オネゲル パシフィック231(アンセルメ)
CD
■ A・オネゲル作曲/パシフィック231
▲ E・アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団
1963年録音。アンセルメに献呈された曲。
吹奏楽(ブラス・バンド)曲の「オリエント急行」(P・スパーク作曲)では、汽車が走り出したり、あるいは停車したりする様を『テンポの変化』で表現している。
つまり、発車した後は次第にテンポを速め("very steady accel.")、停車するときは遅くする("molto rall.")。
しかし、オネゲルはテンポを変化させずに、『音符で』それを表現していて、停車している機関車が走り出すときも、駅に停車するときも、音楽の『テンポ』は一定で一切変化していないのだ。
で、この演奏はスゴイ。
短い導入部では、蒸気を吐きながら発車を待つ機関車の姿が目の前に浮かんでくる。
走り出した機関車は加速し、鋼鉄の車体を軋ませ、部品が吹っ飛び、分解しそうな勢いで突っ走る。オケは決して上手ではないのだけれども、それが逆にスリリングな効果を増している。
曲の終わり近く、金管楽器によるコラールが被さってくると、ひたすら走り続けるメカとしての機関車に人間のドラマがオーバーラップしてくるようだ。これこそオネゲルが描きたかったものなのかもしれない。
最後に駅に到着するときの迫力も半端ではない。勢いの付いた車体を停止させる、そのエネルギーと重量感。巨大な機関車がこちらへ迫ってきて、あと数センチのところでギリギリ停車する。
楽譜をキレイに音にするという演奏ではないけれど、これ以上の演奏は考え難い。
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