コープランド リンカーンの肖像
CD
■ A・コープランド作曲/リンカーンの肖像
管弦楽とナレーションのための作品。大きく3つのセクションから構成されている。
最初は荘重な雰囲気の音楽に始まり、作曲者によると「リンカーンのパースナリティをとりまく神秘的な宿命感」、「リンカーンの心のやさしさと純真さ」を暗示している。
急に(subito)テンポを速めた第2のセクションでは、「リンカーンが生きていた時代の背景」が描かれ、フォスター作曲の「草競馬」も引用される。
この2つの主題が重なりつつ、リンカーンの演説を引用したナレーションが加わる最後のセクションへと繋げて行く。ここまではオーケストラだけによる演奏。
以後(第3のセクション)は完全にナレーションが主役。オーケストラは「リンカーン自身の言葉に対して簡素ながら印象に残るような額縁」の役割を与えられる。
音楽そのものは紛れも無いコープランドのものではあるけれども、問題はナレーションが入ってきてから。
▲ E・カンゼル指揮/シンシナティ・ポップス・オーケストラ
1985,86年録音。ナレーションは女優のキャサリン・ヘップバーン。
ナレーションは決して『リンカーン役』ではないので、女性が担当しても問題はないのだけれど、これがすごくイイのだ。ポップス・オケの演奏と侮ること無かれ。
この曲については、どういう風に聴けば(楽しめば)いいのかピンと来なかったのだけれども、このカンゼル盤を聴くと「なるほど、こういうのも有りか」と思ってしまう。
年老いた婦人が、静かに思い出話を語っている...そんなシチュエーションが見えてくる。音楽も含めて、ハリウッド映画の1シーンが浮かんでくるような味わいがある。
さすが名女優。きっちりと『世界』を作っている。
シュワルツコフが現在進行形ならば、こちらは過去形。セピア色の思い出話。
▲ L・スラットキン指揮/セントルイス交響楽団
1991年録音。ナレーションはN・シュワルツコフ(@湾岸戦争時の米国中央軍司令官)。
そのナレーションは演説風。内容はともかく、「そういう話は、別の場所でやってくれ」と言いたくなる。
▲ A・コープランド指揮/ロンドン交響楽団
ナレーションは俳優のH・フォンダ。ドキュメンタリー映画風。
オーケストラは1968年ロンドンで、ナレーションは1971年ニューヨークでの録音。
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