樽屋雅徳 星の王子さま(吹奏楽)
■ 樽屋雅徳作曲/星の王子さま
先日、この曲を聴いた方(吹奏楽関係者ではない)とお話する機会があったのだけれど、その方曰く...
「最初と最後の部分はイメージが湧くんですけど、途中はビックリしました。なんで『星の王子さま』がこうなるの...って」
一般の方が、予備知識無しにこの曲を聴いたとして、これは実に尤もな感想ではなかろうか。
▲ 加養 浩幸指揮/航空自衛隊西部航空音楽隊
キレイで耳馴染みのよい音楽が続く。いくつかの場面が接続される構成は「マゼラン…」などと同様。
音楽そのものについては置いておくとして、最大の問題は「サン=テグジュペリ作の同名の童話『星の王子さま』を基に作曲」とした(してしまった)ことだろう。
この小説は多くの人に読まれ、世代を超えて多くのファンを持っている。
それを基に彼が音楽にしたのは、漠然とした「星の王子さま」のイメージと、「飛行機が墜落する場面」であり「砂漠の場面」なのだ。
曲は5つの部分から構成されている。
1:「星の王子さま」のテーマ
2:「ぼく」の操縦する飛行機が砂漠に着陸する場面
3:「星の王子さま」のテーマによる間奏
4:「ぼく」と「星の王子さま」が会話する砂漠の場面
5:別れの場面とコーダ
早い話が、物語の内容(本質)とは関係のない、いくつかの要素をピック・アップして、自分のいつものスタイルで音楽を作っている。
これで「サン=テグジュペリの作品を基にして」と謳うのだから、大した度胸だと思う。
原作を読んだ人に最も違和感があるのは、最後の「別れ」の音楽ではなかろうか。あの小説の幕切れが、なぜに、こんな能天気で派手なエンディングになるのか。
少なくとも私とは全くかけ離れた感性(読解力)を持っておられるか、「小説は小説、音楽は音楽」と完全に割り切って考えているのか、どちらかとしか思えない。
ちなみに、後者の場合、サン=テグジュペリの名前を持ち出すことには、相当な問題があると思うが...。
さすがに「実は原作の小説を読んでいない」ということはないと思うけれども、「いや、ひょっとして...」と勘ぐってしまうような音楽でもある。
何はともあれ、この曲を演奏するのが子供であれ大人であれ、サン=テグジュペリの作品とは無縁の音楽と割り切って演奏するのものだろう。
そして、この小説をまだ読んでいない方がいたら、是非読んでみることをオススメします(この曲を聴いて/演奏して満足せずに)。
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コメント
なんですかね?
私は別に原典主義ではないですけど、
なんだか原典の人気にあやかって、
やりたいことをし放題、
という風にも感じられてしまいますね。
そのくらい、曲が稚拙というか…
真偽はともかく、
こういう原典に対する畏怖というか、
尊敬を欠いたような作品は、
何もナイーヴなものが感じられないので、
どうも好きになれません。
もちろん、やれと言われればやるんですけどね…
投稿: HIDEっち | 2011/11/23 13時49分
個人的には、これで打ち止めにしたいです -_-;)
投稿: S | 2011/11/26 08時43分