シベリウス 交響詩「フィンランディア」
CD
■ J・シベリウス作曲/交響詩「フィンランディア」
▲ J・バルビローリ指揮/ハレ管弦楽団
1966年録音。バルビローリ&ハレ管による交響曲7曲と管弦楽曲集。必携の1セット。
私が最初にこの曲を聴いたのがカラヤン&BPO盤(DGの旧盤)。
当時の『17センチLP盤』の片面(裏面は覚えてない)。これはこれで気に入っていて、「カッコイイ!」と何回も繰り返し聴いていた。
この曲のイメージを変えてくれたのが、もう少し大人になってから聴いた、このバルビローリ盤だった。
冒頭の金管のコラールは武骨とでも言うか、荒々しく強奏される。
一つ一つ、すべての音に全身全霊をささげるように、外面的な演出や上手さとは無縁(金管のリズムの入りで乱れたりもする)。
この曲とがっぷり組み合い、真正面から気持でぶつかっていく。
決してカッコよくはないし、今となっては時代遅れかもしれないけれど、私はこういう音楽が好きだ。
▲ H・カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1984年録音。グラモフォンの新録音盤。
人によって好みは様々だろうけれど、1964年録音盤より断然いいです。
聴き物はやはり遅めのテンポで進められる前半部分。
パワーとテクニックだけを聴かせる1964年盤とは違い、より自然な音楽を感じることができる。
でも、やっぱり上手...冒頭、あれだけ強奏してもハーモニーが崩れないのだから。
▲ P・ベルグルンド指揮/ボーンマス交響楽団
1972年録音。
まずは冒頭の柔らかい響きに驚かされる。
この曲、教科書的に言えば「ロシアの圧政に苦しむフィンランド」「愛国心を持って立ち上がるフィンランド国民」「美しいフィンランドの自然への賛美」等々。
でも、このベルグルンドの演奏はそういった大上段に構えたものではない、もっと私的な、一人の人間の悲しみ、苦しみや喜び、そういった感情を暖かく表現した音楽に聴こえるのだ。
後のヘルシンキ・フィルとの録音よりも、音楽の流れがより自然なこちらを取ります。
▲ E・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団
1968年録音。
合唱入りの録音もあるようだけれども、これは合唱無し。
そして、これがとてもいいのだ。
いわゆる北欧系の演奏とは趣きが異なるけれど、豊かな響きの中に人間的な感情、ドラマを感じる。
後半の有名な旋律の部分、最後はヴァイオリンが楽譜よりも1オクターブ上げて、朗々と歌い上げるのだ。
エンディングにはシンバルも加わり、「シベリウスとしては・・・」と言う人もいるかもしれない。
しかし、この演奏を聴いて、心を動かされずにはいられない。
「20世紀作品集」の中の1枚...でも、「フィンランディア」って20世紀?
▲ E・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団
1959年録音。モルモン会堂聖歌隊による合唱付き。
冒頭、トロンボーンに続くトランペットがストレートな荒々しい音で入ってくるのに驚く。
ロシアの圧政による苦悩、独立運動に立ち上がる民衆を鼓舞する行進曲、そして祖国を讃える大合唱。
合唱が入ったことにより、極めて明確にこの音楽のストーリーが浮き上がってくる。
シベリウスの原曲に拘るならば異質な演奏かもしれないけれども、逆にオーマンディだからこそできた演奏とも言えるのではなかろうか。
▲ V・フェドセーエフ指揮/モスクワ放送交響楽団
1989年録音。言わば『反ロシア』の曲の、ロシアの指揮者、オケによる録音。
荒々しい金管楽器による冒頭からの前半部分、金管のリズムも重々しい。
独特なのは続くアレグロ部分で、ここでもこれまでの重苦しさを引き継いでいて、軽やかさや、行進曲風の躍動感は皆無。レガートで高らかに鳴らすホルン。かなり独特の音楽を創り上げている。
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