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リムスキー=コルサコフ 「皇帝サルタンの物語」組曲

music CD

 ■ N・リムスキー=コルサコフ作曲/組曲「サルタン皇帝の物語」

 同名のオペラの音楽による3曲から成る組曲。

  1.王の戦場への旅立ちと別れ(行進曲)
  2.海原を漂う妃と王子
  3.3つの奇跡

 3曲目は演奏時間も長く曲想も変化に富んでいるため単独で演奏(録音)されることもあり、また、吹奏楽編曲版もいくつかあります。

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 ▲ E・スヴェトラーノフ指揮/ソビエト国立交響楽団

 メロディヤ録音盤。

 1曲目「行進曲」。冒頭のトランペットのファンファーレの勢いからビックリする(日本のオケでは絶対に無理sweat02)。普通に演奏すれば洒落た感じの音楽であるけれども、ギラギラ、バリバリの圧倒的なパワー。

 小太鼓のリズムに続く第2主題はホルンで朗々と歌われる(全曲に渡ってホルンが素晴らしい音を聴かせてくれている)。

 2曲目は「シェヘラザード」風の海の情景。これといったメロディも無いのだけれども、スケールの大きさは他の演奏に比べるものはない。

 静かな夜の海、ぼんやりとした月明かり。やがて波がうねりだし、大波が襲ってきて沈没寸前。そして夜明け。遠くの方が少しづつ明るくなってくる。パワフルな金管が迫ってくる波を描写して、その情景が目に浮かぶような演奏。

 そして、終曲の「3つの奇跡」。突進する金管、騒々しく炸裂するシンバル。クライマックスで朗々と旋律を吹き鳴らすトランペット。

 今となっては懐かしい、爆裂ロシアン・サウンドが楽しめる、最高の演奏の一つ。聴くべし!


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 ▲ N・ゴロヴァノフ指揮/モスクワ放送交響楽団

 1952年録音(モノラル)。

 ゴロヴァノフは1891年生まれ。コルサコフが亡くなったのが1908年なので、人生が20年弱オーバーラップしていることになります。

 1曲目の「行進曲」。猛烈な勢いのトランペット、シンバルは強打され、ハイテンションの音楽が続くがけれども、中間部直前で突然の急ブレーキ。

 その後に大きくテンポを落とした中間部。ビブラートを目いっぱいかけたホルンの音に痺れる。テンポはフラフラと変わり、ちょっと船酔いしたような気分になる。

 2曲目(海の情景)では静と動のコントラストの見事さ。そして、ここでもホルンの存在感が絶大。

 3曲目の「3つの奇跡」、金管楽器は相変わらずだけれども、意外に抒情的な音楽も聴かせてくれる。

 バイオリンの瑞々しい旋律から、それを金管が受けての盛り上がり、好きな人には堪えられません。

 最後は威勢のいいトランペットの掛け合いと、打ち鳴らされるシンバルで賑やかに曲を閉じる。

 スヴェトラーノフのメロディヤ盤をさらに過激にしたような、極めてアクの強い演奏。


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 ▲ E・アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団

 1960年録N音。

 私が最初に聴いたのがこのアンセルメ盤(当時はLP)。なので、とても懐かしい録音。

 アンセルメはコルサコフの多くの管弦楽作品を録音していて、その中には他に録音の少ないオペラからの組曲や「ドゥビヌシカ」(民謡をベースにした行進曲)なども含まれていて、(当時は)とても貴重でした。

 で、この「サルタン皇帝…」。

 「3つの奇蹟」での色彩感のある「お伽噺」的な雰囲気は楽しめるけれども、ロシア系の演奏を聴いてしまうと、2曲目の海の情景や「3つの奇蹟」のクライマックスなど、そのスケール感などでかなり物足りなく感じてしまう。

 個人的には思い入れの強い録音ではあるけれども、昔と違って多くの録音が存在する今となっては、相当に分が悪いだろうか。


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 ▲ V・アシュケナージ指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

 1987年録音。1曲目「行進曲」に2小節のカット有。

 オーケストラの明るいサウンド。抒情的な面が前面に出ていて、「3つの奇蹟」の後半部、たっぷりとしたテンポで歌われるクライマックスなどは聴かせてくれる。

 ちなみに、"Quasi canone" と指定された大太鼓の一撃が、これほど強烈に鳴らされた演奏は他に聴いたことがない。

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 これは楽器の音なのか、シンセサイザーなどの音を重ねているのか...??

 何はともあれ、これが強烈極まりなく、この一発がある限り、例えスヴェトラーノフ盤があろうとも、この録音の存在価値は不滅である。

 しかしながら...

 氏がN響の定期でこの曲を取り上げたとき、この大砲(大太鼓)は「ぼん・・・」と何とも気の抜けたフツーの音で、何の思い入れも感じられなかった。

 あのCDのバス・ドラムは指揮者の指示ではなかったのか、それとも時を経て考え(解釈)が変わってしまったのか...??

 さらにはコーダの前、管楽器によってテーマが朗々と歌われる感動のクライマックス。CDでは遅目のテンポ設定で素晴らしい表現をしていたのだけれども、ここもフツーのテンポ。

 早い話が、全部フツーの演奏になってしまっていて、正直ガッカリした。何なんだ、これは...


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 ▲ V・フェドセーエフ指揮/モスクワ放送交響楽団

 1985年のライブ録音(拍手付き)。

 CDには「3つの奇蹟」とのみ記載されているけれども、実際は組曲版。ただし、1曲目の中間部を全てカットして、突然、2曲目のファンファーレが始まる。

 ライブ的な粗さは若干あるにしても、全体的には正攻法。

 金管も目一杯鳴っていて、そうなると、やっぱり1曲目中間部のホルンを聴きたかったです。


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 ▲ E・バティス指揮/フィルハーモニア管弦楽団

 1992年録音。

 バティスはメキシコの指揮者。『爆演系』としても有名だけれども、曲故に本領発揮とまではいかなかったようです。

 オケは鳴っているけれども、響きがモワモワしていて焦点が定まらない感じ。ただ、普通にまとまっている。

 2曲目などは雰囲気が出ている。

 「3つの奇蹟」の前半は遅めのテンポでジックリと持って行くけれども、後半部から何だか落ち着きが無くなってきて、急ぎ足でサッサと終わってしまう。

 エンディングはこれまでの鬱憤を晴らすように、やたらと荒っぽい。

 【「3つの奇跡」のみ】

 以下は、終曲の「3つの奇跡」のみの録音。

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 ▲ T・ソヒエフ指揮/トゥールーズ・キャピタル管弦楽団

 2007年録音。「ピーターと狼」をメインに、物語性のある音楽を集めて、曲の前にナレーション(フランス語)を入れるという企画のCD。なお、ナレーションは別トラックなので飛ばすことも可。

 ロシア的な土臭さとは正反対の洗練されたサウンドとセンス。

 よく鳴ってはいるけれども、迫力一辺倒で聴かせる演奏とは違う。後半部の情感が素晴らしい。


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 ▲ E・スヴェトラーノフ指揮/ロシア国立交響楽団

 1993年録音。ゴツゴツとした金管のサウンドや、エンディングの『決め』など、「いかにも」といったところはあるけれども、メロディヤ盤の魅力には及ばない。

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