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チャイコフスキー マンフレッド交響曲

music CD&DVD

 ■ P・チャイコフスキー作曲/マンフレッド交響曲

 曲そのものが冗長なところもあるので、やっぱりロシア系の指揮者、オケによる演奏が魅力的だ。

 cd

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 ▲ G・ロジェストヴェンスキー指揮/モスクワ放送交響楽団

 1966年8月18日、ロンドンでのライブ録音。

 通常版による演奏。ただしオルガン・パートは省略。第4楽章に何箇所かカット有。

 ロジェストヴェンスキーのライブ録音...何となく不安が頭をよぎるけれども、それはすぐに拭い去られる。

 冒頭から緊張感のある音楽、アンサンブルもしっかりとしている。第2楽章の木管楽器の速いパッセージも見事に吹けている。

 上手なオケを相手にするとこういう演奏ができるのだ(文化省オケとは大違い...)。

 金管楽器、特にホルンとトロンボーンのいかにもロシア臭のする音も嬉しい。

 第1楽章のコーダは阿鼻叫喚、最後はスコアに無いドラまで鳴り、そして恐るべしティンパニのロールとクレッシェンド。

 第4楽章の異様なテンションには「もう好きにして!」と言いたくなる。

 しかし、残念なのが最後のオルガンが入っていないこと。

 海外公演で奏者(楽器)が用意できなかったのだろうか。管楽器がいるので音が欠けることはないけれど、ここはやっぱりオルガンに入ってほしい。

 しかし、ここら辺の大らかさ(アバウトさ)というのも、この指揮者らしさかもしれない。


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 ▲ E・スヴェトラーノフ指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 1989年3月4日のライブ録音(拍手付き)。

 唯一の共演...この時はそれを知る由もなかったろうけれども、この曲(勝負曲?)を選んだのは、指揮者の意気込みの表れか。

 いわゆる「原典版」。第4楽章のエンディングを第1楽章と同じ物に差し替え(オルガンは入らない)、そのエンディングでは銅鑼がガンガン鳴る。第4楽章途中にカット有。

 そして、ベルリン・フィルのパワー全開、ド迫力の演奏。第4楽章の猛烈なテンポに食らいついてくるのは、さすがBPO。また、弦楽器の繊細な味わいは、ロシアのオケでは聴けない。

 しかし...しかし...1992年の来日公演のライブ録音盤(CANYON)はこれを大きく凌駕するのだ。


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 ▲ E・スヴェトラーノフ指揮/ロシア国立交響楽団

 1992年10月2日、サントリーホールでのライブ録音。

  「原典版」による演奏とのことで、終楽章コーダが第1楽章と同じ物に挿し替えられています(なのでオルガンは入らない)。また終楽章に大きなカットがあり、これが版によるものなのか、指揮者の判断によるものかは不明。

 そして、この演奏。第3楽章までは割と冷静に聴くことが出来るけれども、終楽章に入るととんでもないことになる。

 マイクが拾う指揮者の声は、旋律を一緒に歌うのでも、オケに気合を入れるのでもない、何かに取り憑かれている様な唸(うな)り声。

 それがオケに乗り移ったのか、音楽のテンションが一気に上がり、猛突進を開始。低弦、打楽器の迫力は尋常ではなく、それらが全力疾走でこちらに向かってくる。

 そしてコーダへ入ると、抑制されていたものが全て解き放たれ(感情的にも音量的にも)、ここで聴き手は指揮者、オケと一緒にひたすら涙を流すしかない。

 唖然・呆然のエンディング。「通常版」にはない銅鑼がガンガン鳴り響く。そしてMVPはティンパニ奏者か。

 もう半端ではない。こんなにすごい演奏が我が国で行われていたとは...。

 この演奏に比べれば他の録音はあくまで「参考音源」の域を出ない。

 心の準備をして聴くべし!!


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 ▲ V・フェドセーエフ指揮/モスクワ放送交響楽団(CD)

 1999年のライブ録音(拍手入り)。RELEF盤。

 CDとDVDでは使用している楽譜の版が異なっていて、こちらはオルガンが加わった通常版での演奏。第4楽章にカット有(206~302小節)。

 第1楽章の冒頭から速めのテンポで、前のめりに進んでいく。ちょっと落ちつかない。

 ただ、途中の "Andante" では大きくテンポを落として、(バス・クラリネットのソロなど)じっくりと表現する。

 弦楽器のユニゾンによる「マンフレッドの主題」に始まるコーダ。弦のサウンドはさすが。ちょっと粗いけれども金管も頑張り、一気に盛り上がる。

 しかし、最後の最後、"Poco piu animato" の部分で、突然急激にテンポアップ、あれよあれよと言う間に終わってしまう。

 「マエストロ、さすがにそれは...」

 そもそも、指定は "poco(少しだけ)" なのに...このすかし方もフェドセーエフらしい。

 終楽章はテンポ感が活きていて、音楽が停滞しないし、ドカドカと重量感のあるティンパニの存在も大きい。

 途中、ばっさりカットしているけれども、元々あんまり面白くない部分なので、これはOK。

 そして、ティンパニの強烈な打ち込みに始まるコーダは第1楽章と同様。オルガンが加わった終結部も決して大袈裟にはならない。


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 ▲ B・ハイティンク指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

 1979年録音。非ロシア系の録音としていいのがこれ。

 オルガン入り、カット無しの『全曲盤』。

 下手すると大袈裟になりがちなこの曲をしっかりとまとめている演奏。冗長な終楽章も、カットしたりスコアを改変せずとも聴かせてくれる。


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 ▲ R・シャイー指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

 1987年録音。

 譜面をきちんと演奏しているのだけれども...「f(フォルテ)」が3つも4つも付けられている曲の演奏としては、ソフトで上品すぎる。


 【映像】

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 ▲ V・フェドセーエフ指揮/モスクワ放送交響楽団(DVD)

 こちらは映像版。2009年ウィーンでのライブ録画。

 いわゆる「原典版」による演奏で、第4楽章のコーダに第1楽章のエンディングと同じものをくっつけている(オルガンは入らない)。また、第4楽章にカット有。

 そうそう演奏される機会のある曲ではないけれども、その曲を完全に自分たちのレパートリーとしていて、ありふれた言い方だけれども『円熟』という表現がピッタリとくる。

 特に中間2つの楽章。ゆったりとしたテンポで落ち着いて音楽を進め、第2楽章のスケルツォもただ慌ただしいだけではなく余裕を感じるし、中間部の情感もとてもいい。

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 ちなみに、このオケのファンとしは、気合の入ったタンバリン奏者(一打入魂!)が何度もアップになるのが嬉しい。

 例の来日公演の「レズギンカ」でドラムを叩いていた、あの方です。お歳は召されましたが...。

 カップリングはミャスコフスキー作曲のチェロ協奏曲。


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 ▲ Y・テミルカーノフ指揮/サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー管弦楽団

 1992年。ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホールでのライブ録画。オルガン無しのバージョン。

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 まだ50代の若々しいテミルカーノフ。指揮棒を持たない、けれん味たっぷりの指揮ぶりはストコフスキーを思わせるところもある(特にアンコールで演奏された「ニムロッド」など)。

 ムラヴィンスキーの後、このオケの音楽監督になってまだ数年。オケのサウンドはいにしえのロシア(ソビエト)のオケ香りをただよわせているのが嬉しい。

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