パッヘルベル カノン
CD
■ J・パッヘルベル作曲/カノン ニ長調
▲ K・レーデル指揮/ミュンヘン・プロ・アルテ管弦楽団
1968年(?)録音。弦楽合奏版。
LP時代から何度となく繰り返し聞いた演奏。
レーデルはこの曲がお気に入りだったようで、何種類かのアレンジで録音していて、これは弦楽器のみによるシンプルなアレンジ。上昇する分散和音が加わっている以外の装飾は無い。
しかし、この演奏は、もはや『バロック音楽』ではない。
パイヤールの暖かさ、優しさ、刹那的な音楽とはまた異なる。
弦楽合奏曲として素晴らしく美しく、ロマンチックで、ひたすら上りつめる、その高揚感は神々しいほどだ。
▲ J・F・パイヤール指揮/パイヤール室内管弦楽団
1968年録音。「バロック名曲集」に収録。
ソリストにはジャン=ピエール・ランパル(フルート)、モーリス・アンドレ(トランペット)、ピエール・ピエルロ(オーボエ)、ロベール・ヴァイロン=ラクロワ(チェンバロ)、といった懐かしい名前が並んでいます。
古い世代の音楽ファンにとって「パッヘルベルのカノン」と言えばパイヤール。
導入の通奏低音(8つの4分音符)が、ここまで表情豊かに奏される演奏は他にあるだろうか。
そこへヴァイオリンの旋律が何とも優しく、繊細に入ってくる。もちろんビブラートも目いっぱいかけられる。途中ではチェンバロの上昇する装飾が加えられる。
ゆったりとしたテンポ(演奏時間7分)。
ただただ暖かく、ハッピーな気持ちになる。こんな世界にずっと生きていたい...。
古楽器によるものも含め、様々な録音を聴くことができる今聴き返せば、到底『バロック音楽』と言えるものではないかもしれないし、『ムード音楽』に近いかもしれない。
しかし、あの譜面をこのように演奏しようと思い立った、そのアイデアの素晴らしさ。
この曲がここまで広く演奏され、人気が出たのも、この演奏があってこそだと思う。
「いや、これはイカン」と思いつつも、抗うことができない魅力がある演奏。
▲ K・ミュンヒンガー指揮/シュトゥットガルト室内管弦楽団
1977年録音。その昔『バロック音楽』と言えばパイヤールか、このミュンヒンガー。
素朴で暖かみのある音楽。余計な理屈はさて置いて、こういう音楽を聴くとホッとする。
▲ ムジカ・アンティクヮ・ケルン
1982年録音。
CD初期に買った一枚。古楽器による演奏。
これを最初に聴いたとき驚いた。これが、パイヤールやレーデルで親しんできた、あの「パッヘルベルのカノン」か!?
演奏時間は3分ちょっと。パイヤール(7分強)の半分以下。
しかし『正しい』とは言わないけれど、素直に譜面を読んで音にすれば、こうなるのだ。
やがて自分の耳が慣れてきたせいだろうか、当初の違和感は無くなり、この純粋で無邪気さも感じる、飾り気のない演奏には、また違った魅力を感じる。
▲ J・ゴールウェイ(フルート)
ジョン・ジョージアディス指揮/ミュンヘン放送管弦楽団。
一人で「カノン」をどうやって演奏するのか。多重録音?...と思って聴いてみると、第1パートをゴールウェイが吹いて、(追いかけてくる)残りの2パートを弦楽器(バイオリン)が演奏する。
「カノン(輪唱)」は同じ楽器が演奏してこそなのだけれども、その「カノン」としての面白さは消滅してしまっている。
余計な装飾の無い、とてもシンプルな編曲で、曲そのものもアマチュアだって吹けてしまう簡単なもの。
でも、それを聴かせてしまうのがゴールウェイ。いつもながらのゴールウェイ節が楽しめます。
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