ロッシーニの序曲集
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■ ロッシーニ序曲集
▲ F・ライナー指揮/シカゴ交響楽団
1958年録音。
まずは「ウィリアム・テル」の「夜明け」の素晴らしい表現。単なる爽やかさではない、そこに哀しみや不安が影を落としている。そして、それは続く「嵐」で現実のものになる。
4つの独立した部分を持つ接続曲ではなく、それぞれが結び付いて「起承転結」、一つのドラマを作り上げているのだ。当然のことながら「嵐」や「行進曲」の迫力。
また、編成が大きくない「絹のはしご」「ブルスキーノ氏」が、引き締まった素晴らしい演奏になっている。金管や打楽器が活躍することはないので、何となく地味に感じるのだけれども、このライナーの演奏では全く退屈することはない。
ロッシーニとしては、あまりにシンフォニックに過ぎるかもしれないけれども、色んな意味でオケのパワー、表現力を見せつけてくれる。
<収録曲>
「ウィリアム・テル」序曲
「絹のはしご」序曲
「ブルスキーノ氏」序曲
「セビリアの理髪師」序曲
「泥棒カササギ」序曲
「チェネレントラ」序曲
▲ G・セル指揮/クリーヴランド管弦楽団
1967年録音。
実に素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれるものの、メカニカルにはならずに、品の良さ、爽やかさを感じさせてくれる。べたつかず、サラッとした独特の肌触り。迫力も十分にあり、申し分の無い演奏。
管楽器も軽々と、余裕で吹いている感じがする。
残念ながら収録曲は少なく、有名な「セビリアの理髪師」「ウィリアム・テル」などは入っていません。
<収録曲>
「ランスへの旅」序曲
「絹のはしご」序曲
「アルジェのイタリア女」序曲
「イタリアのトルコ人」序曲
「どろぼうかささぎ」序曲
▲ C・デュトワ指揮/モントリオール交響楽団
1990年録音。
いつもながらの、カラフルな色彩感と、洗練された雰囲気。極上のサウンド。
で、ロッシーニの序曲では木管楽器、ホルンが活躍するのだけれども、そうすると、このコンビには正しくピッタリなのだ。
期待通り、管楽セクションは、素晴らしい演奏を聞かせてくれる。
例えば、1曲目「絹のはしご」主部へ入ってからのオーボエのソロ、ここに再現部ではピッコロがユニゾンで加わってくるのだけれども、速いパッセージのフレージングを見事に合わせている。
選曲的にも申し分なし。
<収録曲>
「絹のはしご」序曲
「セミラーミデ」序曲
「どろうぼうかささぎ」序曲
「ウィリアム・テル」序曲
「アルジェのイタリア女」序曲
「ブルスキーノ氏」序曲
「シンデレラ」序曲
▲ P・マーク指揮/パリ音楽院管弦楽団
1958年録音。
メインは名盤として知られるメンデルスゾーンなのだろうけれども、このロッシーニも聴き物。
まずはオケがパリ音楽院管弦楽団であること。
管楽器が活躍する場面が多いだけに、この魅力は大きい。「セミラーミデ」前半部分のビブラートを効かせたホルン。
これだけでも『買い』だとは思うけれども、マークの音楽作りも素晴らしく、「ウィリアム・テル」最初のチェロのアンサンブルからして一気に引き込まれてしまう。
<収録曲>
「ウィリアム・テル」序曲
「チェネレントラ(シンデレラ)」序曲
「セミラーミデ」序曲
「泥棒かささぎ」序曲
▲ C・アバド指揮/ヨーロッパ室内管弦楽団
1989年録音。
「セビリアの理髪師」の冒頭、「ジャジャーン」と鳴る16分音符がクリアに聴こえない所でいやな予感がしたけれども、以後も、どうもピンと来ない。
色々と表情は付けられていて、カンタービレ?...と言うよりも表情があまりに作為的に感じられて一向に楽しめない。
「ロッシーニ・クレッシェンド」の始まりも極端に音量を抑えているけれども、そこからのワクワクするような高揚感がない。
「定評あるアバドのロッシーニ」ということで期待して購入した一枚。ここは、ロンドン響を振った旧盤を購入すべきだったのか。かと言って、今さら買い直す気にもならず。
きっと相性が悪いんでしょう。嗚呼...。
<収録曲>
「セビリアの理髪師」序曲
「セミラーミデ」序曲
「アルジェのイタリア女」序曲
「ウィリアム・テル」序曲
「シンデレラ」序曲
「絹のはしご」序曲
「どろぼうかささぎ」序曲
【ピリオド楽器系】
▲ R・ノリントン指揮/ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ
1990年録音。
この録音が出た当時は殆ど話題にならなかったように思うけれども、とても新鮮に感じられる演奏だ。
特に管楽器は機能的には現代の楽器には敵わないので、そのぎこちなさ、一生懸命さ、必死感がとても面白い。
ホルンも、モダン楽器では何てことはないスケール(音階)も、ピッチやら音質がばらつき、相当に難しそうだ。
しかし、これをナチュラル・ホルンでの演奏ということを知らないで聴くと、「楽器壊れてるのか?(録音の前に修理出せよ)」と思うのではなかろうか。
「絹のはしご」のオーボエなど、よたよたとよろけながら走っているようで、そこが何ともユーモラスでおかしい。
この演奏を聴くと、モダン楽器で楽々と演奏されてしまうのが、逆に物足りなさを感じてしまうくらいだ。
<収録曲>
「絹のはしご」序曲
「ブルスキーノ氏」序曲
「アルジェのイタリア女」序曲
「セビリヤの理髪師」序曲
「泥棒かささぎ」序曲
「セミラーミデ」序曲
「ウィリアム・テル」序曲
▲ R・グッドマン指揮/ハノーヴァー・バンド
1994年録音。
金管や打楽器を開放的に(賑やかに)鳴らしているものの、それ以上のものを感じないのは、ヘンな言い方だけれども『上手い』からだろうか。
モダン・オケに近い雰囲気の演奏で、オリジナル楽器による機能的な面をあまり感じさせず、それを(意図的にかはいざ知らず)前面に出しているようなノリントン盤の面白さは無い。
<収録曲>
「絹のはしご」序曲
「アルジェのイタリア女」序曲
「セビリャの理髪師」序曲
「どろぼうかささぎ」序曲
「セミラーミデ」序曲
「コリントの包囲」序曲
「ウィリアム・テル」序曲
【映像】
▲ G・ショルティ指揮/シカゴ交響楽団
シカゴでのライブ録画。画質は決して良くはないのだけれども、演奏はとても素晴らしい。
音楽が引き締まっていて、ショルティにも奏者に任せるような余裕を感じる。
全盛期のシカゴ響のソリストの演奏が聴ける(観れる)のもうれしい。
「セミラーミデ」でのクレヴェンジャー率いるホルン軍団。トランペットは(全曲ではないけれども)ハーセス。
<収録曲>
「セビリアの理髪師」序曲
「アルジェのイタリア女」序曲
「絹のはしご」序曲
「コリントの包囲」序曲
「セミラーミデ」序曲
「泥棒かささぎ」序曲
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