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ボロディン ダッタン人の踊り

CD

 ■ A・ボロディン作曲/ダッタン人の踊り(歌劇「イーゴリ公」より)

 Svetla

 ▲ E・スヴェトラーノフ指揮/NHK交響楽団

 1993年2月3日のライブ録音。

 導入部の何と巣晴らしいことか。有名なオーボエのメロディをイングリッシュ・ホルンが受け継ぎ、そのバックのヴァイオリンのポルタメント...いつ聴いても泣けてしまう。スヴェトラーノフは力で押す一方ではないのだ。

 そして、この旋律がトゥッティになったときの低弦のピチカート。この演奏は会場で聴くことができたのだけれども、それは未だかつて聴いたことがない『音』だった。

 Borodin

 陳腐な言い方ではあるけれども、ロシアの大地を思わせるような、重心の低い力強い音...この録音でもその片鱗は感じられるけれども、実際はこの10倍スゴかった。忘れることが出来ない瞬間だ。

 アレグロへ入ってからも、音楽は全くだれることなく進み、ホルンやチューバの低音がブリブリと鳴る。

 エンディングでは楽譜に無いトランペットを加えて、最後の音を大きく引き伸ばして、「どうだ!」とばかりに締めくくる。当然のことながら拍手喝采!

 ソビエト国立交響楽団との1992年録音盤(CANYON)は基本的に同じアプローチで、演奏時間もほぼ同じ。

 しかしながら、オーボエのソロや、音楽のしなやかさなど、こちら(N響)の方がいいと感じる人も多いと思う。


 Svetla_2

 ▲ E・スヴェトラーノフ指揮/ソビエト国立交響楽団

 1974年録音(メロディヤ)

 合唱付きで、この合唱が前面に出て、結構クセがある。

 プレストからの前のめりに前進する音楽はスリリング。大見得を切るようなエンディングのクレッシェンド。

 筋肉質で逞しい演奏ではあるけれども、途中で最初のテーマが再現する部分などはアッサリしているし、弦のポルタメントなども意外に感じるものは少ない。

 私の所有している国内盤(Victor)は『来日記念盤』となっていて、「1812年」(いわゆる「改ざん版」での演奏)、「スペイン奇想曲」とのカップリング。

 「レコード芸術・ステレオ誌推薦盤」...何だか懐かしい宣伝文句です。


 Svetla_3

 ▲ E・スヴェトラーノフ指揮/ソビエト国立交響楽団

 1992年録音(CANYON)。ダンサーのおじさん(?)の楽し気な表情がとてもイイ。

 メロディヤ盤に比べると丸くなった、より大らかな演奏。

 N響との1999年のライブ録音と基本的に同じアプローチ。演奏時間もほぼ同じ。

 元々、金管楽器が活躍する曲ではないので、大きな差は無いけれど、アレグロ導入の4小節のティンパニはさすがに迫力がある。


 Borodin

 ▲ V・フェドセーエフ指揮/モスクワ放送交響楽団

 1989年録音。合唱付き(モスクワ放送合唱団)。

 アレグロ導入4小節間のティンパニは、追い立てるようなリズムによるド迫力。全曲、このティンパニの存在感は大きい。

 プレストでは前へ前へと突き進むリズム。

 途中、最初の「娘たちの踊り」のメロディが再現する部分では、大きくテンポを落とす。

 ここの指定は前と「同じテンポ」で楽譜もそのように書かれている。要はプレストのテンポ設定が速過ぎるのだけれど、もはや理屈ではない。この感覚的なところがフェドセーエフなのだ。

 そして、その後またぐいぐいと加速してゆく。

 重量感、逞しさ、しかしスヴェトラーノフのようなガチガチのマッチョではない、しなやかさがある。エンディングも迫力満点。

 まず申し分の無い名演奏。


 Borodin_2

 ▲ V・フェドセーエフ指揮/モスクワ放送交響楽団

 1991年、ウィーンでの録音。合唱は無し。「ダッタン人の踊り」だけであれば、上の1989録音盤があれば十分。

 ボロディン作品を集めたアルバムに収録。カップリングは、「交響曲第2番」「『イーゴリ公』序曲」「中央アジアの草原にて」。


 Stoko

 ▲ L・ストコフスキー指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

 1969年録音。合唱付き。

 スヴェトラーノフ以上に思い入れたっぷりに演奏される導入部。

 続く「娘たちの踊り」は、メロディをコーラスに任せてオーボエ、イングリッシュ・ホルンはカット。所々に合いの手を加える。

 アレグロ(4分の3拍子)へ入る前にテンポを落としていくやり方は面白いし、とても効果的だ。

 プレストからは弱音の指定にはとらわれずに、大らかに、豪快に鳴らして、力強く音楽を前へ進めていく。

 オーケストレーションの変更や、細かいカットはあるにしても(それが我慢ならない人は聴かない方が身のため)、この音楽の根本はキッチリと押さえられている。

 普通の『譜面通り』の演奏よりは、はるかに楽しめる。


 ▲ H・V・カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 Img183

 1970年録音。

 この演奏で素晴らしいのは何といっても導入部分。この部分での木管セクションのプレイ、特にオーボエは聴いていてほれぼれする。

 全体的にリズムは重めだけれども、エンディングは激しく打ち込まれるティンパニとともに、大きく盛り上がる。

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