フサ プラハのための音楽1968(フサ&テンプル大学WS)
CD
■ K・フサ作曲/プラハ1968年のための音楽
▲ K・フサ指揮/テンプル大学ウインド・シンフォニー
1995年録音。
この曲について多くの録音を聴いてはいないけれど、重量感のある素晴らしい演奏だと思う。
作曲者の母国(チェコ)が軍事介入された事件を題材にしていて、スメタナ作曲の連作交響詩「わが祖国」でも用いられた讃美歌「汝ら、神の戦士たち」が使用されている。
スメタナの曲は最後には祖国の栄光を高らかに歌い上げるのに比べ、こちらは全く別のニュアンスを持っている。
第4楽章の終結部。各奏者が『自由に』演奏する混乱の中から迫ってくるドラムによる行進のリズム。
それに抵抗するかのように賛美歌(の前半部のみ)がユニゾンで高らかに奏され、その対立・緊迫した雰囲気を残し、未解決のまま曲を閉じる。
演奏の難易度は高く、スコアには様々な手法(奏法)が用いられ、各パートも細かく分かれているので、大編成(人数)が要求される。また、音楽の内容もハードで、聴き手にとっても取っ付き易いものではない(キレイなメロディがあるわけでもない)。
それ故演奏される機会も少ないし、時間制限の関係でコンクールでも取り上げにくいだろう(そもそもコンクールという場に相応しいか、という気もするが)。
様々な題材(史実など)を基に吹奏楽曲が作られているけれども、でも、結局は第三者的に表面だけをなぞっただけの、ステレオタイプになっている場合も多いと思う。
しかし、この「プラハ…」には決して他人事ではない、当事者の音楽としての重みを感じる。吹奏楽曲の名曲。
ちなみに、邦訳としては、「プラハ1968年のための音楽」の方が『正しい』かもしれないけれど、昔ながらの「プラハのための音楽1968」も私は好きだ。
【管弦楽版】
作曲者自身による管弦楽版の録音。
▲ B・コルマン指揮/スロヴァキア放送交響楽団
1993年録音。
この管弦楽版は指揮者のG・セルの委嘱で作られ、1970年にフサ自身の指揮によるミュンヘン・フィルにて初演。
吹奏楽版との違いがはっきり分かる箇所は、第2楽章のサキソフォンなどによるユニゾンの旋律が弦楽器で演奏されている部分。それ以外については聴いた印象はそう大きくは違わない(そもそも、第3楽章は打楽器のみのアンサンブル)。
貴重な録音ではあるけれども、(演奏のせいか)それ以上のものは感じない。
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