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ハチャトゥリアン バレエ音楽「スパルタクス」

CD

 ■ ハチャトゥリアン作曲/バレエ音楽「スパルタクス」

 【全曲版】

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 ▲ A・ジュライチス指揮/ボリショイ劇場管弦楽団

 1972年録音。原典版(4幕9場)。

 抜粋版などとケチなことを言わずに、この全曲盤(CD3枚)を聴いて満腹になるべし!...と言いたいところだけれども、今では入手は難しそうです。

 弦の響きが若干薄く感じられるけれども、ここで聴くことができる『音』は、今となっては得がたい雰囲気、空気感がある。

 このバレエの幕切れ、レクイエムからの終曲は鐘の音も加えて壮大に盛り上がり、意外にアッサリと終ってしまう改訂版よりもはるかに聴き応えがある。

 Zhyuraitis

 ジュライチスは1928年、リトアニア生まれの指揮者。ボリショイ劇場のバレエ指揮者として活躍された方です。上の写真はバレエDVDから。


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 ▲ M・ユロフスキ指揮/ベルリンドイツ交響楽団

 1996年、1997年録音。1968年のボリショイ劇場改訂版(3幕)による録音。

 この改訂版は、「ガイーヌ」の場合と同様に、「舞曲」としての面よりもドラマ的要素が多くなっているように感じられ、また随所にコーラスが入る。

 なにはともあれ、キチンとした手堅い演奏で全曲版の録音が聴けるのは嬉しい。貴重な録音。


 原典版をベースに3つの組曲が編まれていますが、独自に選曲されている録音も多いです。

 【組曲版】

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 ▲ N・ヤルヴィ指揮/スコットランド・ナショナル管弦楽団

 1990年録音。作曲者による3つの組曲をそのまま収録。

 サウンドもいいし、豪快にオケを鳴らした演奏で、これ一枚あればとりあえずはOK。また、ド派手なオーケストラ曲(ストレス解消系)を楽しみたい向きには超オススメ盤。

 組曲版は、それぞれが単独で演奏されることを想定していると思われ(プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」のように)、結果、一番盛り上がる「スパルタクスの勝利」が第1組曲の終曲になっていて、3つの組曲を通して聴くとやや尻つぼみ。

 正直、通しで聴くのは体力的にもちょっとツライけれど、CDなら曲順を自由にプログラムできるので、好きな組曲版を作って聴くのが吉。


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 ▲ A・アニハーノフ指揮/サンクト・ペテルブルグ国立交響楽団

 1994年録音。指揮者名は「アンドリュー・アニチャノフ」と記載されていますが、「アンドレイ・アニハーノフ」として知られている方です。

 第1~3までの3つの組曲を収録。ただし、第3組曲の終曲を第1幕の凱旋行進曲に差し替え(CDの記載は「野外競技場にて)。

 元の曲が今一つ盛り上がらないため、この差し替えは効果的でありがたい。

 演奏はやや大雑把だけれども、鳴らすところは十分に鳴らして聴き応えがある。また、いにしえのソビエト時代のオケのサウンドの臭いがする独特の雰囲気を持っている。


 【抜粋版】

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 ▲ A・ハチャトゥリアン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 1962年録音。有名な自作自演盤。

 収録曲は以下の4曲。

  1.スパルタクスとフリージアのアダージオ
  2.エギナのヴァリエーションとバッカナール
  3.情景とクロタルを持った踊り
  4.ガディスの娘の踊りとスパルタクスの勝利

 昔から聴いていた馴染みの録音だけれども、冷静に考えてみると、当時のソビエト(東側)を代表する作曲家が、西側を代表するオーケストラを相手に自作を指揮するという、まさに歴史的な遭遇なのだ。

 さらには、この曲の初演が1956年なので、そのたった6年後の録音。

 まさに『新作』であって、VPOもこの曲を演奏する機会が果たしてあったかどうか。それどころか、事前に曲を聴いたことすらなかったかもしれない(時代が時代だけに)。

 その演奏は素晴らしく、よくぞここまで異質な音楽を弾き切ったと思うし、ハチャトゥリアンも下手すると全く相手にされないような類の音楽を、よくぞここまで持ってきたと思う。

 「アダージオ」最初のオーボエのソロはウィーンの音だし、また、弦楽器にはロシア(ソビエト)のオケでは聴くことができない艶やかさ、陰影がある。

 本当に『歴史的録音』。


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 ▲ A・ハチャトゥリアン指揮/ロンドン交響楽団

 1977年録音。

  1.エギナのヴァリエーション
  2.スパルタクスとフリーギアのアダージオ
  3.ハルモディウスの入場とエギナとハルモディウスのアダージオ
  4.カディスの娘の踊りと反乱軍の接近

 曲名は異なっているけれども、ウィーン・フィル盤に「3」が追加された選曲。

 悪くはないけれども、今一つノリの悪いオケを力づくで振り回している感もある。ただ、リズムやテンポなど、作曲者自身による『お手本』としては貴重な録音。


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 ▲ V・フェドセーエフ指揮/モスクワ放送交響楽団

 1993年録音のMUSICA盤。オープニングのファンファーレのコンデンス・スコアが表紙。

  1.クラッススとエギナの場面
  2.海賊の踊り
  3.スパルタクスとフリーギアのアダージオ
  4.エギナのヴァリエーションとバッカナール

 「1」は組曲には入っていない第1幕からの音楽。

 独特の選曲...と言うか、中途半端な選曲。あくまでフェドセーエフを聴くCDと割り切るにしても、演奏そのものにも大きな魅力は感じない。

 この内容であれば1989年にビクターに録音した「3」があれば十分。


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 ▲ A・ラザレフ指揮/ボリショイ交響楽団

 1993年録音。

 組曲版から7曲の抜粋。録音が少ない第3組曲から2曲が含まれているのが嬉しい。

  1.スパルタクスとフリーギアのアダージョ
  2.ギリシャ奴隷の踊り
  3.エジプトの乙女の踊り
  4.序奏、エギナとガルモシーのアダージョ
  5.エギナのヴァリエーションとバッカス祭
  6.情景とクロタルを持った踊り
  7.ガディスの娘の踊りとスパルタクスの勝利

 何と言っても素晴らしいのはトランペットで、「1」のクライマックスでのソロは当然のことながら、「7」でのファンファーレも実にカッコイイし上手く、奏者の名前がクレジット(ボリス・シュレパコフ)されているだけのことはある。

 ただ、それ以外は今ひとつ。

 サウンドに色彩感が欲しいし、曲作りが一本調子なところがあり、スケールの大きさもあまり感じられない。特に弦楽器は非力な感じがする。

 「ボリショイ」という名前で勝手にハードルを上げてしまっているのかもしれないけれど...。

 ただ、「7」のエンディングは打楽器の頑張り(ちょっと騒々しいけど)もあってなかなかの迫力。

 カップリングは「ガイーヌ」(4曲)と「仮面舞踏会」(2曲)。完全に「スパルタクス」がメインのCDです。


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 ▲ Y・シモノフ指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

 1994年録音。

 収録曲は下記の4曲。

  1.スパルタクスとフリージアのアダージオ
  2.娘たちの踊りとスパルタクスの勝利
  3.情景とクロタルを持った踊り
  4.エギナのヴァリエーションとバッカナール

 選曲は作曲者指揮のVPO盤と同じだけれども曲順は異なる。

 前半の2曲がとてもいい。

 ますは「アダージオ」が素晴らしい。遅いテンポ、旋律を息長く、念入りに歌わせ、オーボエのソロが弦楽器に引き継がれたところで、すでに相当にテンションが上がる。クライマックスでのトランペットも朗々と。

 「スパルタクスの勝利」では、3拍子のコーダで突然テンポを落とすという荒業。

 後半2曲は、メロディ・ラインや雰囲気によってリズムが揺らぐことがない、『バレエ音楽』。これは、劇場指揮者としてのキャリアが長いシモノフならではだろうか。

 ただ、オケの響きが薄っぺらいのは致し方ないか...。


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 ▲ K・カラビッツ指揮/ボーンマス交響楽団

 2010年の録音。

 第1組曲の5曲に、「スパルタクスとフリーギアのアダージョ」を加えた6曲を収録。この選曲は妥当。

 とても丁寧にまとめられた演奏で、迫力はあっても羽目を外すことはない。「…アダージョ」のトランペットは控え目だし(これが譜面通りなのだけど)、「ニンフの踊り」のトランペットも品良く大人しい。

 正直、もう少し羽目を外してほしいと思うのが人情というもので、豪快に鳴らしたヤルヴィ(父)や、旧ソビエト系の演奏が懐かしい。

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