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グレインジャー リンカンシャーの花束

music CD

 ■ P・グレインジャー作曲/リンカンシャーの花束

 グレインジャー自身が蒐集したイギリス民謡をベースにした、6曲から成る組曲。

 その歌い手の歌い方を、忠実に再現しようとしているために、曲によっては非常にややこしい譜割りになっている。

  1.リスボン(船乗りの歌)
  2.ホークストウ農場(守銭奴とその召使い:地方の悲劇)
  3.ラフォード公園の密猟者(密猟の歌)
  4.元気な若い水夫(恋人と結婚するために帰郷)
  5.メルボルン卿(戦いの歌)
  6.行方不明のお嬢さんが見つかった(踊りの歌)

 「3」には「A」(フリューゲル・ホルンのソロ)/「B」(ソプラノ・サックスのソロ)、2つのバージョンがあって(途中からは「A」「B」同じ)、指揮者がどちらかを選択。

 グレインジャー自身は「B」の方を好んでいたようだけれども、確かにソプラノ・サックスの歌い回しは、より土臭い『歌』の雰囲気が出るように感じる。

 「B」は「A」よりも4度低く、冒頭のカノンで演奏される楽器の組み合わせは以下の通り。

  A:Piccolo+Clarinet/Eb Clarinet+Bass Clarinet
  B:Piccolo+Alto Clarinet/Oboe+Bassoon

 後半に同じ楽想が再現する個所では以下の組み合わせで、なおかつそれぞれが異なる調性で演奏する(カッコ内は吹き始めの音)。

  Piccolo(C)+Eb Clarinet(F)/Oboe(F)+Bassoon(Bb)

 色々と見所の多いスコアであるけれども、特に特徴的なのは「5」。

 小節線が書かれておらず、メロディの一つ一つの音(拍)を指揮者が振る(指示する)ように指定されている。

Posy


cd

 Fennell

 ▲ F・フェネル指揮/イーストマン・ウィンド・アンサンブル

 1959年録音。メリハリの利いた、贅肉のないサウンド。体育会系。

 第3楽章では「バージョンA」を採用してトランペット(コルネット?)で演奏。

 古い吹奏楽関係者には馴染み深い録音(当時はLP)で、収録曲は下記の4曲。

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 ・リンカンシャーの花束(グレインジャー)
 ・3つの日本舞曲(ロジャース)
 ・フランス組曲(ミヨー)
 ・セレナード変ホ長調(R・シュトラウス)
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 ジャケットの髭もじゃオジサンの写真が印象的だけれど、どの曲に由来する写真なのだろうか。グレインジャーが蒐集した民謡を歌っている人(のイメージ)だろうか。

 私が最初にこの曲に接したのは、その昔、とある『合同バンド』で演奏(音出し)したときで、とにかく変拍子が多くて、正直、何が何だか分からなかった。しかも何で2つの『バージョン』があるのだ?!

 今から思えば『合同バンド』でこの曲を演奏するというプランが無謀で、当然のことながらボツになった。

 しかし、この曲。もし、音源を全く聴かずに楽譜だけを渡されて、果たしてどんな演奏になるだろうか。それ以前に、どうしていいか途方に暮れる人もいるのではなかろうか。

 その合同バンドの指揮者も、この録音を聴いていたに違いないと思っている。当時は、それほど影響力のあるレコードだった。

 多くの録音が出てきた今、「これさえあればOK!」とは言えなかも知れないけれど、ある意味スタートラインのような演奏。


 Banks

 ▲ E・バンクス指揮/英国空軍中央音楽隊

 1985年録音。第3楽章は「バージョンA」を使用。

 技術やアンサンブルは今一つかもしれないけれども、とてもいい雰囲気の演奏。

 フェネル&EWE盤とは対照的な、大らかで、伸びやかな音楽。もちろん、イギリスならではのサウンドも聴ける。


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 ▲ H・ベギアン指揮/イリノイ大学シンフォニック・バンド

 第3楽章は「バージョンA」。

 大人数による演奏か、余裕のあるサウンド。ニュアンスやテンポ設定が新鮮に感じる。


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 ▲ D・ハンスバーガー指揮/イーストマン・ウインド・アンサンブル

 1990年6月。サ・シンフォニーホール(大阪)でのライブ録音。第3楽章は「バージョンA」。

 これぞウィンド・アンサンブル。単に合わせるだけでなくて、その中に音楽がある。個人的にポイントが高い演奏。


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  ▲ E・コーポロン指揮/ノース・テキサス・ウィンド・シンフォニー

 第3楽章は「バージョンB」(ソプラノ・サックスのソロ)。

 堅実な演奏。『参考演奏』にはいい。


 Grainger_rattle

 ▲ S・ラトル指揮/バーミンガム市交響楽団

 第3楽章は「バージョンB」。

 このCDが出たときは、「あのラトルが『リンカンシャー…』を...」とびっくりした。

 その昔、グレインジャーと言えば一部の愛好者が密かに聴いているような音楽であり、この曲も、関係者のための「吹奏楽オリジナル曲」というポジションだったかもしれない。

 ただ、ガーディナーの録音や、シャンドスのグレインジャー・エディション、そしてこのラトルなどによって、「グレインジャー作品」という枠組みの中で捉えるべき作品になってきたように感じる。

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コメント

このオジサンは、モリスダンスのプロだそうです。こういう格好で踊ったのだそうですね。

グレインジャーによる各民謡の収集音源を、グレインジャー音楽祭で聴きましたが、むしろ「よく譜面にできたな」と思うくらいのものでした。グレインジャーはとても真面目で繊細な人だったのだなと思いました。

投稿: HIDEっち | 2012/04/04 04時25分

なるほど。謎が解けてスッキリしました。

投稿: | 2012/04/04 22時02分

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