学生券
ずいぶん昔のこと。
当時所属していた楽団のメンバー数名で連れ立って、とあるコンサートへ行こうということになった。会場は埼玉会館。
チケットは地元に住んでいる女性(当時大学生)がまとめて買ってくれることに。
「私がみんなの分も買っておきますね!」
「安い席でいいよ」
当日、その女性からチケットが各自に渡されたのだけれど、見てみると全て「学生券」(確かに一番安い)。しかし、実際の学生は彼女一人。他は社会人。さらに、どう見ても学生には見えない。
おそるおそる入場(ここはクリア)。
席は2階席の後ろの方...ステージは見えにくいけれども、学生席なので仕方がない。
あまり人気のない公演なのか、2階席には私たち以外には客は殆どいない。学生席に陣取っている、どう見ても学生に見えない一群は目立つこと極まりない。
すると、ドアの近く立っているホールの係員の男性が、こちらをチラチラ気にしているのが目に入った。
まずい、気付かれたか...「早く開演してくれ」と心の中で祈る。
そして、もうすぐ開演というときに、その男性がこちらに歩いて近づいて来たのだ。
私たちは凍り付いた。何を言われるのか。事務所に呼ばれて説教、新聞沙汰なんてことになったらどうする。
その係員は私達の所へ来てこう言ったのだ。
「他にお客さんいませんから、前の方の席に移動していただいて結構ですよ」
...ありがとう、埼玉会館の係員さん。
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