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チャイコフスキー 1812年

CD

 ■ チャイコフスキー作曲/序曲「1812年」

 

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 ▲ L・ストコフスキー指揮/ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団

 ウェールズ・ナショナル・オペラ合唱団、グレナディア・ガーズ軍楽隊が加わる。

 スコトフスキーのことだから何かやってくるだろう...とは予想が付くけれど、その楽しみをとっておきたい人は、以下は読まないことをオススメします。

 冒頭、ヴィオラとチェロで歌われるの聖歌のニュアンスの何と美しいことか。ここを聴くだけで、ストコフスキーが只者でないことが分かる。

 以後、意外に譜面通りに曲は進行していく。一部、短いカットはあるけれども、大勢に影響は無い。

 それでも、弦による第2主題の歌わせ方、その後の木管による舞曲風音楽の伴奏の生かし方などは、他の指揮者からは聴くことができない。

 最後の戦闘の場面で大砲は鳴るけれども、昨今の録音に比べると、むしろ控え目かもしれない。

 ここまでは非常にまっとうな演奏なのだが、最後に大きな仕掛けが用意されている。

 さて、ロシア軍が勝利し、軍楽隊も加勢しての聖歌の再現。鐘が盛大に鳴り、凱旋の行進が始まる。

 その後、場面が一転する。

 ここは教会の中だろうか...合唱によってロシア国歌が厳かに歌われる。

 オーケストラによる行進は遠くの方で聞こえているが、きっと教会の外を行進しているのだろう。

 場面は再び切り替わり、オーケストラが最後の音を終えた後も、鐘の音だけが残り、いつまでも鳴り響いている...。

 この最後のセクションは映画的とも言え、当然コンサートではできない演出であり、音楽も含めて、いかにもストコフスキーらしい演奏(録音)だ。


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 ▲ N・ゴロワノフ指揮/モスクワ放送交響楽団

 1948年のライブ録音。

 冒頭の聖歌からして只ならぬ雰囲気が漂う。そしてトゥッティになってからは正に荒れ狂い、そしていきなりの急ブレーキ。

 猛突進したかと思うと、テンポを落として旋律を歌い、とにかく音楽の振幅が大きく、スコアに無い打楽器もあちこちに加えられている。

 スヴェトラーノフの旧盤と同じく、コーダでは原曲の『ロシア国歌』に代えて別のメロディ(グリンカ作曲の「イワン・スサーニン」)が演奏されるが、チャイコフスキーのスコアを改ざんする事への後ろめたさなど微塵も感じさせず、全てを蹴散らして豪快に吹き鳴らす。

 そして、演奏後は聴衆の拍手喝采。

 とにかく、予測不能、常軌を逸した、とんでもない演奏。上級愛好者向け。


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 ▲ F・ライナー指揮/シカゴ交響楽団

 1956年録音。

 大砲パートは入っていないし(大太鼓で代用もしていない)、もちろんコーラスも無し。途中、戦闘の場面の繰り返しをばっさりカット。なので、演奏時間12分半。

 ヤワな雰囲気は皆無。微動だにしないアンサンブルと、ド迫力。『音楽』以外の要素は削ぎ落とした、ある意味、究極の演奏。


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 ▲ カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 1966年録音。

 冒頭の聖歌はドン・コサック合唱団によって歌われ、ティンパニの一打によるトゥッティ(33小節目)からオーケストラの演奏となる(それまではコーラスのみ)。

 このコーラスは、音程もアンサンブルも西欧的にキレイに整えられたものではなく、土臭く、独特の迫力、荒々しさがある。『合唱』というよりも、ロシアの民衆の『叫び』のようでもある。

 オーケストラの方は、戦闘の場面のドライブ感などは素晴らく、荒っぽさを感じるけれどもライブ的な勢いもあり、また、弦楽器のポルタメント奏法(音をずり上げる)などは、いかにもカラヤン臭がする。


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 ▲ C・デュトワ指揮/モントリオール交響楽団

 最初に発売された時は、最後の部分にシンセサイザーを重ねたことで(実はこれが売りだった?)、極めて悪評の高いCDだったけれども、私が持っているのは後に再発された輸入盤(Decca OVATION盤)。

 これは何らかの修正がされているのだろうか。確かに、バンダらしき音が被さってくるけれど、シンセの音には聞えない。

 大砲や鐘は実際の音を使っていると記載されているが、この大砲こそシンセ(デジタル)っぽい音がする。

 何だかよく分からないけれど、演奏そのものはいかにもこのコンビらしく、キレイにまとめられたもの。ヘンなことをしていないので取っ掛かりにはいいかも。ただ、刺激を求める向きには物足りない。


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 ▲ H・シェルヘン指揮/ウィーン国立歌劇場管弦楽団

 1957年録音。

 冒頭のコラールは、静かな、室内楽的な雰囲気がする。

 そして、主部に入って以後も、とてもイイ。戦闘の場面はメリハリがあるし、その後の民謡調の主題もテンポを大きく落として歌われる。

 大砲は大太鼓で代用しているけれども控え目。「大砲の音」に拘る向きには物足りないだろうけれども、個人的にはこのくらいの演奏が好きだ。

 ...と、ここまでは実に真っ当な演奏であるけれども、冒頭のコラールが金管で再現される部分で、いきなり妙なルバートがかかり、ヘンな間が入ったり...さすがシェルヘン、素直に終わるようなことはしなかった。


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 ▲ Y・シモノフ指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

 1994録音。

 明るいサウンドで音も軽めであるけれど、よくコントロールされ、歌い込まれた冒頭の「聖歌」から非常にしっかりとした演奏を聴かせてくれる。

 最後のセクションでは金管楽器を中心に再現する「聖歌」が祝祭的な雰囲気を盛り上げ(オルガンも加わっているようだ)、ロシア軍の進軍のテーマに「ロシア国歌」がかぶさり音楽は最高潮を迎える。

 鳴り響く鐘と、祝砲....その大砲は、やけに景気よく何発もぶっ放される。なんだか、花火も上がっているようだ。

 そして、最後は「ひゅるるるる~・・・ドッカン!!」と、これ完全に暴発事故ではないか(観客は無事だろうか...)。

 まさしく、氏の『サービス精神』の表れのような幕切れ。


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 ▲ E・サロネン指揮/バイエルン放送交響楽団

 1984年録音。サロネン、弱冠25歳のデビュー盤だそうです。『ロシア物』というのは似合わない気もしますが...。

 問題は戦闘の場面。テンポがとても遅く(途中加速するけれども)、いかにものんびりとした、緊迫感の無い音楽になってしまっている。

 その影響もあってか、演奏時間は17分40秒。一般的には15分台なのでかなり長め。

 「ありきたりの演奏はしたくない」という意気込みがあるのかもしれないけれど、ここさえ普通であれば、オーケストラの音も素晴らしいだけに、かなりいい線行っていたと思う。


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 ▲ A・ボールト指揮/ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団

 1966年録音。遅めのテンポをとった堂々たる演奏。正統派。迫力満点の名演奏。

 鐘は盛大に鳴り響き、大砲は大太鼓で代用。クレジットは無いけれども、終結部にはバンダも加わっているように聞こえる。


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 ▲ C・アバド指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 1995年録音。なんでアバドがこの曲を...??

 鐘は華やかに連打され、大砲は大太鼓の音を増幅したような感じ。

 ベルリン・フィルのサウンドは素晴らしいにしても、あまりにお行儀がいい。スコアをそのまま演奏しただけ。もっと羽目を外さないとこの曲は面白くない。

 カップリングの「テンペスト」はアバドお気に入りの曲らしく何度も録音している。また「ロメオとジュリエット」も悪くない。この2曲はライブ録音。

 しかし、残りの2曲「スラヴ行進曲」と「1812年」はとってつけたような、帳尻合わせのような感じがする。

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