コダーイ ハーリ・ヤーノシュ
CD&DVD
■ Z・コダーイ作曲/オペラ「ハーリ・ヤーノシュ」
先日放送された某テレビ番組(「ららら…」)では、最初から「組曲」として作曲されたように言っていたけれども、実際は同名のオペラに基づく演奏会用の組曲。
1.前奏曲、おとぎ話は始まる
2.ウィーンの音楽時計
3.歌
4.戦争とナポレオンの敗北
5.間奏曲
6.皇帝と廷臣たちの入場
第2曲と第4曲は管打楽器のみによる曲。第3曲は登場人物による歌(二重唱)を管弦楽に編曲したもの。
【組曲】
▲ I・ケルテス指揮/ロンドン交響楽団
1964年録音。やっぱり、「ハーリ・ヤーノシュ」と言えばこれ。
まだ30代のケルテス。セルやオーマンディのような熟練はないにしても、「若さ」をストレートにぶつけた熱い演奏は魅力的だ。
ケルテスはオペラ版も録音しています(下参照)。
▲ G・セル指揮/クリーヴランド管弦楽団
1969年録音。LP時代から定評のある録音で、それに異論は無し。
何と言っても素晴らしいのは第3曲の「歌」で、本当に各楽器が自在に『歌う』。この曲に関してはこれ以上の演奏は聴いたことがない。
言ってもセルなので羽目は外さないけれども(サキソフォンのソロなど)、カラフルで賑やかな「音楽時計」、速めのテンポが熱い「間奏曲」、「ナポレオンの敗北」のトロンボーンのリズムはとぼけた感じがおかしい。
「皇帝と廷臣の入場」では、ラスト3小節で突然テンポを落として、最後の大太鼓の一撃を「ドン!」と強調する。
LPのジャケットと同じイラストが懐かしいです。
▲ G・ショルティ指揮/シカゴ交響楽団
1993年のライブ録音。ショルティ氏、80歳を超えてのライブ録音。
オケは上手いし、金管も鳴っている。で、ガチガチの直球勝負かと思いきや、意外に余裕、遊び心が感じられる。
第4曲の「戦争とナポレオンの敗北」では、低音金管を(おそらく意図的に)弱く演奏させ、これが脱力感があって妙におかしい。
また、小太鼓を響き線を外して演奏させているのだけれども、下記のライブでは普通に演奏させていて、まさか奏者のミスということは無いと思うのだけど...。
「間奏曲」中間部の管楽器の自在なソロ、「歌」も十分に歌心を感じる。
「ハンガリー名曲集」。ショルティさん、満面の笑顔(楽しそう!)。
収録されているリスト作曲の「ハンガリー狂詩曲第2番」が珍しい編曲です(他で聴いたことがありません)。
▲ C・デュトワ指揮/モントリオール交響楽団
1994年録音。
「戦争とナポレオンの敗北」でも戯画的な面白さを強調することはなく、サックスのソロは表情たっぷりであるけれども、楽譜の範囲内。
「音楽時計」はカラフルだけれど、「間奏曲」のリズムはソフトでスマート。「歌」の各楽器のソロはさすがに上手い。
セルやケルテスなどのハンガリー系の演奏とはちょっと違う、あくまで華やかでカラフルなオーケストラ作品という演奏。
▲ E・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団
1975年録音。カラフル、かつ、ド派手にオケを鳴らす。
この手の曲を『面白く』聴かせるのは得意とするところで、4曲目の「戦争とナポレオンの敗北」でのサキソフォンのソロの表情は大袈裟だし、さらにはチューバとバス・トロンボーンのブリブリ感。
単に表面的なものではなく、「間奏曲」など、根っこに音楽の持っている民族性への共感があるようにも感じる。
カップリングは「キージェ中尉」と「火の鳥」組曲(1919年版)。
▲ N・ヤルヴィ指揮/シカゴ交響楽団
1990年録音。同じオケをショルティが振った録音とは違って、とてもリラックスした雰囲気。
4曲目の「戦争とナポレオンの敗北」は、金管は思いっきり鳴っているけれども、個々の奏者が自由に楽しみながら吹いているような感があって面白い。低音金管も、無理して鳴らしている感が全くない余裕のプレイ。
ただ、冒頭の「くしゃみ」から全体的にアッサリとした味付けで、正直ちょっと物足りない
【映像(組曲)】
▲ G・ショルティ指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン・フィルとのライブ映像。1995年の収録。シカゴ響とのCDの2年後、亡くなる2年前。
生真面目な感じだけれども、演奏はとても素晴らしく、「間奏曲」は大いに盛り上がって、まだ途中なのに演奏後に大きな拍手が起きる。
指揮者の正面に陣取るツィンバロンもしっかり映っています。
【組曲+α】
▲ イヴァン・フィッシャー指揮/ブダペスト祝祭管弦楽団
1998年録音。この演奏がとてもイイ。
テンポ、表情にメリハリがあり、「戦争とナポレオンの敗北」の低音金管も、いかにも威張りくさってふんぞり返っている様な滑稽さがあって面白い。
組曲以外に、オペラのナンバーから5曲が収録されています(いずれもオケだけの短い曲)。
【オペラ】
▲ I・ケルテス指揮/ロンドン交響楽団
1968年録音。オリジナルのオペラ版。
とにかく、組曲版に含まれていない(歌やコーラスの)ナンバーがとても面白いので、一聴の価値はあり。
組曲版の第3曲の「歌」のオリジナルである二重唱や、エキサイティングな第3幕の兵士の合唱などは特に聴きもの。
前者などは、これを聴いてしまうと、オケだけによる組曲版はカラオケのようで、何とも物足りなく感じてしまう。
また、兵士の合唱は民族色も濃く大いに盛り上がり、思わず立ち上がって一緒に歌いたくなるような高揚感がある。
この2曲を聴くためにだけでも、全曲盤の価値はあります。
フィナーレは「歌」の旋律が高らかに奏され、そこに「間奏曲」の主題が重なり、最後は余韻を残してこのオペラを閉じる。
イギリスの俳優ピーター・ユスチノフが語りと登場人物のセリフを担当。効果音も色々と入って、滑稽な雰囲気が強いので好みは分かれるかも...。
カップリングは「孔雀変奏曲」と「ハンガリー詩編」。
| 固定リンク
コメント