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ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(高橋徹編曲の吹奏楽版)

CD

 ■ M・ムソルグスキー作曲(高橋徹編曲)/組曲「展覧会の絵」

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 ▲ ヤン・ヴァンデルロースト指揮/レメンス音楽院シンフォニック・バンド

 ラヴェルによるオーケストラ版をベースにしたものではなく、高橋徹がムソルグスキーのオリジナル(ピアノ版)から新たにオーケストレーションしたもの。(従って、ラヴェルが割愛した「リモージュ」の前の、最後の「プロムナード」も含みます)

 「展覧会の絵」を新たに編曲し発表するということは、相当にやりづらい事であると思われる。

 その理由としては、現在では完全にオーケストラのレパートリーとして定着してしまっているラヴェル版が余りにも知られ過ぎていること、そして、そのラヴェル版は「この曲は、こう編曲するしかない!」という部分をしっかり押さえてしまっていること、さらにより自由にイマジネーションを膨らませたストコフスキー版なども最近録音されたりコンサートで取り上げられたりしていること等々。

 そして、当然それらの編曲と『比較』されることになるのが目に見えている。

 そういう状況の中で、この高橋版は十分にオリジナリティを発揮しているし、「展覧会の絵」コレクターであれば、その中に加える価値は十分にある録音であると思います。(ちなみに、カップリングの「禿山の一夜」は、通常演奏されるリムスキー=コルサコフ版に基づく編曲)

 この高橋版、「ラヴェル版にはよらない」と謳っているものの、どうしても似てしまう部分、あるいは明らかにラヴェル版を(意識的に?)取り入れている部分(最後の「プロムナード」など)もある。

 詳細をここで書いてしまうと、これから聴く人の楽しみが半減すると思うので割愛するけれど、一つだけ挙げさせてもらうと「キエフの大門」の終結部、主題が最後に再現する部分。

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 ここは原曲(ピアノ版)では一つ一つの音にフェルマータが付けられた伸ばしの音になっているのだけれど、

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 ラヴェルはフェルマータを取り去り通常の音の長さに書き換え、さらに裏拍に鐘などの打楽器を加えている。

 この「裏拍に原曲に書かれていない(打楽器の)アクセントを加える」というやり方はこの高橋版も、さらにストコフスキー版でも踏襲されており、この部分ではラヴェルに屈服せざるを得なかったのだろうか。

 さて、この高橋版「展覧会の絵」、好き嫌いは別にして、ただ一つだけ納得のいかない(?)部分があります。それは「ビドロ(牛車)」。

 ピアニストのアシュケナージはオリジナル(ピアノ)版についてこう書いている。

 「ラヴェルの総譜における完全に不適切な解釈(pp とチューバのソロ)とは対照的な、フォルティッシモの開始に注目して欲しい」

 譜面を見ると明らかなように、ムソルグスキーはこの曲をいきなり最強奏から開始するように書いているのだ。

 高橋版は何故、ここでラヴェル版を踏襲して弱奏で始めたのか?

 確かに「遠くから近付いてきて、また遠くへ去っていく」というアイデアもありかもしれない。しかし、ムソルグスキーのイメージと異なることは明らか。

 また、ラヴェルがこのような書き方をしたのは、彼が編曲の際に使用した楽譜がリムスキー=コルサコフによって校訂されたもので、その校訂版ではオリジナル版に手が加えられていた(それ以外の何ヶ所かの音の違いも含めて)、つまり、ラヴェルは『譜面通り』に編曲していたのだ。

 実は、ストコフスキーもこの部分はオリジナルとラヴェル版を足して2で割ったような中途半端なスコアを書いていて、ここでもラヴェルの『呪縛』から抜け出せなかったのか...!?

色々と勝手なことを書いていますが、編曲者自身がこの編曲について述べていますので、そちらもご覧ください。

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コメント

あんなに勝手気儘に(^^;)編曲しているジュリアン・ユーですら、小さく始めてますからね。いわんや高橋徹をおいてをや。

投稿: R | 2015/04/02 07時16分

「ロシア的でない云々」言われることもあるけれど、やっぱり「ラヴェル偉大なり」と思います。

投稿: S | 2015/04/03 12時30分

一柳 富美子が「ムソルグスキー―「展覧会の絵」の真実 」(ユーラシア・ブックレット)の中で、ffで始まるのは集団の中にいるからで、ppで始めるのは傍観者としての見方だ、みたいなことを書いていて、非常に参考になりました。
(が、やっぱり思うようには吹けない)

投稿: R | 2015/06/18 22時23分

今度の土曜日ですよね。頑張ってください:-)

投稿: | 2015/06/18 22時34分

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