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アルベニス(アルボス編) 「イベリア」から

CD

 ■ I・アルベニス作曲(アルボス編曲)/「イベリア」組曲から

 ピアノのための曲集「イベリア」からの、アルボスによるオーケストラ編曲版。

  1.エヴォカシオン
  2.セビリアの聖体祭
  3.トゥリアーナ
  4.港
  5.エル・アルバイシン

 これに、単独のピアノ曲から編曲された「ナバーラ」を加えて演奏(録音)されることもある(アンセルメ、バティス)。

 Iberia

 ▲ E・アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団

 1960年録音。ピアノ曲からの編曲である「ナバーラ」を加えての6曲を演奏。

 「エヴォカシオン」の冒頭、アルボス版では原曲にはない2小節が追加されているのだけれども、アンセルメはそれをカットしてオリジナルに合わせている。

 「セビリアの聖体祭」は最も演奏時間が長く(8分)、ドラマチックな展開。

 原曲は元々オーケストラ的な曲想でもあり、鐘なども含む多彩な打楽器の効果なども加えたオケの効果は大きい。

 私がこの曲を最初に聴いたのはこのアンセルメのLP盤で、「恋は魔術師」とのカップリングだった。

 お目当てはファリャの方だったのだけれども、一聴してすぐに、この曲(演奏)が気に入って、それ以来、何度となく繰り返し聴いた。

 その後、いくつかの録音を聴いたけれども、やはりこのアンセルメ盤が一番。

 各楽器のソロが鮮やかに浮かび上がり、明るい太陽の光を感じさせるような色彩感がある。

 『スペイン風』ではなく、紛れもない『スペイン音楽』。同郷の作曲家、アルボスの編曲も踏み外すようなことはしていない。

 例えば「三角帽子」などが好きな人なら、間違いなく楽しめると思う。

 カップリングはヴィラ=ロボス作曲の「ピアノ協奏曲第1番」。


 Batiz

 ▲ E・バティス指揮/メキシコ州立交響楽団

 「エヴォカシオン」の鄙びたローカルな雰囲気、「港」の熱っぽいリズムが魅力。

 ただ、「エヴォカシオン」でイングリッシュ・ホルンが2小節早く飛び出したり、「セビリアの聖体祭」の終結部の「鐘」のパートが、「鉄琴」で「♪チ~ン」と鳴ったり、相当に大らか(?)ではある。

 で、問題は最後の「ナバーラ」。指揮者の気合いを入れる唸り声と共に、一気呵成に突っ走る。音楽のニュアンスも何もあったものではない。

 アンセルメやライナーが5分以上かけているのを、バティスは3分台。


 Iberia_m

 ▲ C・ミュンシュ指揮/フランス国立放送管弦楽団

 1966年録音。グイグイ押してくる、熱っぽく大柄な演奏。

 「エヴォカシオン」冒頭の和音からハイ・テンション、「トゥリアーナ」などは思いっ切り力が入る。

 弦のポルタメントや、サキソフォンの一節、等々。あちらこちらに『フランス的』な香りが漂う。


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 ▲ Y・パスカル・トルトゥリエ指揮/フィルハーモニア管弦楽団

 1990年録音。 トルトゥリエ氏は有名なチェロ奏者、ポール・トルトゥリエ氏の息子さん。

 原色ではなく淡い暖色系。オケも上手いし、過不足無く、強烈なキャラが無い分、とても聴き易い演奏。ただ「この演奏でなければ!」という魅力は少ない。


 Iberia_w

 ▲ J・P・ヴァイグレ指揮/ドレスデン・フィルハーモニー

 1989年録音。華やかさはないけれども、堅実に音楽を作っている。

 ただ、地味。色調は暗く、色彩感に乏しい。


 Spain

 ▲ F・ライナー指揮/シカゴ交響楽団

 1958年録音。「セビリアの聖体祭」「ナバーラ」の2曲を収録。

 「セビリアの聖体祭」は速目のテンポで、スッキリと軽快な演奏。で、とにかく上手い。

 オーケストラ曲として見れば、この演奏で申し分ないと思うけれど、どこかクールで醒めた感じがして、スペイン的な情緒であったり、祭りの情景描写としては物足りない。

 「ナバーラ」は一転落ち着いたテンポで、音楽のニュアンスを絶妙に表現している。所々、ラヴェルやドビュッシーの匂いもする。

 アンセルメが太陽の光がまぶしい『真昼』の音楽であれば、このライナーは妖しい気配も漂う『夜』の音楽。

 その他、ラテン系イケイケのバティスなど、同じスコアであっても、こんなにも演奏が違うものかと面白い。

 演奏時間は...

 ・ライナー 5:35
 ・アンセルメ 5:05
 ・バティス 3:49

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