部の後輩のK君が、とあるオーケストラ曲のスコアを私に見せた。
「先輩、この曲面白いんですよ。吹奏楽に編曲して演奏出来ないもんですかね」
それが、この「…変容」だったのだ。当時の私はこの曲の存在を全く知らなかった。
「2楽章は、金管、木管、打楽器のアンサンブルになってるんですよ」
で、レコード(当時はLP)を探したのだけれども、これがなかなか見つからない。
ネットも無く、レコード屋さんの店頭に並んでいるレコードをチェックするしかなかった時代。ようやく見つけたのが、フルトヴェングラー指揮のBPOによるものだった。
古いライブ録音盤(モノラル)で、『音』的に満足できず、新しい録音で聴きたいという気持ちはずっとあった。
そこで出たのが、オーマンディ指揮のフィラデルフィア管による新録音。すぐに買って聴きました。
ただ、当時は「これで満足!」とならなかったのは、演奏のせいか、曲そのもののせいか。
また、第2楽章のテンポがやたらと速い(せかせかと忙しい)印象があったのだけれども、今聴くと妥当な感じがして、フルトヴェングラーの呼吸の深い演奏を聴き慣れていたためだろうか。
この曲も、やがて人気が出始め、K君の願いも叶って(?)吹奏楽でも演奏されるようになってきた。
色々な録音を聴いた今、改めて聴いてみると、これ(オーマンディ盤)も意外にいい。
ドイツ系のガチガチではない、明るく華やかな雰囲気の演奏。当然オケは上手い。
第2楽章中間部の金管アンサンブルのジャズ的な雰囲気、そこにティンパニが入ってくる部分などは見事にカッコイイ。
カップリングは「弦と金管のための演奏会用音楽」と、バルトークの「中国の不思議な役人」組曲。
▲ N・ヤルヴィ指揮/フィルハーモニア管弦楽団
1989年録音。
『ヒンデミット作品』としての緻密さよりも、派手にオケを鳴らすことが主眼。力で押し切った演奏。
でも、この曲であれば、こういった演奏も(演奏の方が?)楽しめる。
さすがに第3楽章はテンポが速く、メロディ主体で進行するので、後半のフルートのソロはキツそうだ。
第2楽章の銅鑼(ゴング)は中国風の音がする。
しかしながら、こういう曲は実は息子(パーヴォ)の方が得意なのではなかろうか。
ウェーバーの序曲集とのカップリング。
第2楽章の原曲である、劇付随音楽「トゥーランドット」から「序曲」と「行進曲」が収録(両曲共に同じモチーフを使っている)。
▲ E・サロネン指揮/ロサンゼルス・フィルハーモニック
1999年録音。
バランスなどもキチンと整えられ、実に見事にスコアを音にしている、まさに『模範的』な演奏。ただ、どこか醒めた、クールな感触。
第3楽章最初の短いリピートを省略しているのは解せない(他のリピートは全て行なっている)。
カップリングは「画家マチス」と「4つの気質」。
▲ R・クーベリック指揮/シカゴ交響楽団
1953年録音(モノラル)。
若き日のクーベリックの名演奏。シカゴ響の力強い、安定感のあるサウンド、見事な音楽を作っている。
金管、打楽器はバリバリ鳴るけれども(ホルンのバランスは弱目)、単に力づくで持って行くようなことはなく、しっかりとコントロールされている。
▲ C・ディヴィス指揮/バイエルン放送交響楽団
1989年録音。
決して『うるさくない』演奏。穏やかで紳士的な語り口。豊かな表情が付けられた第3楽章などはとてもいい。
そして、何と言ってもオーケストラがいい。
ただ、ハードな演奏を期待する向きには、ちょっと物足りないかもしれない。
第2楽章の鐘は一般的に使われるチューブラ・ベルの音ではない(中国風ゴング?)。
国内盤2枚組。カップリングは「モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ」(レーガー)と、2枚目はモーツァルト、ウェーバー、シュポアの「クラリネット協奏曲」。独奏はE・オッテンザマー。オケはVPO。
▲ G・セル指揮/クリーヴランド管弦楽団
1964年録音。
文句なしに上手い。決して技術的に簡単な曲ではないと思うのだけれども、余裕すら感じる。
アンサンブルとしての面白さを見事に表現しているし、かといって「機械的・無機的」にもなっていない。
でも、あまりに折り目正しすぎるようにも思えてしまう、と言ってしまっては贅沢か...。
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