プロコフィエフ ピーターと狼
CD
■ S・プロコフィエフ作曲/ピーターと狼
ナレーション付の音楽物語。
登場人物に決められたモチーフ(メロディ)を与えて、かつそれを特定の楽器に割り当てることにより、『楽器紹介』にもなっているという仕組み。
子供向けとはいえ、音楽そのものは紛れも無いプロコフィエフのもの。
ピーターの主題はハ長調に始まり、途中からハーモニーが揺らいで、変ホ長調へ転調する。フルートによる「小鳥」のテーマも、そのまま「フルート・ソナタ」にでも流用できそうなもの。
最後は登場人物総出による凱旋行進曲。
狼に食べられてしまったために物語の前半で出番が無くなってしまったアヒル君は、「狼が生きたまま飲み込んでしまった」というオチで、最後の最後に登場。エンディング前に見事な役割を演じる。
「青少年のための管弦楽入門」とは違ってナレーション無しでは成立しない曲なので、やっぱりナレーションが印象を大きく左右する。
【通常版】
▲ A・プレヴィン指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団。1985年録音。
プレヴィンによる語り(英語)は変な芝居っ気がない、落ち着いて上品な、また暖かい雰囲気。
音楽の方も同様。物語の描写よりも、まずはプロコフィエフの音楽が前面に出ている感じがする。
カップリングは「青少年のための管弦楽入門」(こちらはナレーション無し)と、オペラ「グロリアーナ」から「宮廷舞曲」。
▲ J・ランチベリー指揮/メルボルン交響楽団
1997年録音。
有名指揮者の録音が並ぶ中、あまり注目されてはいないようだけれど、この演奏がとても面白いのだ。
ランチベリーはバレエ指揮者であることもあってか、素晴らしく見事に物語を描写していて、その場面場面の情景が目に見えてくるようだ。
ナレーションのデイム・エドナ・エヴァレッジは『女装』キャラ(女性の声色)だけれど、決して悪ふざけしているわけではないので(見た目はともかく)、奇異な感じ(キワモノ感)はありません。
▲ M・プラッソン指揮/トゥールーズ・キャピタル管弦楽団
1992年録音。
ランベール・ウィルソンのナレーション(フランス語)。
ナレーションがフランス語だと、一気にフランス版のオシャレな「ピエールと狼」になる。
演奏もナレーションの雰囲気に合っていて、全く別の曲のよう。面白い!
カップリングは「動物の謝肉祭」。
▲ E・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団
1957年録音。
ナレーション(英語)はシリル・リチャード。
さすがオーマンディ、文句無しの面白さ。理屈抜きに楽しんで聴ける『音楽物語』として、申し分のない演奏。
【古楽器版】
▲ ジャック・ペシ指揮/新パリ音楽院アンサンブル
レニー・ヘンリーのナレーション(英語)。
プロコフィエフのオリジナルとは異なり、登場人物が様々な伝統楽器(古楽器)で演奏される。
小鳥 シェン(中国版笙)
アヒル ティプル(オーボエの前身)
猫 オーボエ・ダモーレ
お爺さん セルパン
狼 アコーディオン
猟師 コルネット、サックバット
猟師の鉄砲 大太鼓、スチールドラム
ピーター 弦楽合奏
ピーターだけはオリジナル通りの弦楽合奏。
とにかく、各楽器の『音』の面白さ。
特にアヒルは高音域が苦しそうで、終始悲鳴を上げているようで、随所で存在感を出している。特に狼に食べられてしまうところは絶品(名演技)。
お爺さんのセルパンもピッチがアヤシク、ヨタヨタとしている。
ちなみに、コルネットは古楽器のコルネットで、現在のトランペット似の楽器ではありません。
http://orchestra.musicinfo.co.jp/~mvsic/instruments/cornett.html
ナレーションのレニー・ヘンリーはイギリスのコメディアンだそうで、声色を使ったりと、子供が聞いたら喜びそうな感じ(いわゆる「面白いお兄さん」)。
【番外編】
その昔、TV「題名のない音楽会」で放送された、井上道義版「ピーターと狼」。
途中までは確かに面白いのだけれども...。
このお話のエンディング、狼に食べられてしまったアヒル君、実は狼のお腹の中で生きていて、その狼も猟師に撃たれず、生け捕りにされて動物園へと送られる。
この手のお話(民話・童話)としては、最適な解が提示されていると思う。
にもかかわらず、「狼にだって人権(!?)はある」とか、「人間の方が沢山生き物を殺して食べているじゃないか」とか...その後に何かオチがあるわけでもなく、問題提起にしても何だか『場違い』感を否めなかった。
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