ヴォーン・ウィリアムズ イギリス民謡組曲
CD
■ R・ヴォーン・ウィリアムズ作曲/イギリス民謡組曲
オリジナルは吹奏楽作品ですが、ホルストの組曲と同様に、G・ジェイコブによる管弦楽版があります。
【吹奏楽版】
▲ T・レイニッシュ指揮/王立ノーザン音楽大学ウィンド・オーケストラ
1998年録音。RVWとホルストの吹奏楽作品集。
「初演版」での録音。
1.日曜日には17歳
2.海の歌
3.マイ・ボニー・ボーイ
4.サマセット地方の民謡
この曲の初演時は上記の4楽章形式だったものの、その後「2」を単独の曲として独立させて(オケ版も有)、最終的には現在の3楽章形式(1,3,4)になったらしい。
「1」と「2」はいずれも行進曲で、第1主題などは似た雰囲気もあるので、現在の3楽章形式の方がまとまりがいいのは確かだと思う
「初演版」...と言っても、コンサートならともかく、LPと違ってCDならば再生する曲(順)を自由に選べるので、聴く側からするとあんまり関係ないかもしれない。
私が好きだったのは、LPで出ていたロイヤル・マリーンズ・バンドによる録音。そのCDが見つからないので、今はこの演奏で楽しんでいる。
やっぱり、この曲についてはイギリス系バンドの音が好きだ。
▲ E・バンクス指揮/英国空軍中央音楽隊
1984年録音。RVW、ホルスト、グレインジャーの吹奏楽作品集。有名曲を網羅、「海の歌」も収録されています。
野外コンサート、青空の下で、のんびりとリラックスして音楽を楽しんでいるような、気持ちのいい演奏。この雰囲気は、この曲には合っていると思う。コルネットのソロも上手・下手を超えた味がある。
▲ F・フェネル指揮/クリーヴランド・シンフォニック・ウインズ
1979年録音。クリーヴランド管弦楽団の管楽セクション。
上手だしサウンドもとてもよく、管楽アンサンブルとしての立派な演奏。ジェイコブによるオケ版を参考にしているのか、第1楽章でコルネットのソロをクラリネットに置き換えている。
打楽器を強調したりなど、色々なことをやっているけれども、第1楽章のエンディングなどはいかにも大袈裟だし、第3楽章の最後も同様。
全体的に、個人的にはちょっと感覚が『違う』感じがする。
▲ F・フェネル指揮/イーストマン・ウインド・アンサンブル
1959年録音。世代的に『懐かしい』録音。
こちらも、第1楽章のコルネットをクラリネットに置き換え。
元気いっぱいの演奏ではあるけれども、後のクリーヴランドSW盤のように演出過多にならず、ずっと素直な演奏。フェネル盤であれば、私はこちらの方が好き。
【管弦楽版】
以下はG・ジェイコブ編曲による管弦楽版による録音。
▲ N・マリナー指揮/アカデミー室内管弦楽団
1980年録音。RVW以外に、ワーロック、バタワース、ディーリアス、エルガーの録音を集めた2枚組。
オリジナルの吹奏楽曲は、昨今はいざ知らず、古い世代の人ならば一度は演奏したことがあるだろうし、また、技術的にさほど難しくないこともあり、アマチュア楽団のコンサートで取り上げられる機会も多い(多かった)。
ここで使われている民謡のメロディは、グレインジャー、ホルスト、バタワースなど、他の作曲家の作品、あるいは自身の他の作品にも現われる。
第1、3楽章は「行進曲」で、元々吹奏楽的な曲想であるけれども、ジェイコブはとても上手く編曲していて、ホルストの組曲の編曲版よりもはるかにいい。
特に第2楽章はこちらがオリジナルと言われても納得できてしまうくらい、サマになっている。
第1楽章のコルネットのソロはクラリネットに置き換わっていて、フェネルはこれを参考にしてか、吹奏楽での演奏でもクラリネットに吹かせている(私はコルネットの方が好きだけれども...)。
マリナーの演奏は明るく爽やか。第2楽章のオーボエのソロなど、こんなに上手に演奏されると、とても新鮮な感じがする。
▲ A・ボールト作曲/ロンドン交響楽団
1970年録音。ボールトによるRVW作品集。
このボールトの演奏は思いっ切り肩の力が抜けたもので、両端楽章もガチガチの行進曲ではない。またリピートを省略しているので随分と短く感じる。
速目のテンポでどんどん進み、そのおかげで第2楽章などは忙しないし、第3楽章はテンポがふらつき、エンディングではいきなりのテンポ・アップで曲を閉じる。
何だか、演奏前に一杯引っ掛けているのではないかというような、ほろ酔い気分の演奏。
個人的にはオリジナル(吹奏楽版)を聴き慣れているので、これはこれで味があるとは思うけれども、一般的には(まずは)マリナー盤の方をオススメします。
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