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エルガー 行進曲「威風堂々」

CD

 ■ E・エルガー作曲/行進曲「威風堂々」(全5曲)

 初演年は以下の通り。

  第1番 1901年
  第2番 1901年
  第3番 1904年
  第4番 1907年
  第5番 1930年

 5曲の中では第1番が飛びぬけて有名で、何度となく聴き、(吹奏楽で)演奏してきたので、名曲にしてもやや食傷気味ではある。

 第2番は第1番と同時に初演された曲。知名度はきわめて低いものの、シンプルではあるけれども、落ち着いた風格を感じる名曲。

 なお、この曲はD.C.して全体を繰り返すように指示があるけれど、その繰り返しをカットしている録音もあって(プレヴィン盤とかボールト盤など)、演奏時間が3分程度のものはカットしているとみていい(個人的にはリピートしてほしい)。

 第3番は堂々とした曲ではあるけれど、ちょっと凝り過ぎのようにも感じる。

 第4番はトリオが類似していることもあってか、第1番に次いで有名な曲。主部は軍隊風な勇ましさよりも、優雅さ・品のよさを感じ、こちらの方が好きな人も結構いるのではなかろうか。

 最後の第5番は晩年の曲で、主部は5曲中唯一の8分の6拍子。何と言っても、どことなく哀愁を感じさせるトリオが素晴らしく魅力的な名曲。

 

 【全曲】

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 ▲ A・プレヴィン指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

 1985年録音。

 プレヴィンは割とアッサリとまとめていて、思い入れや、スケール感のある演奏を期待する人には、ちょっと物足りないかもしれない。でも、しつこくないので、私は好きだ。

 カップリングは「エニグマ変奏曲」。


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 ▲ J・ジャッド指揮/ニュージーランド交響楽団

 2003年録音。「エルガー/行進曲集」というアルバムに収録されている。

 弦楽器は対抗配置。重苦しさの無い、爽やかで軽快な演奏。有名な第1番、第4番のトリオも優雅。

 中でも、速目のテンポで進められる第1番、第2番、第4番がいい。ただ、金管楽器が今ひとつ大人しく、第3番、第5番などはもっと力強さがほしい。

 「威風堂々」だけに限れば、「わざわざこの録音を...」とは思うけれども、このアルバムの売りは「威風堂々」以外の珍しいエルガー作品。

 収録曲は以下の通り(画像クリックで拡大します)。

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 あまり知られていないエルガー作品をいろいろ聴いてみたい方は是非。


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 ▲ J・バルビローリ指揮/フィルハーモニア管弦楽団、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

 第1番、第4番はフィルハーモニア管(1962年録音)、その他の3曲はニュー・フィルハーモニア管(1966年録音)。

 有名な2曲をまず録音、時間をおいて他の3曲が録音されて『全曲盤』になったもの。

 何はともあれ、『定盤その1』。
 

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 ▲ A・ボールト指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 1976年録音。バルビローリ盤と共に『定盤その2』。

 普段から演奏してる曲をそのまま演奏しているような、いい意味で力が抜けたリラックスした雰囲気がある。


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 ▲ V・アシュケナージ指揮/シドニー交響楽団

 2008年録音。

 第1~5番だけではなく、作曲者のスケッチからA・ペインが補筆した「第6番」も収録されている。

 で、やっぱり、この第6番が注目だけれども、演奏時間は8分弱と結構長い。

 ト短調。出だしは同じ短調の第3番に似ていて、曲調(テンポ)が頻繁に変わるので『行進曲』と言うより劇音楽のような感じがする。

 他の5曲については、変な演出を加えていないのでそれなりに楽しめるけれど(中ではリピートも楽譜通り行なった第2番がいい)、逆に特別な魅力があるかと言うと、そうでもない。

 国内盤で3,000円と値段も高く、カップリングが「弦楽セレナーデ」のみで収録時間50分弱。

 アシュケナージのファン、あるいは、第6番を聴いてみたい人、「威風堂々」蒐集家向け。


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 ▲ G・ショルティ指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 1977年録音。

 第1番、第2番がいい。思いっ切り力が入ったダイナミックな演奏で、スケールも大きく、「行進曲(Military march)」という域を完全に超えている。テンポを大きく落とした第1番のトリオ(1回目)も素晴らしい。

 問題なのは第3番以後の3曲。

 どういうわけかティンパニが入っていない(第5番のエンディングなど、完全にソロになる部分を除いて)。

 例えば、第4番の冒頭のティンパニ、エルガーは "with the stick" とわざわざ指定しているくらいで、これをカットしてしまうのは致命的だし、他の曲でも本来入るべき音が聞こえてこないのは違和感が大きい。

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 これがショルティの意図的な『解釈』とは到底思えないので、何らかの理由でティンパニ奏者が手配できなかった、というくらいしか理由は思いつかない。

 人出の足りないアマチュア楽団ならともかく、ショルティ&ロンドン・フィルという『銘柄』の録音(商品)としては「?」が付くし、ショルティもよくOKを出した(妥協した?)ものだと思う。

 カップリングは「コケイン序曲」と「エニグマ変奏曲」(この曲だけシカゴ響)。


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 ▲ A・デイヴィス指揮/BBCフィルハーモニック

 2011年録音。いかにも品の良い、明るく軽快な音楽。

 第1番や第4番も決して大袈裟にならない節度があるし、まとまりにくい第3番も快調。

 第2番はスコア通りにリピート、第1番ではオルガンが加わる。

 指揮者の個性で聴かせる演奏ではないけれども、『音楽』を楽しむには、まず第一にオススメできる。

 カップリングは「チェロ協奏曲」「序奏とアレグロ」「エレジー」というエルガー名曲集


 【抜粋盤】

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 ▲ D・ジンマン指揮/ボルティモア交響楽団

 1991年録音。第1番と第2番。

 第2番は有名な第1番と一緒に初演されたいわば『兄弟作』(作品番号も同じ)。しかし、曲想は全く違い、よりシンプルで、より『行進曲』らしい。

 録音はイギリスのオケによるものが多いけれども、これは珍しくアメリカのオケによる録音。

 第1番も収録されているけれど、第2番はキビキビとしてアッサリとした演奏がこの曲に合っていて、サウンドもバランスよくキッチリまとめられている。

 曲名から来る先入観念を無くして1曲のコンサート・マーチとして聴けば素直に良い曲だし、地味ではあるけれど吹奏楽などでももっと取り上げて欲しい曲。

 カップリングは「交響曲第1番」。


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 ▲ B・ハイティンク指揮/フィルハーモニア管弦楽団

 第5番のみ1曲の録音だけれども、堂々としたシンフォニックな演奏。

 5曲中唯一の8分の6拍子(トリオは4分の2)。主部はハ長調、1回目のトリオは変イ長調。この部分は第1交響曲のメイン・テーマと雰囲気がよく似ている(調性も同じ)。

 作曲年代を見ると、他の4曲とは1曲だけ(20年以上)離れていて、最愛の奥様が1920年に亡くなり、自身も70歳を過ぎてからの音楽。それを思うと、トリオのどこか寂しげな佇まいも分かるような気がする。

 第1、4番に食傷気味の人は是非。


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 ▲ H・ケーゲル指揮/ドレスデン・フィルハーモニー

 有名な第1番のみ。しかしながら、数多いこの曲の録音の中でも、『怪演』というか『奇演』というような類の演奏。上級者向け。

 猛烈な勢いの導入からアラルガンドしての主部は、スコアに無いティンパニの8分音符を追加、そのリズムを強調した、重々しくも勇ましい第1主題の縦割りのリズムはドイツ・マーチ。

 金管楽器のファンファーレ音形で大きくリタルダンドして、再び猛スピードの導入部の再現へ。

 ただ、このテンポの変化は一般的にはここまで極端には行わないけれども、スコアに指示されていることでもある(導入部再現の前を除いて)。

 トリオのトゥッティ部分では、トランペットの強奏によるガッシリした分厚い響き。ここでもスネア・ドラムのリズムを強調、おまけにヴァイオリンによるメロディを1オクターブ上げて演奏させている。

 私たちの様なアマチュアが演奏するときは、「イギリス音楽かくあるべし・・・」のようなところ(ウンチク)から入ったりするけれども、そんなの一切お構いなしに、自分たちの側(スタイル)に音楽を引きずり込む。

 様々な演奏家による「クラシック・マーチ集」に収録。有名曲もあるけれども、選曲は相当にシブい。ちなみに、ケーゲルはこの1曲だけ。


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 ▲ G・シノーポリ指揮/フィルハーモニア管弦楽団

 1990年録音。「交響曲第1番」のカップリングで、第1番、第4番の2曲のみの収録。

 第1番がとてもイイ。ティンパニの打ち込みなど、メリハリの利いた主部から、大きくテンポを落とした有名なトリオ。ここで音楽の様相が一変するコントラスト。後半部のトリオの再現ではスコア通りにオルガンが加わる。

 第4番も同様のアプローチであるけれど(トリオでテンポを落とす)、元々の曲想によるのか、ちょっと大げさな感じがする。

 そもそも、第4番のトリオには「L'istesso tempo(同じテンポで)」の指定があり、ここは、テンポを大きく変えない方が自然だ。


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 ▲ S・ラトル指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 第4番のみ。2002年録音。

 ベルリン・フィルの歴代音楽監督の録音を集めたボックス・セットに付いていた、小品を録音した「特典盤」。それにケチ付けるのも反則かもしれないけれど...。

 オケはパワフルに鳴っているし、強弱や音符のニュアンスの指定などは見事に再現され、「楽譜を演奏する」という点では申し分ない。

 しかし「それだけ」では、音楽は何と詰まらないことか...ということを知ることができる録音(ラトルは嫌いな指揮者ではないけれども)。

 オケがバーミンガム市響(ラトルの指揮でエルガー作品を録音している)であれば、また違った演奏になったのかもしれない。

 【収録曲】
  「キャンディード」序曲(バーンスタイン)
  スラヴ舞曲第1番、第3番(ドヴォルザーク)
  ハンガリー舞曲第3番(ブラームス)
  キエフの大門(ムソルグスキー/ラヴェル)
  ジムノペディ第3番(サティ/ドビュッシー)
  妖精の国(ラヴェル)
  威風堂々第4番(エルガー)

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