サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付き」
CD
■ C・サン=サーンス作曲/交響曲第3番「オルガン付き」
▲ E・アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団
1962年録音。
第1楽章導入部から敬虔な雰囲気が漂う。そして、主部へ入ってからの第1主題、16分音符の主題がキチンと譜面通りに演奏される。
しかし、速いテンポで、雰囲気だけで音を刻んでいるような演奏の何と多いことか。
LP時代から「録音がいい」と話題になっていた録音だけれども、決してそれだけではない。
この曲が、派手なパフォーマンスを披露するだけのショウ・ピースではない、ということを再認識させてくれる演奏だ。
ちなみに、LPでは第1楽章が終わったところで盤を裏返していたのだけれども、このCDでは第1楽章最後のオルガンの和音から殆ど間を置かずに第2楽章が始まる。それが非常に鮮やかで効果的だ。
LP世代からすれば、これこそCDの恩恵に思える。
モノラルだけど、カップリングの「死の舞踏」も素晴らしい演奏。シャブリエはステレオ録音の方を。
▲ E・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団
1962年録音。オルガンはパワー・ビッグス。
ゴージャスなサウンドを繰り広げるかと思いきや、決してそのようなことはなく、むしろ外面的な効果をアピールことは抑えされていて、昨今の演奏に比べると地味にすら感じる。
でも、この曲は決して派手な演奏効果を競うショー・ピースではないのではなかろうか。
第1部の前半部、ここではオルガンもピアノも加わることなく、内省的な印象を受ける。オルガンが加わる後半部は『祈り』の音楽。オルガンは控え目にサポート役に徹する。
メロディがクラリネット、ホルン、トロンボーンのユニゾンで演奏される部分があるけれど、このサウンド感は見事で、「英雄行進曲」でのトロンボーンの素晴らしいソロを思い出す。
第2部はハ短調のスケルツォを経て、堂々たるオルガンの和音で始まる後半部では第1部の祈りが輝かしいハ長調へと昇華されるのだ。
この曲のメイン・テーマ(循環主題)は、グレゴリオ聖歌の「怒りの日」がベースになっていて、そこからも単に華やかさ一方の音楽ではないことを感じさせる。
このオーマンディ盤は、これまでに聴いた録音の中でも最高の演奏の一つ。
▲ C・デュトワ指揮/モントリオール交響楽団
1982年録音。
とにもかくにも素晴らしいサウンド。繊細で、丁寧な音楽作り。全く持って申し分なし。
その昔、この曲をバレンボイム&パリ管のレコードで聴いた私の知人が、「こんな騒々しい曲、聴いてられるか!」と憤慨していたけれども、このデュトワ盤を聴いていれば、そんな感想は持たなかったのではなろうか。
カップリングは「動物の謝肉祭」(ロンドン・シンフォニエッタ)。こちらは今一つ。あくまで、交響曲を聴くCD。
▲ M・ヤンソンス指揮/オスロ・フィルハーモニー管弦楽団
W・マーシャルのオルガン。
オーケストラは1994年1月、オスロでの録音。オルガンは同年3月、ルーアン(フランス)での録音。
抑制され、良くコントロールされた素晴らしい演奏。落ち着いた貫禄すら感じ、この指揮者の最近の活躍する姿が目に浮かんでくる。
しかし...第2楽章後半でオルガンが鳴り響くと、せっかくの端正な音楽に、けばけばしい極彩色の絵の具をぶちまけたような、そのサウンドにびっくりする。
ヤンソンスの音楽とは完全に異質(水と油)なのだ。
オルガンは別録音のようだけれども、ヤンソンス自身はこんな『音』を望んでいたのだろうか。
このマーシャルの起用は、(当時の)ヤンソンスでは『売れない』というレコード会社の判断なのかもしれないけれど 当時は中堅どころのヤンソンス、レコード会社の意向に押し切られたような気がしてならない。
無名でもいい、普通のオルガン奏者で録音してくれていれば、どれだけ素晴らしい演奏になったことか。
▲ P・パレー指揮/デトロイト交響楽団
1957年録音。
いわゆるフランス的な雰囲気(繊細さ、優雅さ)は薄い。
ガッシリと骨太の、引き締まった強靭な音楽。第2楽章前半の前進力。リズムも踏みしめるような重みがある。
デュトワとは違ったタイプの魅力がある演奏。
▲ J・レヴァイン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
オルガンはS・プレストン。1986年録音
スケール感のある、ベルリン・フィルのパワーを存分に生かした演奏。
▲ J・フルネ指揮/東京都交響楽団
2002年4月20日、東京芸術劇場でのライブ録音。
落ち着いたテンポ設定のおかげで、第1楽章前半部の細かい16分音符の音形も決して雰囲気だけに流されないし、第2楽章前半部も余裕を持った音楽になっている。
第1楽章後半部の静かな祈り。
第2楽章後半部は決して華美にはならず、ピアノ連弾のアルペジオを伴った循環主題によるコラールは天上の音楽にも聴こえる。
この曲、第2楽章でオルガンが入ってくると様相が一変。聴き終わってみると「オルガン協奏曲」の印象しか残らない場合も多々ある(例えばヤンソンス盤とか)。
でも、この演奏ではオルガンはあくまでオーケストラの中の1つのパート(ピアノと同様に)。それは主役ではないし、それだけが突出することはない。あくまでも、サン=サーンスの第3交響曲なのだ。
ちなみに、同じコンビによる2004年のプロムナード・コンサートでの演奏は、私にとっては生涯忘れられないであろう感動的な演奏でした。
その時のものではないにしろ、このライブ録音が聴けるのはとても嬉しいです。
以下はそのコンサートの感想です。
指揮台に立っているのは90歳を過ぎた老人、棒だって的確とは言えないだろう。しかし、どうしてこんな『音』が出てくるのか。今日は、このオーケストラにとっても、後々語り草となるような演奏会だったと思う。
後半のサン=サーンスはあまりに素晴らしかった。この曲にありがちな「派手なだけで中身が無い」...そういう演奏とは全くレベルが違う。
第1楽章後半、パイプ・オルガンのハーモニーの上に弦楽器がユニゾンで主題を演奏すると、ステージから神々しいばかりの光が発せられたようにすら感じたものだ。
第2楽章後半部のコーダでテンポアップし、途中のコラール風の部分で大きくテンポを落とす。そして堂々たるエンディングへ。
最後の拍手は大きかったけれど熱狂的というのとは違う。この曲が、こんなに心にずっしりと響くとは...もう最初で最後かもしれない。
長年培ってきた、この指揮者とオーケストラの関係、その集大成のような素晴らしいコンサートでした。
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