ハチャトゥリアン 交響曲第3番「交響詩曲」
CD
■ A・ハチャトゥリアン作曲/交響曲第3番「交響詩曲」
▲ K・コンドラシン指揮/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団
共演はボリショイ劇場トランペット・アンサンブル。
上記の国内盤には「1964年1月14日録音」と記載。
こちらの輸入盤(4枚組)には「1969年録音」と記載されています。どちらが正しいかは不明だけれど、ともあれ当時のソビエト最強メンバーの録音が残ってくれていることは嬉しい。
通常3管編成のオケに、パイプ・オルガンと15本のトランペット部隊が加わるという編成。
短い導入に続いて、いきなり15本のトランペットによるファンファーレが鳴り響き、小太鼓も参戦して、これが延々続く。その後、オルガンによる速いパッセージが現れ、ここまでで相当に騒々しい。
ようやく落ち着いたところで、弦楽器にアルメニア風のメロディが歌われ、ここでようやく音楽らしくなってくる。ここからしばらくは、いかにもハチャトゥリアンらしい、叙情的な良い雰囲気がある。
クラリネット、フルートの速いパッセージから、やがて元の騒々しさに戻り、そして止めに、打楽器と金管楽器の3連音符の轟々たるリズムの上に、トランペット部隊がアルメニア風主題を吹き鳴らす。「慎み」という言葉は彼らには無いのか...ここまで来ると笑ってしまうしかない。
ここで曲を終われば良いものを、その後コーダが延々と(しつこく)続く。
「内容がない」と言われればその通り。体調の悪い日に聴けば(そうでなくとも?)、単に騒々しいだけかもしれない、ひたすら『力』を誇示する音楽。しかし、ハチャトゥリアンの音楽あってこその25分なのだ。
▲ E・ムラヴィンスキー指揮/ソビエト国立交響楽団
1947年のライブ録音。オケからすると、12月25日のモスクワ初演時のライブ録音。実際の初演は、この直前の12月13日にレニングラードにて(オケはレニングラード・フィル)。
如何せん録音が古いモノラルなので(この年代としては良いと言えるかもしれない)、まず聴くならコンドラシン盤だろうけれども、こちらもなかなか興味深い。
何と言っても初演時の『記録』として貴重なものであるし、演奏そのものも、中間部(例のアルメニア風の部分)の表現が素晴らしく(ここは紛れも無くムラヴィンスキー)、エンディングも音の悪さを超えて伝わってるド迫力にゾクゾクくる。
また、現行版(出版譜)には無い小節もあり、(第2交響曲と同様に)同じフレーズの繰り返しを出版の際にカットしたのだろうか。
▲ F・グルシチェンコ指揮/BBCフィルハーモニック
1993年のライブ録音。
確かこの録音が出た当時はコンドラシン盤が入手困難で、結構歓迎された録音ではなかったろうか。シャンドスであればヤルヴィ(父)に録音してほしかった気もするけど。
聞き慣れない指揮者だけれども、この演奏は意外に悪くない。録音もいいし、迫力はあるけれども耳に優しくて、とても聴き易い。まあ、このスコアを演奏して「迫力が無い」とはあり得ないだろうが...
さすがに中間部になると、薄味で緩くなってしまい、こういうところでは、ムラヴィンスキーやコンドラシンとの格の違いがハッキリと出てしまう。
ちなみに、途中10番(!)トランペットが8分音符で「♪レ・ラ・ラ・(高い)レ」と吹き続ける場面があるのだが、途中から最後の「レ」をオクターブ下げて吹いている(楽譜にはそうやって吹いてもいいという指定がある)。一般常識としては、やむを得ない対応とは思うけれど、ソビエト勢の録音ではひたすら高い「レ」を吹き続け、そちらの方が尋常ではない。
カップリングはハチャトゥリアン作曲の「勝利の詩」とイワノフ作曲の「コーカサスの風景」。
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